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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
序章:私、ダンジョンマスターなの……
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学園長からの依頼

「え、私の眷族(けんぞく)から事前に知らされてたぁ!?」

「うむ」


 出されたお茶をひっくり返しそうになるくらい大きく仰け反ってしまった。

 あろうことか、情報の出所は私の眷族だったのよ。

 これじゃあ最初から私の学園生活プランは破綻してるじゃないの……。


「今だから言うが、最初は転入を断ろうと思っておったのだ」

「そうなんですか?」

「うむ。アイリ君にはリヴァイという執事がついているだろう? 彼が告げてきたのだよ、くれぐれもアイリ君の素性が明るみに出ないよう配慮してくれと」


 リヴァイは私の身の回りの世話をしてくれる眷族のことよ。

 普段は人化して執事のように働いてくれる世話焼き爺さんなんだけれど、その正体はSSS(トリプル)ランクのリヴァイアサンという海の猛者。

 そんなリヴァイは物凄く過保護だから、前の学園に居られなくなった時点ですぐに手を回してくれたらしい。


「だが当方としては一人の生徒を特別扱いするわけにはいかんし、何より新学期がはじまってからの急な転入はよほどの事がない限り認めてはいない」


 まぁそうよね。

 角が立つと他の生徒からの印象も良くないだろうし。


「するとどうだろう。思いもよらなかった人物達から、是非転入を認めてあげてほしいと頼まれたのだよ」

「思いもよらなかった人物?」

「ミリオネック商業連合国の外交官であるフォーカス」

「あ……」


 おもいっきり知ってる人だわ……。

 以前に国を救済するくらいの事をやったし、そういう意味では貸しがあったと言えなくもない。


「アレクシス王国の国王であるヨゼモナール」


 うん、こっちも知ってる。

 訳あって私のダンジョンに匿ったことがあるし、妹のバーミレニラとは友達よ。


「グロスエレム教国の教祖であるメンヒルミュラー」


 は~い、こっちも知ってる。

 何せ教祖は私の眷属(けんぞく)だし。

 この国とは一悶着(ひともんちゃく)あって、前教祖と黒幕を排除してから眷属を教祖にすげ替えたのよね。


「そしてプラーガ帝国の皇帝であるラーズグロム」


 こっちは最近になってから親しくなったのよね。

 後継者争いで殺されそうになってたところを助けたのがきっかけよ。


「この世界――イグリーシアでの四大国家と言われてる国々から後押しがあったのだよ。アイリ君、キミを丁重に扱えとね」

「う……」


 多分リヴァイが根回ししたのね。私の転入がスムーズにいくようにって。


「ミリオネックはともかく、他の三国に至っては国のトップによる通達だ。これを異例と言わず何と言うのか」

「異例としか言いようがないですね、はい」

「ああ、すまない。口調がキツくなってしまったが、責めてるわけではないのだよ。要はそれだけ異常だと言いたかったのだ」


 それはよかった。

 また別の学舎に転入する羽目になるかと思ったわ。


「最初は半信半疑だったよ。だが先の四大国家に挟まれるように存在する魔女の森。そこにダンジョンかできたという話は聴いていたし、そのダンジョンの中には――アイリーンという街が存在するという話もね。更に極めつけは、そこのダンジョンマスターが()()()という名前だそうじゃないか」


 紛れもなく私です、はい。

 今考えれば偽名を使うべきだったわ。もう遅いけど。


「この事実はできるだけ伏せておこう」

「いいんですか?」

「うむ。しかし、いずれは不可抗力により告げねばならない時も出てこよう。アイリ君は有名らしいからな」


 ホントそれよねぇ。

 いまだにえらそうな貴族の訪問が後を絶たないのよ。

 そのたびに眷族が追い払ってくれるけど、いい加減ウザイわ。

 でもそう考えたら結局はここでも同じことになりそうね。


「不可抗力なら諦めます。なんか眷族が無理を押し付けたみたいで、逆にすみません」

「なんのなんの! 長いこと学園長をやってると、たまには天変地異でも起こらんもんかと思ってたのだよ。寧ろ良い刺激になるわい」


 いやいや、学園のトップが天変地異望んじゃダメでしょ!

 そんな事で刺激を受けても髪の毛は増えないわよ。


「それでだな、クラス振り分けなのだが、アイリ君にはGクラスに入ってもらいたいのだ」

「Gクラスに?」

「うむ」


 Gクラスってことは最低ランクのクラスよね?

 私としては変に注目を集めることがないから有難いけれど……。


「理由を聞いても?」

「ズバリ言うが、上位クラスからの抑圧から護ってあげてほしいのだ。Gクラスの面々は日々虐げられる傾向にあり、これを改善したいと思っておるのだよ」


 この学園は実力主義らしいし、上の連中が幅を利かせるようになるのは容易に想像できる。


「でもそれは学園長の一声で収まるんじゃ?」

「それなのだが、貴族の寄付金により運営を行っているのもあってな、異議申し立ては下手をすると学園が無くなる可能性もあるのだ」


 うっわ、つくづく貴族ってメンドくさ!

 だけどそれなら私にも考えがある。


「学園長、Gクラスの転入は引き受けます。それにもしも貴族からの圧力がかかったら、私に教えてください」

「……何か考えがあるのかな?」

「勿論です!」


 これも平穏に過ごすためよ。

 それを邪魔する奴らは、目にもの見せてやるわ!



★★★★★



「なるほど。そういう事情でしたか」

「まぁね。私としては平穏な学園生活を送れればいいんだし、過ごしやすい環境になるなら大歓迎よ」

「その結果、お姉様が目立ってしまうとしてもですか? わたくしの目には、ご自分で平穏をブチ壊したようにしか見えないのですが」

「…………」


 そうよ、すっかり忘れてたけど、目立ったら面倒事が舞い込むに決まってるじゃない!

 散々実力を示しちゃったし、今さら誤魔化しようがないわ。


「どうやら忘れてたみたいですね。まぁ原因の一部はリヴァイにも有るようですが」

「そうよ、リヴァイよ!」


 リヴァイが余計な根回しをするからこうなったんじゃない。


 シュタ!


「お呼びで御座いますか、アイリ様?」


 目の前に現れ(ひざまず)いたのは、執事服を着こなした初老の男リヴァイ。

 名前を出しただけで瞬時に現れるところは大変ありがたいんだけど、ここはキチンと言い聞かせないと。


「私のためを思って学園長に話したのは分かるわ。だけど4大国家まで持ち出したのはやり過ぎよ」

「何を仰せられますかアイリ様。これらの国をも動かせるという事実を突き付ければ、大抵の者は首を縦に振るものですぞ?」


 ……そりゃそうでしょうね。

 カーバインさんは相当焦ったに違いないわ。


「もう手遅れだから仕方ないけれど、次からは私に相談してちょうだい」

「承知いたしました。ではさっそくなのですが、魔導国家ガルドーラに対しこのダンジョン――アイリーンの驚異を見せつけ、交渉を有利に運ぼうと――」

「だ~か~ら、そういうのは止めなさいって言ってるの!」


 どうして私の眷族達はこうも戦闘的なんだろうか。

 私は別に覇王に成りたいわけじゃないのよ。


「よく聞いてリヴァイ。敵対的な姿勢を示した国には威嚇してやるのもいいわ。だけどそうじゃない国には友好的に接してちょうだい」

「ふむ……アイリ様がそう(おっしゃ)るのならそのように計らいましょう」


 まだちょっと怪しいけれど、何とか分かってくれたみたい。


「それで、明日以降はどのように過ごされるのですか?」

「ん? どうって?」

「お姉様の実力がクラスで認知され始めたのですよね? ならばクラスメイトの態度が一変したり、他のクラスにも情報が漏れたりは必然かと」

「……やっぱそう思う?」


 せっかく仲良くなれそうなのに、態度が豹変したら嫌よねぇ。

 明日にならないと分からないけれど、できれば普通に接してほしいものだわ。


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