表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/110

目覚めた姉

 目の前にはエネルギーの充填を始めたガルツギア。

 但し中には私のお姉ちゃんが……。


「アイカ、何か方法は!?」

「せめて時間を稼ぐとか……」

「……ガルツギアの解析ができない限り、手の打ちようがありません」


 つまり、何もせずにお姉ちゃんを見殺しにしなきゃならない……。


『フハハハハ! 諦めろ、貴様の姉は二度と目を覚まさぬよう手を施してある。妾に刃向かった事を悔いて、姉を殺すがいい!』


 クッ……せめてダンジョンコアの場所が分かれば、直接ガルドーラを仕留められるのに!


「お姉様、まことに残念ですが、いよいよとなれば覚悟を決めてください。アイナお姉様を犠牲にしてでも――」

「それはダメ!」

「そうよアイカ、せめてお姉ちゃんの目が覚めれば――」


 ――なんて起こりもしない事を言うもんじゃない。普通はそう思うかもしれない。

 けれどお姉ちゃんは例外だった。


「ふぁ~~~ぁ、よく寝たぁ♪」

「「「!?」」」


 ガルツギアの中で、お姉ちゃんが目覚めた。

 これも夢じゃないのよね? ガルドーラの言っていた事はハッタリ? 


『そ、そんなバカな!? 全神経をガルツギアと接続し、完全な操り人形と化したのだ。妾が命じぬ限り目覚めるはずがないのだぞ!? それを無視して動くなど……』


 ガルドーラもああ言ってるし、やっぱりお姉ちゃんが異常らしい……。


「あ、あのぉ……」

「お姉……ちゃん?」

「あ、アイリちゃんだ~、なんだか久しぶりね~♪ しかも二人に増えるなんて、お父さんとお母さん頑張ったのね~」フリフリ


 お姉ちゃんの動きに合わせてガルツギアが手を振っている。

 もしかしなくても新たなスキルを産み出したんだと思う。

 あ~鑑定スキルが使えないから詳細が見れなくて残念だわ~(棒声)

 しかも変な誤解までしてるし、あとでキチンと説明しとこう。


「よう分からんが(しゅ)よ、これはもう戦わずともよいのかのぅ?」

「もちろん!」

「ガルツギアはお姉ちゃんが制御してるっぽいし、大丈夫でしょ」


 後は上手く引き剥がすことだけど、これは帰ってからでもいいわね。


「あ、エネルギーの充填が終わったって~。どうしたらいいと思う~?」

「何もしなくていいわよ」

「間違っても照射しないでね?」

「うん、分かっ――」

『何をしておる! さっさと照射して、そやつらを消さないか!』


 チッ、ガルドーラのやつ、まだ諦めてなかったのね!


「それは嫌だよ~。だって皆を死なせたくないもの~」

『黙れ! 貴様は妾の所有物なのだ、黙って言うことを聞けぃ!』

「そういうこと言う人は嫌~い。もぅ絶対に言うこと聞かないもん!」


 お姉ちゃんが――というよりガルツギアが腕を組んで座り込みを開始した。

 デカイくせに何て器用なのかしら……。

 それとは別に、さっさとダンジョンコアを見つけて終わらせよう。


「残念だったわねガルドーラ。アンタの命もダンジョンコアを見つけるまでよ」

『フン、ならば探してみるがいい。見つけられるものならな!』


 モタモタしてるとまたDPが貯まっちゃうから、早く探さなきゃ。


「みんな、手分けしてダンジョンコアを探しましょ」

「必ずどこかにあるはずよ」


 ガルドーラはイグリーシアのダンジョンを解析して造ったと言っていた。

 ダンジョンコアはなくてはならない存在だから、絶対になきゃおかしい。


「しかしこれだけ広いとなると、とても探しきれませんね……」

「分かってるけど、頑張って探して」

「そうよアイカ、このまま帰るわけにはいかないんだから」


 1分が一瞬で過ぎ去っていく。

 これ以上ガルドーラに時間を与えるわけにはいかないのに……。

 そんな感じに焦っていると、まったく聞き覚えのない声が脳裏に響いてきた。


『お任せください、アイリ様!』

『『え……誰?』』


 思わず辺りを見渡すも、声の主は見つからない。

 いったいどこから……


『ここですここ――足元をご覧ください』

『『足元……ンゲッ!?』』


 言われるままに足元を見れば、クロコゲ虫がピョンピョン跳び跳ねてるじゃないの!

 しかも一匹だと思ったらワラワラと集まってきて、100匹くらいの数に!


『コアの捜索でしたら我々にお任せを。行くぞみんなーーーっ!』

『『『おおーーーっ!』』』


 そしてワラワラと散っていくクロコゲ虫。それも物凄い速さで! これはどういう現象?


「もしやお姉様、ダンジョンの入口で放ったクロコゲ虫を帰還させてなかったのでは?」

「「あっ……」」


 すっかり忘れてた。確かに100匹くらい召喚したっけ。

 てっきり宇宙のダンジョンでも自然発生したのかと思って恐怖したわ。アイツらどこにでも湧きそうだし。


「でも眷族ですらないのに、何で念話を?」

「そう、そこがおかしいのよ。自我が無いはずなのに」

「「どういう事、アイカ?」」

「いっぺんに喋らないで下さい。……まぁそれはともかく、イグリーシアの理から外れたダンジョンですので、経緯は不明ながらも進化を果たしたのではないでしょうか?」


 それしか考えられないわよね……。

 直接聞けば分かるだろうけど、彼らと交流するのは生理的に無理……。


『ギャーーーーーーッ、ヤメロォォォ! 来るな、寄るな、近付くなぁぁぁ!』


 どうやらダンジョンコアが見つかったらしい。

 しかも意思だけのガルドーラを恐怖させるっていったい……。


『アイリ様、ダンジョンコアを見つけましたので、これからここに巣を作ります』

『『……え?』』


 巣を作るって言った? マジで!?


『グワァァァァァァ! おのれぇ、クロコゲ虫の分際で妾に噛みつく――ギャーーーッ、イタイイタイイタイイタイ!』


 ダンジョンコアに意思を封入してるらしく、ガルドーラがもがき苦しんでいる。

 何もせずにクロコゲ虫に食われるとか、私なら堪えられない……。


「なんか~、クロコゲ虫への認識が~、変わりそうです~」

「……せやな」

「むぅ……あのように()いずるのが速く動くコツなので御座ろうか……」


 他の眷族も顔を青くしている。

 ちなみにザード、真剣に考えるだけ無駄よ?


『お、おのれぇぇぇ……このような最期、断じて認めは――イタイイタイイタイイタイ! ギャーーーァァァ……』


 哀れガルドーラはクロコゲ虫によって消滅した。

 うん、敵ながらちょっとだけ同情する。


『アイリ様、ダンジョンコアの制圧を完了しました。いずれこのダンジョンは崩壊しますので、お早めに脱出する事を推奨します』

『もちろん脱出するわ』

『でもアンタ達はどうするの?』

『残念ですが、我々は宇宙に適合してしまったためイグリーシアには戻れません』


 適合? それに戻れないって――


『『どういう事?』』

『このまま戻ればイグリーシアの神により、侵略者として()()されてしまいます。我々はそれを望みませんので』


 どうやら宇宙で(たくま)しく生きていくつもりらしい。

 それならそれでいい――のかな?


『ですがアイナお姉様はどうなるのです? まさしく宇宙(ここ)で進化したと言えますが』

『それなら大丈夫ですよ。アイナさんには神の加護がついてますので、断罪される心配は皆無です』


 ほんっっっとぉに今さらだけど、お姉ちゃんにはギフトが与えられてたらしい。

 加護もちの私ですら看破できなかったって事は、ミルド様よりも上位の神様って事に。

 それをクロコゲ虫が看破した事は……うん、もはやどうでもいい。


『さぁ、脱出用のゲートを開きましたので、ここから脱出を』


 再びワラワラと集まり、地面に大きな穴が空いた。ここに飛び込めばもどれるらしい。


『その……何というかゴメンね?』

『私が召喚したせいで戻れなくなっちゃって……』

『いえ、お気になさらないでください。こうして新たな居住地を手に入れられて、我々としては感謝しているのですから』


 あ~、つまりこのダンジョンはゴキブリダンジョンとして生まれ変わると……。

 うん、もう私は知らない。

 例え名も無き宇宙人が発見し、大発見だと騒がれても私は無関係、OK?


『お姉様、全員入りました』

『うん、分かった。――それじゃあね? クロコゲ虫達』

『無責任かもだけど、元気でね?』

『はい。アイリ様もお達者で!』


 こうして私達は宇宙のダンジョンから脱出した。

 したけれど、このあと大問題が発生する事に。

 あ、先に言うと、私が二人になった事でいろいろと……ね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ