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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
序章:私、ダンジョンマスターなの……
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アイリーンパーク

「今日の特訓はこれまでとする。各自解散!」

「「「終わったぁぁぁ……」」」


 前日に次ぐ放課後猛特訓により、ザードの終了告知と共にリュック達4人はへたり込む。

 それでも声を出せるだけ昨日よりは余裕が感じられるわ。


「みんなお疲れ様。コレで水分補給しといて」


 差し出したスポーツドリンクを旨い旨いと飲み干す4人。

 特に甘いものは貴族でなければ口にする事が少ないらしいので、ほんのりと甘いポカリスエ○トは大人気よ。


「なぁ、これで俺達強くなってんのか? いまいち実感が湧かないんだが……」

「何言ってんのよリュース。昨日の今頃は声すら出せなかったんだから、充分強くなってるわ」


 さすがに昨日のようにはいかないながらも平均で4レベルは上がってるし、明日にはレベル20を超えるでしょうね。

 そうなると一人前の冒険者と肩を並べれるし、ゲイルやセネカの居るCクラスを上回ることに。

 うん、なんだか育成シミュレーションをやってる感覚になってきて、ちょっと楽しいかも。


「ところでアイリさん。昨日から気になってたんだけど、あっちに見える施設は何なの?」

「あ、それそれ、実は俺も気になってたんだよな。人が乗ってるようにも見えるし、いったい何をしてるのかって」


 トレーニングジムの窓から見えるのは、アイリーンパークっていう遊戯施設。要するに遊園地よ。

 訪れた人はその魅力に取り込まれ、時間が経つのを忘れるくらいに没頭してしまうと巷では有名だったりする。

 冒険者や商人もそうだし貴族や知人のダンマスまでをも虜にする魅惑のステーション。それがアイリーンパークなのよ♪


「……アイリさん?」

「ゴメン、軽くトリップしてたわ。アレは娯楽として楽しむものだから、リュック達も乗ってみる?」

「え、いいのか? ラッキー♪」

「ちょ、グラド」


 やはり興味があったらしく、グラドは両手を上げて小躍りを始めた。

 傍らのリュックが私を気にしながらグラドを宥めに入り、トリムとリュースは肩を竦めて呆れ顔。

 でも私には分かる。グラド以外も興味を持っていることに。


「じゃあ乗るのはグラドだけでいいのね?」

「「「それはダメ!」」」


 はい、予想通り。


「じゃあさっそく――」

「エスコートはわたくしにお任せください」

「――って、アイカ?」


 どういう風の吹きまわしか、アイカが案内役をかって出た。


「ア、アイリさんにそっくり?」

「もしかして双子なの!?」


 うん、当然の反応ね。

 というかアイカを紹介する予定はなかったんだけど……まぁいいか。


「双子ではないけど妹よ。名前はアイカっていうの」

「お初にお目にかかります皆々様。アイリの妹でアイカと申します、以後お見知り置きを」

「おう、俺はグラド、よろしく頼むぜ!」

「あたしはトリムよ、これからよろしくね」

「リュースだぜ、よろしくな」


 ん? 何故かリュックだけは固まったままね?


「リュック?」

「あっととと……は、初めましてリュックって言います! い、以後宜しく……」

「妹相手にそんな緊張しなくてもいいのよ?」

「うん、それはそんなんだけど……」


『お姉様、容姿がソックリなのですから、こうなるのも無理ないかと』


 ああ、そういう事……。

 何て言うか、好意を寄せられて嬉しいような恥ずかしいような……、うん、深く考えないようにしよう。


「ささ、わたくしに付いてきて下さい。腕によりをかけてエスコートさせていただきます」


 アイカを先頭にルンルン気分な4人が後を付いていく。腕によりをかける必要性は定かではないけれど、労いの意味もあるし楽しんできてほしい。

 それとは別に、アイカが出てきた理由が気になるんだけれど。


『お姉様、久し振りの獲物です』

『獲物?』

『はい。どうやら()()()が数匹侵入したようですので、そちらの対処をお願いしたいと思いまして』

『それって命知らずな冒険者や強欲な貴族じゃなくて?』

『パッと見だと人間4人が手懐けた魔物を引き連れているように見えますが、()()()()()()()()()。Dランク~Cランクの魔物で構成されている小隊のようにも受け取れます』


 ふ~ん? 魔物を従えた奴が私のダンジョンにねぇ?

 今だと思い当たる奴が()()()()いるわ。

 もっと早くに仕掛けてくるかと思ってたから遅いくらいよ。


『せっかく来てくれたんだし、()()してあげなくちゃ失礼よね』

『そう言われると思いましたので、エスコートはわたくしにお任せを』


 こっそり侵入してくるってことは私と敵対する気満々ってことよ。

 私の学園生活を害する輩は徹底的に潰してやるわ。



★★★★★



 アイリがほくそ笑んでいる頃、侵入者達もまたほくそ笑みながら森林エリアの階層を進んでいた。狼3頭が先頭を行き、その後を剣士3人が周囲を警戒しつつ歩くという構図だ。

 そんな彼らの後方で一人、馬に跨がった黒い全身鎧の騎士が口を開いた。


「ぬるい……ぬる過ぎる。我が主はこの程度のダンジョンを偵察せよと言うのか……」


 主であるギルガメルからは充分注意するようにと言われていたが、1階層の洞窟エリアを難なく突破したため黒騎士は拍子抜けを食らったのだ。


「油断は禁物ですぞグレゴス様。計画を実行中であったアモンド様が捕らわれたのは事実ですので」

「フン。所詮奴など血を(すす)る事しか脳のないコウモリ――それだけだ。私をあんな小者と一緒にしないでくれたまえ」 

「……失礼致しました」


 剣士の一人が注意を促すも、黒騎士は鼻を鳴らして取り合わない。

 というのもこの黒騎士は自身の強さに絶対の自信を持っており、そう簡単に他者に遅れをとらないだろうと高をくくっているのだ。

 何せ彼の正体は死霊騎士(デスナイト)といあCランクの魔物なのだから。

 ちなみに剣士の方もDランクのスカルソルジャーで、狼もDランクのデスウルフである。


 ガサガサガサ……


「グギャギャギャ!」

「ギィギィ!」


 茂みから出てきたゴブリンが一行の前に立ち塞がる。

 さらに後ろからも別のゴブリンが仲間を引き連れて来て、合計7匹が棍棒を振り回して襲いかかった!


「チッ、うるさい雑魚共が。速やかに蹴散らせ!」

「承知致しました」


 数は同じでありながらも強さは全くの別物で、ゴブリンは瞬く間に蹴散らされていく。


 ズバッ!


「グギァァ……」


 そして最後の1匹をスカルソルジャーが斬り伏せたところで、再び前進を始めた。


「フン、他愛もない。そもそもいまだFランクしか出てきてないのも驚きだ」

「確かに。ゴブリンを始めグリーンウルフやエアーバットなど、どれもがFランク。案外それほど脅威ではないのかもしれません」

「――であろう? ギルガメル様のご命令でなければ、こんな雑魚だからけのダンジョンなんぞ相手にしないところだ。こうして時間を割いてやってるだけでも感謝してほしいものだな」


 最初こそ警戒していたが次第にそれは薄れていき、数十分後には無警戒で進む一行の姿が。

 しかしこのアイリーンは全部で15階層もあり、1~4階層までは初心者にも優しい親切設定なのだ。

 言わば彼らの居る場所は外よりも安全だと言えるだろう。


 ピタッ!


「む? どうしたのだ、なぜ足を止める?」

「はい。どうもデスウルフが何かを嗅ぎ付けたようでして……」

「新手か。どうせ雑魚だ、解き放って仕留めさせよ」

「承知致しました」


 グレゴスの判断により、デスウルフ3体が嗅ぎ付けた何かに向かって走り出す。

 すると数分も経たないうちに獲物を咥えて戻ってくる――と思われたが……。


「グオォォォォォォ!」

「「「!?」」」


 突然(とどろ)く謎の咆哮(ほうこう)

 もちろんゴブリンやグリーンウルフがこのような咆哮を発するはずもなく、これまでと違う何かが現れたのだと気付く。


「ギャイン!?」

「ギャウン!」

「キャンキャン――ギャヒ……」


 直後に響くデスウルフの鳴き声。

 それは悲鳴に近いものであり数秒でそれらが収まると、一迅(いちじん)の木枯しが草木を揺らした後に、不気味な静けさが辺りを支配した。


「……ど、どうなっている? いったい何が起こったのだ?」

「……分かりません。しかし、正体不明の何かが現れたのは事実です」

「デスウルフはどうなった?」

「分かりません――が、恐らくは何者かの餌食となった可能性が高いかと……」

「…………」


 デスナイトも予想はついていた。デスウルフは秒殺されてしまったのだと。

 しかし間違いであってほしかったというのが本音で、先ほどまでの空気とは一転し、ただならぬ不安が彼らを押し潰す。


「この先にDランクを容易く葬る輩が潜んでいる。全員気を抜くなよ」

「承知しております」


 意を決してデスウルフが向かった場所へと向かう一行。

 やがて見えてきたのは、皆等しく踏み潰されたデスウルフの亡骸であった。


「これは……」

「巨大な何かに潰されたのでしょう」

「巨大な何か――だと? そのような輩はどこにも――」


 どこにもいない――そう言いかけたデスナイトを、巨大な影が覆い尽くす。

 それに気付いて見上げれば、真っ赤な鱗で身を包んだ巨大な竜――ファイアドレイクがグレゴス達を見下ろしていた。


「んなっ!?」

「侵入者を抹殺するど~」


 ズズゥゥゥゥゥゥン!


「ク……お、おのれぇぇぇ……」


 即座に足がグレゴス達へと下ろされ、スカルソルジャーは全滅。グレゴスだけは地にめり込みながらも何とか耐えていた。


「なぜ貴様のような奴がこのようなダンジョンに!」

「そんなの決まってるど~。オイラはアイリ様の眷族だで、アイリ様に刃向かう輩は皆殺しだど~」

「けけけ、眷族だとぉぉぉ!? まさかアイリというダンマスは、Aランクの貴様をも従えてるというのか!?」

「そういう事だど~。そんだばこれでおさらばだで」

「グォ……やめ……」


 ブチュン!


 力だけならSランクに匹敵するファイアドレイクにより、グレゴスは呆気なく踏み潰されてしまうのであった。


『アイリ様、終わったど~』

『ありがとレイク。今夜のご飯は豪勢にしとくわね』

『そりゃ感激だべ!』


 これで力の差を理解してくれるかしらね?


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