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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、中身はアホのこのままでした【連載版】  作者: 空飛ぶひよこ


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アホのことヒロイン4

 ……な、何故朝から、変態に待ち伏せされないといけないのでしょう。神様、私は前世でそれ程の罪を犯しましたか?(怠惰の罪とは言わないで)

 た、助けて要ー! なんか舐めるように、上から下まで眺められてるよー! 今すぐ女子寮来てー!


「……昨日注意したばかりなのに、全く直ってないじゃない」


 ため息と共に、姫乃ちゃんがバックから取り出したのは、一振りの鞭……ではなく、ブラシと櫛。


「ちょっとこっち来なさい! 髪の毛整えてあげるから」


「……は、はい?」


「女帝様がこんな格好で学園来たら駄目でしょ……全く」


 ブツブツ言いながら、髪の毛を整えてくれる姫乃ちゃんの手つきは、素早いながらも丁寧で、全く痛くない。

 ……あ、あれ?


「ひ、姫乃ちゃん?」


「髪の毛は、こんなものかしらね……リボンも! 曲がってるというか、縦結びなってるわよ! 靴だって汚れてるじゃない、もう」


「……直してくれるの? ありがとう……って何さりげに、赤いピンヒール履かせようとしてるの!」


「ちっ……礼代わりに踏ませようと思ったのに」


「さりげなく、変態行為ぶちこんでくるの、やめて!」


 済木姫乃ちゃん……恐ろしい娘………!

 ……だけど、身嗜み整える手は、なんか凄く丁寧だったな。この娘、よく分からないぞ?



「……よし、及第点。それじゃあ、行くわよ」


「え? 行くってどこに?」


「学園に決まってるでしょう。……早く行かないと、遅刻するわよ」


 ……なんかよく分からないけど、一緒に登校することになりました。あれ?

 よく分からないけど、せっかくだから昨日からの疑問をぶちまけてみよう。


「……姫乃ちゃん。姫乃ちゃんも転生者なんだよね?」


「転生者? ……ああ、前世の記憶があるってこと。そうよ。だから、この学園に来たんじゃない」


「なんてか、その……乙女ゲームにするタイプに見えないけど、なんでゲーム内容知ってるの」


 正直、不思議で仕方なかったんだ。

 姫乃ちゃんは変態だけど、なんてかあまり同類臭が……オタク臭がしない。乙女ゲームやるより、アダルトな3次元に興味がありそうな感じ。

 完全に今まで出会ったことがない人種だ。……というか、まあ、普通に生きてたら出会わないよね。当たり前に。


「そんなの、『女王様』『狗』『SM』で検索掛けたら、引っかかったからに決まってるでしょ」


「………………」


 ……そしてやっぱり、姫乃ちゃんは姫乃ちゃんだった! な、何の為に検索掛けてたかは突っ込むまい。


「それまで二次元には興味なかったけど、出てきた女帝様のイラスト見て、ビビッときたの……この人こそ、私が求めていた理想の女王様だって! 思わずそのまま、ネットで衝動買い。お仕置きエンドを求めて、何度も何度もプレイしたってわけ」


「……ねぇ、それで、他の攻略キャラに目覚めるとかなかったの? イケメンたくさんいたでしょ」


「あり得ないわね。……というか私、他のキャラのルート一度も攻略してないもの」


「え」


「私が女帝様を追放するような選択肢選ぶはずないでしょう? 他のバッドエンドは見たことあるけど、それ以外のエンディングなんか興味ないし」


 ……乙女ゲームの存在意義そのもの、全否定してるー!

 ちょ、待って、本当色々ぶっ飛び過ぎて、突っ込みが追いつかない……!


「残念ながら、実際の女帝様はゲームと随分違ったけれど……まあ、いいわ。私、乙女ゲームはしないけど、育成ゲームはそれなりに嗜んでたの。難易度が高ければ高いほど、調教しがいがあるってものじゃない?」


 ……やめて、舌舐めずり、やめて。目が、とても怖いです。悪寒がしました。

 というか、どうせ調教するなら、わんこを……


「……ひ、姫乃! 偶然」


 ……と、思ったら、自分からやって来たぞ、武宮わんこ。

 しかも、ぶんぶん尻尾振りながら。


「一緒、学園、行こう?」


「……なんで、毎朝毎朝、反対方向にある男子寮から通う貴方が『偶然』現れるのか、突っ込みにも疲れましたのでいい加減にしてくれませんかね? 私、女王様の育成に忙しいので、貴方に構ってる暇ないんです」


「女王、様?」


 そこでようやく、武宮わんこは私に気付いたようです。……どんだけ姫乃ちゃんしか目に入ってないの。

 

「ーーアホ、女帝……なんで!」


「それは、彼女が私がずっと探し求めていた、理想の相手だからです。理解したら、さっさとどっか行って下さい」


 ……うお、姫乃ちゃん、武宮に冷たい。そんな、しっしと犬を追い払うように手を振らんでも。

 そして武宮………耳が、想像上の耳が、ぱたんと伏せられているのが、見える。今にも、くーんという悲しげな鳴き声が聞こえて来そうだ。


「……俺、は」


「……………」


「俺は、諦めない、から!」


 そう言ってダッシュで去って行く武宮。……おーい、そっち学園と反対方向だろ。どこ行くんだい。

 そして、武宮……見間違えじゃなければ泣いてたよな。あれ。


「……男で、しかも犬属性とか全く興味ないんで、さっさと諦めて下さいよ。しつこい」


「ひ、姫乃ちゃん、武宮に冷たくない? 泣いてて、かわいそうだったよ」


「全然。編入初日から、付きまとわれていい加減うんざりしてるのよ。昔、いじめられてるの助けてもらったとか、さっぱり覚えていないのに。いじめられてるのが羨ましくて、代わりにいたぶって欲しくて乱入するのなんてしょっちゅうだったし。いくらそう説明しても、あの犬全く話を聞こうとしないんだから」


 ……う、うお。いじめっ子からかばったの、そんな理由だったのね……いっそ気持ちいいくらいのドエムだな!

 というか、そんな変態っぷり見せつけられても、かつどれほど冷たくされても、尻尾振ってる武宮もすごい。……わんこの愛情、舐めてたよ。

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