閑話:その後の学園
この閑話も登場人物の紹介を兼ねてます。
武術大会が終わって三日後。生徒達がいつも通りの日常へと戻ったところへ、あっと驚くビッグニュースが舞い込んできた。
ここGクラスも例外ではなく、授業前の教室では件の話題で持ちきりだ。
「なぁ聞いたか? ビル――なんとかっていう子爵の話」
名前:ヴィラン 性別:男
年齢:16歳 種族:獣人
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は俺で、見た目は茶髪の少年。
備考:アイリと同じ、Gクラスのクラスメイト。ルタと仲良し。
「聞いた聞いた。この前の武術大会で観戦に訪れてたんだよね。まさかその直後に魔物に殺されるなんてね……」
名前:ルタ 性別:男
年齢:14歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は僕で、見た目は茶髪のおとなしそうな少年。
備考:ビラクと仲良し。以前リュースに因縁をつけられた時に、アイリによって助けられた。
会話の通り、ビルガ子爵は魔物によって殺されたことになっている。
もちろんアイリによる工作で、誰もアイリが殺したとは思っていないだろう。
「やっぱ話題になってんなぁ。廊下でもみんな同じ事を話してやがる」
名前:リュース 性別:男
年齢:15歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は俺で、見た目は金髪のやんちゃな少年。
備考:元はEクラスだったが、ルタから金品を巻き上げた事を理由にGクラスへと降格させられた。以後は反省し、他人から物を奪うような真似はしていない。リルルという病弱な妹のために、金を稼ごうと奮起している。
「俺もだぜ。教室に来るまで何度も同じ事を聞かされて参ったよ……」
名前:グラド 性別:男
年齢:15歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は俺で、見た目は栗色の短髪少年。
備考:アイリと同じGクラスの生徒。農村出身で、冒険者として一旗上げるために学園へとやって来た。トリムとは幼馴染み。
「あたしの方も同じよ。そもそもビルガさんって当主でありながら跡継ぎが居ないらしいし、御家は無くなっちゃうわ」
名前:トリム 性別:女
年齢:15歳 種族:ハーフエルフ
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称はあたしで、見た目は赤毛をセミロングにした少女。
備考:幼馴染みのグラドと同じ目的で学園へとやって来た。入学初日、物珍しそうにキョロキョロとしていたリュックに声をかけたのがきっかけで、以後グラドを含めて仲良くなる。
「マジかよ!? アイリが親しくしてたから取り入るのも有りかと思ってたのに……」
「ま~たアンタは……。どうせ金目当てでしょ?」
「ほっとけ!」
「相変わらずだなリュースは。なぁリュックも何とか言ってやれよ」
「…………」
名前:リュック 性別:男
年齢:15歳 種族:人間
身分:今はウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は僕で、見た目は銀髪の真面目そうな少年。
備考:ガルドーラとは違う国からやって来た少年で、入学初日にトリムとグラドの2人と知り合う。それから2人レクチャーされつつ学園生活を送っていたある日、国外から転入してきたアイリに一目惚れし、現在に至る。
「……お~い、リュック?」
グラドの呼び掛けに反応せず、リュックは黙って外を眺めていた。
というのもここ三日間アイリは欠席しており、大会以来リュック達とは顔を合わせていないのだ。
つまり、アイリが居ない学園生活など、リュックにとっては色褪せた壁画と同じなのである。
「あ~、こりゃ重症だな。――先生、病名は何だと思います?」
「フフン、そんなの決まってるわ。ズバリ、アイリが恋しい病よ! ――って何やらすのよアホグラド!」
「いや、グラドはともかくお前もノリノリだったろ……」
「うるさいわね。それなら乗ったついでに薬を投与してやろうじゃない。――リュック、アイリが来たわよ~?」
ガバッ!
「アイリさんが!?」
「「「ウヒッ!?」」」
突然立ち上がったリュックに、他3人が驚き仰け反った。そしてリュックは廊下へと飛び出して行き……
「アイリさ――」
ドン!
「イッッッターーーィなの! 急に飛び出して来るななの!」
名前:セネカ 性別:女
年齢:14歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称はウチで、見た目は金髪ポニーテールの美少女。
備考:Cクラスの生徒で、同じクラスのゲイルという少年に付きまとわれ困っている。決闘でアイリに負けて以来、アイリをライバル視するようになった。容姿端麗、文武両道で同じ学園の生徒や貴族の子息からのアプローチが多く、セネカ姫と言われ持ち上げられているらしい。興奮すると口調が乱暴になる。
「あ……ゴ、ゴメン。」
「まったく、ちゃんと前を見ろなの」
廊下に出ようとしたところでセネカとぶつかってしまった。彼女もアイリが気になり、Gクラスの様子を見に来たのである。
「よぅよぅ、俺のセネカに手を出そうとしてる奴ぁどこのどいつかだぁ?」
名前:ゲイル 性別:男
年齢:16歳 種族:ハーフドワーフ
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は俺で、見た目はスキンヘッドの汗臭そうな少年。
備考:Cクラスの生徒で、ガッチリとした体格を利用し相手を威圧する粗暴な性格。同じCクラスのセネカに惚れているが、アイリも捨てがたいと思っている。今まではGクラスを見下してたが、武術大会でリュックに敗れて以来苦手意識を持つようになった。
「お前の? 別に手をつもりはないぞ?」
「ああん? Gクラスの分際でシラを切るつもり――」
相手がリュックだと気付いたゲイルは一瞬硬直するも、すぐに冷静さを取り戻し……
「お、おぅ、分かりゃいいんだよ分かりゃ」
「――って、誰がいつお前の女になったのなの!」
ゲシッ!
「ぐぉぉぉっ!」
身勝手な発言により股間を蹴り上げられ、ピョンピョンと兎跳びをしながらゲイルはフェードアウトしていく。
「なんとはしたない。淑女が男の股間に自ら触れるなど、有ってはならぬ事!」
名前:サフュア 性別:女
年齢:16歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒兼ガルドーラの貴族
特徴:一人称は私で、見た目は金髪ロングのストレートな割と美少女。
備考:Bクラスの生徒で、自分の考えは絶対に正しいと思っている。アイリの虚言で学園長が騙されてると思い込み、アイリに突っかかるようになった。が、最近は暇潰しにアイリに突っかかっている。
「余計なお世話なの。だいたい何の用なの?」
「別に貴女に用はありません。私は暇潰し――じゃなかった、今日こそアイリさんの本性を暴いてやろうと――ところでアイリさんはどこです?」
「あ、そうだなの。ウチもアイリに用があったの」
セネカはビルガ子爵の事を何か知らないかと訪れ、サフュアは授業前の暇潰しに訪れたのであって、特に重要な要件ではない。
「アイリさんならここ三日間休んでるよ」
「そうなのなの? せっかく情報が手に入ると思ったのに残念なの」
「まったく、学業を疎かにするとは感心しませんわ……」
セネカは普通に、サフュアは言葉とは裏腹に肩を落としてガッカリした様子。
しかし、そんな2人に近付く影が。
「なぁに、それなら僕がお相手してあげようじゃないか!」
名前:ナンパール 性別:男
年齢:16歳 種族:ハーフエルフ
身分:ウィザーズ学園の生徒兼ガルドーラの貴族
特徴:一人称は僕で、見た目は金髪のロン毛野郎。
備考:エルフの美顔と人間の性欲が合わさったハーフの少年で、学園では有名なナンパ野郎として知られている。美女美少女に目がなく、種族を越えた幅広い守備範囲の持ち主。いかにかっこよく見えるかを常に気にしている。
「お呼びじゃないなのナンパ野郎」
「同感ですわ。あまりしつこいと、月に代わってお仕置きいたしますわよ?」
「つれないなぁ。ま、そんなところが惚れてしまう理由なんだけれどね」
爽やかな笑顔は一般の女生徒なら効果はあるが、この2人にとっては見飽きた背景の一つでしかない。つまり、今のナンパールは空気なのである。
そんな空気男から視線を外したリュックは、再び外を眺め始めた。
(アイリさん……)
すると駆け足で学園の門を潜ってくる人物に目が止まる。
(ん? ……あ、アイリさん!?)
一目惚れした相手を見間違うはずはない。紛れもなくアイリがやって来たのだ。
その姿を見たリュックの目に、再び気力という名の炎が宿るのであった。
★★★★★
教室が騒がしくなっている頃、学長室でもまた同じ話題が挙げられていた。
「まったく、一時はどうなる事かと思ったが、上手く偽装できてなによりだよ」
名前:カーバイン 性別:男
年齢:??歳 種族:魔族
身分:ウィザーズ学園の学園長
特徴:一人称はワシで、頭のてっぺんが薄い白髪の爺さん。
備考:魔導国家ガルドーラの行く末を案じている一人で、少しでも能力のある若者を世に送り出そうと奮起している。国家主席であるフローレンや教師のフローリアとは顔馴染み。
「そうですね。中には不審に思っている貴族もいるようですが、大多数は誤魔化せたと言ってもよいでしょう」
名前:フローリア 性別:女
年齢:??歳 種族:エルフ
身分:ウィザーズ学園の教師
特徴:一人称はわたくしで、エメラルドグリーンの髪を短く整えた女性。
備考:元は軍人だったが、周囲からのやっかみに嫌気が差したところへカーバインからの誘いがあり、退役して教師を勤めることになった。国家主席のフローレンは姉である。
「三日前にアイリ君から聞いた時は、このスティヴも度肝を抜かされたねぇ」
名前:スティヴ 性別:男
年齢:??歳 種族:魔族
身分:ウィザーズ学園の教師
特徴:一人称は俺ッチで、深緑の髪をアフロヘアーにしている。
備考:陽気でふざけているように見られがちだが、生徒へは厳しく指導するという真面目な面もある。普段はサングラスをかけていて、ストロンガーと名乗っている。
三日前の夜にアイリが学園長の元を訪れ、ビルガ子爵がギルガメルだという事実が発覚したのだ。
これにより一部の教師達も急遽集められ、どうしようか――つまりどう偽装しようかという話し合いが行われたのである。
すったもんだの末、ビルガ子爵の邸宅の地中にダンジョンがあった(ペサデロからの情報で発覚)ので、そこから涌き出た魔物に殺されたという史実が追加されるに至った。
ちなみにだが、話し合いの時にお茶と茶菓子がアイリから提供されている。
「しかしですな、ギルガメルが単独で子爵という地位にいたのには疑問が残りますぞ? 恐らく他にも協力者が……」
名前:カーネル 性別:男
年齢:75歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の教師
特徴:一人称は私で、頭髪と髭が真っ白なご老体。
備考:Sクラスの担任を勤めており、癖の強い生徒達に振り回されてたりもする。
いまだ不安は払拭されてないとカーネルが述べる通り、貴族が派閥に関与せず単独で生き残るのは難しい。かといってギルガメルが所属した派閥の全員が知っているとも限らないため、今後は時間をかけて調べていくしかない。
コンコン
「失礼します。本日から通学することになったクレアです」
名前:クレア 性別:女
年齢:14歳 種族:人間
身分:今日からウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は私で、ブルーの髪をツインテールにした気品のある少女。
備考:呪いにより病弱だったため学園へは入学式の時のみ顔を出し、以後は自宅で療養していた。アイリにより呪いは解かれ、晴れて通学できるようになった。入学式の日に倒れそうになったところをリュックに助けられ、好意を寄せている。その際に何らかの約束をしたらしいが……。
ノックをして入ってきたのは、リュックの幼馴染み――と言われているクレアだ。
「おお、クレア君か。アイリ君から聞いてはいるが、体調は大丈夫なのかね?」
「はい。お陰様ですっかりよくなりました。今日からでも授業に参加できます」
腕を振り回してアピールして見せると、学園長もウンウンと頷く。以前はまともに歩くことすら困難だったのに比べれば、別人と思うほどに回復してると言えるだろう。
「ではさっそく今日から頑張ってくれたまえ。――ストロンガー先生?」
Gクラスのため後はスティヴに任せようと視線を送る――が!
ヒシッ! クンカクンカ……
「おおう、新しいお姉様ではありませんか! このほのかな甘い香りがなんとも……」
名前:オリガ 性別:女
年齢:13歳 種族:魔族
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称はワチキで、深緑の髪を地面スレスレまで伸ばした不思議少女。
備考:同性が好き過ぎるため、周囲の女生徒はその言動に困惑しつつある。Sクラスの中でのみ有名だったのが、武術大会を通して全クラスが知ることとなった。実はスティヴの娘。
「ヒィィィッ! ななな、なんですかこの人は!?」
学長室に入ってくるなり、クレアに抱きつき匂いを嗅ぎだした。
なぜ呼んでもいないのに来たのか……それは本人にしか分からない。
「ちょ、ちょっとオリガさん? また貴女は恥じらいもなく――」
「何を言いますかフローリア先生。こちらのお姉様に出会った今日という日は永遠の記念日です! その香しい匂いを堪能せずして何が学園生活ですか!」
「オゥフ、度々娘が失礼を……」
「何でもいいから助けて~~~!」
一度触れたら離れない……くらいの勢いで、オリガはクレアに覆い被さる。このままなすがままなのか!? と、思いきや?
「いい加減にしろ」
名前:カゲツ 性別:男
年齢:書類上は16歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は俺で、赤髪の物静かな少年。
備考:遥か東の島国ダンノーラ帝国の人間で、ある目的でガルドーラにやって来た。リュックにはすでに話しているらしいが……。
バスッ!
「オゥフ! 何しやがるんですかこの野郎! ワチキの邪魔をするんなら容赦は――」
「私の師匠に暴言を吐くな!」
名前:アヤメ 性別:女
年齢:16歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称は私で、濃紺の髪をサイドテールにした少女。
備考:カゲツ同様ダンノーラ帝国の人間で、ガルドーラには亡命するのが目的でやって来たらしい。同じSクラスのイトという女生徒を護衛している。
ゲシッ!
「フグッ! ちょ、ちょっと待つです。カゲツのチョップはともかく、アヤメお姉様の蹴りは殺人級ですので、ワチキの耐久力が……」
「うるさい! わざわざ学長室にまで来て恥を晒す方が悪い!」
「ま、まぁまぁアヤメ、落ち着いて」
名前:イト 性別:女
年齢:17歳 種族:人間
身分:ウィザーズ学園の生徒
特徴:一人称はわたくしで、イグリーシアでは珍しい黒髪ロングの少女。
備考:ダンノーラ帝国の姫様であり、暗殺から逃れるためにカゲツとアヤメを伴いガルドーラへと亡命してきた。
最後に入室してきたイトで、後ろからアヤメを宥めにかかった。
「おおぅイトのお姉様、キャッフキャッフ♪」
「バカな事を言ってないで、さっさと教室に戻るぞ」
「ダァァァ! 野郎のくせにワチキに触るな!」
「ええぃ、師匠に暴言を吐くなと言ってるだろう! キリキリ歩け!」
ゲシッ!
「オゥフ!」
「ど、どうもお騒がせしました~」
嵐が過ぎ去り、学長室に平和が――もとい静けさが戻ってきた。
そこで学園長はハッとなり、クレアと話している途中だったのを思い出す。
「……コホン。まぁ、少々賑やかな学園――とでも思ってくれると助かるがな……」
「クスクス♪ 嫌いじゃないですよ? 賑やかなのは」
★★★★★
更に別の場所――エルフの里では、国家主席であるフローレンが里帰りを果たしていた。
そして里のエルフ達との会話もそこそこに、守護精霊であるハッピーを飛び出す。
「おっひさ~♪ 元気にしてた? おフロちゃ~ん」
名前:ハッピィ 性別:女
年齢:??歳 種族:精霊
身分:エルフの里を護っている守護精霊
特徴:一人称はハッピィで、見た目はまんま金髪JK。
備考:緩い口調で人懐っこい話し方をするJK――ではなく精霊。元は勘違いでクレアに呪いをかけてしまったが、誤解が解けたので呪いを解いてくれた。アイリから受け取った精霊の衣が只のセーラー服だとは、いまだハッピーは気付かないでいる。
「その呼び方はお止めくださいと何度も……」
名前:フローレン 性別:女
年齢:??歳 種族:エルフ
身分:国家主席
特徴:一人称はわたくしで、エメラルドグリーンの髪をロングにした女性エルフ。
備考:エルフの里の出身者。フローリア共々幼少期は里で育てられた。
「別にいいじゃん。あんまし細かいと、カーバインみたいにハゲるよ?」
「それは困りますが――まぁいいです。ところで、最近ダンジョンマスターであるアイリという少女が来たと伺ったのですが……」
「来たよ~。友達の呪いを解いてほしいとか言ってた。なぁんか楽しそうだったし~、たまにはハッピィもお出かけしようかな~」
「そ、それは困ります!」
フローレンが慌てて止める。ハッピィが出掛けるということは、里の守護者がいなくなるのを意味するためだ。
「ん~~~、あ、そうだ! ちょっと良いこと思いついちゃった~♪」
ニシシシと、悪巧みを企てたような笑みをハッピィが浮かべる。
「あ、あの~ハッピィ様? 不用意に里を空けられますと――」
「大丈夫大丈夫、里からは一歩も出ないから」
「ならよいのですが……」
フローレン国家主席の不安が的中するか否か。それは誰にも分からない。




