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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
序章:私、ダンジョンマスターなの……
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お友達のご来宅

 突然聞かされた武術大会の知らせ。

 周囲から「当然出るんだろ?」的な視線を向けられたら断れないじゃない。


 そこで! 私だけ出るのは不公平だと不満を吐き出し、リュック達を巻き込むことに成功したのよ、うん。したんだけれど……


「クラスメイトがアイリーン(ここ)に来ることになったと」

「そうなのよ。武術大会で無様な姿を晒すわけにはいかないし、ここで特訓しようって流れになっちゃって……」


 ストロンガー先生の熱い指導のお陰か、リュック達はゴブリン程度なら倒せるくらいには上達している。

 だけど実戦ともなればまた別で、野良のゴブリン相手にどこまで戦えるかと言われれば、未知数だと答えるほかない。

 上位クラスはゴブリン程度には苦戦しないだろうし、そんな相手に挑むのは無謀だとグラドに突っ込まれてしまったのよ。


 じゃあ今から特訓しようと口走っちゃったからさぁ大変。

 ディメンションルームは上位クラスに使われてて、Gクラスが使うともなれば冷やかしなら他へ行けと追い出されたくらいにして。


「なんじゃ(しゅ)よ。いつも通りに叩きのめし、逆に追い出してやればよかろう」


 ――等と物騒な発言をかましてきたのは、私の眷族の一人――アンジェラよ。

 見た目は紫の髪をショートカットにした20代前半の美人。けれど人化を解いたら明らかになるその正体は、SSS(トリプル)ランクのバハムートだったりする。

 性格もソレに比例してかなりの戦闘好きだから、さっきのような台詞になるのよねぇ。


「アンジェラ、そんなことをしたら武力で相手を捩じ伏せる奴と同類じゃない」

「充分同類だと思うのじゃが……」

「同類じゃない!」

「それにロックキャノンを投げ返した時点で怪力女と呼ばれるのは時間の問題では?」

「それは困る!」


 クッ、まさかアレを投げ返したのが仇になるなんて……。


「あの~、話が脱線してますが~、お友達が~、来るのではないですか~?」

「そうよセレン、私の怪力なんてどうでもいいわ。今はいつクラスメイトが来てもいいように準備しとかなきゃ!」


 話を元に戻してくれたのはセイレーンのセレン。

 今はアンジェラと同じく人化してるから、金髪セミロングの美少女に見えるけれどね。

 ちなみに魔物のランクはBランクよ。


「準備と申されましても、普通に5階層の街に案内すればよろしいのでは?」

「それなんだけど……」


 このダンジョンは1階層から15階層までで構成されていて、5階層は人が住める街になってるのよ。

 住人の数はまだまだ少ないけれどリアルタイムで増え続けてて、外からやって来る商人や冒険者も増加中。さらに建設予定の住宅は予約で埋まってるってリヴァイが言ってたわ。


 ――って話が逸れたわね。

 要するにアイカが言いたいのは、他の来場者と同等に扱えばいいってことらしい。


「でもね、せっかくクラスメイトが来るんだもの、ちょっと特別感を出して歓迎したいじゃない?」

「ならば歓迎は妾に任せるがよい」

「アンジェラに?」

「うむ。立ち上がるのが困難になるくらい、みっちりとシゴいてやろうではないか!」

「それはダメ!」


 自分で言うのも悲しいけれど、リュック達は私と違って一般人なのよ。

 だいたいにして歓迎の意味が違うし!

 

「私が~、一曲披露して~♪」

「それ、みんな寝ちゃうから」


 某ポ○モンと似たような未来しか見えない。


「ならばわたくしの特製カレーを――」

「それってジャガイモの代わりにサツマイモが入ってるやつよね?」


 ダメね、まったく話にならないわ。

 もっとまともなアイデアはないんだろうか……。


「姉貴がエスコートするのがいいんじゃないッスか?」

「あ、クロ」


 私を姉貴と言って慕ってくれるモブ顔少年のクロ。

 人化を解いて(あらわ)になるのは、Cランクのカオスブラックウルフよ。


「ねぇクロ、それって私が案内するだけでいいの?」

「はいッス。そもそもアイリーンを訪れた連中は、姉貴の姿を見る事が殆どないッス。そんな稀少価値のある姉貴がエスコートするんスから、端から見ればレア現象ッスよ」


 言われてみればそうかもしれない。

 アイカ本体(ダンジョンコア)を置いてるコアルームは立入禁止にして、5階層の街を案内してあげるのがいいかも。


「よし、クロの意見を採用するわ」


 何も難しいことはなかったわね。


「なんじゃつまらん。せっかく運動不足を解消できるかと思うとったのに……」

「私のクラスメイトを玩具扱いしないの! そんなに解消したきゃモフモフに相手してもらいなさい!」

「おお、その手があったか!」


 モフモフには苦労かけるけど、リュック達のためにも我慢してもらおう。



★★★★★



 そんなこんなで、リュック達を転移魔法でパパッと連れて来たわ。


「こ、ここ……本当にダンジョンなのかい?」

「想像してたのと全然違うよな……」


 5階層の入口で、リュックとリュースが口を大きく開けたまま棒立ちしている。

 何せダンジョンの中に街があるんだもの、こんな景色は他では見れないでしょうね。

 しかも建造物は現代日本に合わせてるから、イグリーシアの人達にしたら未知の建物よ。


「スッゲェ~。見たこともない乗り物とか建物が大量にあるぜ!」

「エルフとドワーフが一緒に居るなんて、あたしには考えられないわ……」


 グラドが目にしたのは遊園地ね。

 ジェットコースターや観覧車は遠目でも見れるから、どうしても目を引くらしい。

 ――っと、そういえばトリムはハーフエルフだったわね。

 世間ではドワーフとエルフは仲が悪いって言われてるんだけど、ここアイリーンでは全く問題なく生活してるわ。

 問題起こした奴は叩き出すから当たり前なんだけども。


「観光は後でさせてあげるから、さっそく特訓を始めましょ。付いてきて」


 街に入ると、さっそく訓練施設という名のトレーニングジムへと案内する。

 普段なら外部からやって来た冒険者が使用してるところを、今日から一週間の間は貸し切りにしたわ。


「それじゃあ今日のトレーナーを紹介するわ。私の眷族で、あのアーモンドとかいうヴァンパイアを倒した猛者。その名もモフモフ――」

『お姉様、現在モフモフはアンジェラの過酷な洗礼を受けて再起不能です』


 あらら、それじゃ代役を出すしかないわね。


「……コホン。モフモフは忙しいみたいなので、代わりを紹介するわ。ザード!」


 シュタ!


「ここに!」


 喚んだのはBランクのリザードマンキングであるザード。

 今は人化した状態で、青い鎧兜で身を包んでいる姿は戦国武将そのものに見える。


「まずは近接戦闘を学んでもらうわ。ザード、お願いね?」

「承知。体術と剣術なら(それがし)に任せていただこう」


 皆の顔がいよいよかと真剣になる。

 私が強くなれたのも眷族とのレベリングだと説明したから余計にね。


「まずは座学から!」

「「「……はい?」」」


 そして何故か座学を始めようとする……。


「座学はいいのよ座学は。それよりも実戦形式で鍛えてあげて」

「しかしアイリ殿。剣の道とは遠く険しい(いばら)の道にてそうろう。まずは座学により知識を高め――」

「だからいいって!」


 そういうのはストロンガー先生がすでにやってるから、普通にレベリングした方が強くなれるわ。

 ここイグリーシアは高ランクの魔物と戦うほどレベルが上がりやすいから、Bランクのサードと長時間特訓すれば相当レベルアップできるはずよ。


「ならば実戦で鍛えるとしよう。これからお前達を徹底的に痛め付けるゆえ、覚悟するがいい!」


 ――という情熱溢れる台詞を吐き出されてから3時間後。

 いつの間にか竹刀を手にしたザードのシゴきにより、リュック達は息を切らして床に倒れ込んでいた。


「どうしたお前達! まだ闘いが始まってすらいないぞ! 悔しくないのかぁぁぁ!」

「「「…………」」」


 悔しいです! と言う気力すらないらしく、皆はひたすらゼェハァ言って突っ伏している。

 初日からこれはキツいんじゃ……。


「ハァハァ……。これなら……ストロンガー先生の方が全然優しい……気がするよ……」

「だ、だなぁ……。まさかあの先生以上の過酷な訓練だとは……」

「フゥ……フゥ……。あたし達、恵まれてる方だったのね……」

「もう立てねぇ……」


 ご覧の有り様だけど、全員のレベルが10以上あがってるわ。

 今のリュック達は平均するとレベル14くらいで、駆け出冒険者の平均レベル15に近い。これなら複数のゴブリンに遭遇しても充分対処できるはずよ。

 ちなみに一般人の成人男性でレベル10くらいになるわ。


「で、どうする? もうすぐ夜になるし、観光するなら――」

「「「身体が動かない……」」」


 ま、そうなるわよね。

 だけどこれを乗り切れば武術大会でも善戦できるはずよ。


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