アホのこと生徒会3
「生徒会長ーー竜堂寺要」
そして、案の定さらっと名前言われる要さん、すごい。すごいけど、ひねりなくてつまらん。
……いや、ここは「まさかの生徒会長落選……!? え、それじゃあ来月からの乙女ゲームは一体どうなるの!?」みたいな展開が待ってるべきなんじゃないだろうか。意外性0過ぎて、逆にちょっと拍子抜けだよ。
その後告げられた生徒会メンバーもゲームのままで、順当と言えば順当だけど、よくよく考えれば突っ込みどころ満載なメンバーに決定した。
……人気メンバーで選ばれた生徒会長も、副会長も、会計も書記も全員男ってちょっとおかしいよね。男女同権な時代にさ。うちの生徒の半分は女性なんだから、少なくとも一人くらいは女の子いるべきじゃない? ……まあ、それも全ては生徒会長である要が後にヒロインちゃんを「庶務」に任命して、攻略対象達に囲まれた逆ハーシチュ作る為なんだけどさ。
……そういえば「庶務」だけ、生徒会長指名というのも理不尽な話よね。人気投票五位の人にしたげなよ。そもそも人気投票じゃなく、立候補制にすべきなんじゃ……って、まあ乙女ゲーム特有のご都合主義設定に突っ込み入れたらキリないか。
「ーーそれでは、新生徒会長に代表して就任挨拶を」
……と、そんなこと考えてる間に要の出番だ。
おお、スケバンマッチョさんたち一斉にビデオカメラ構えだした……って、どこにそんな立派な機材隠し持ってたの!? なんかテレビ局レベルなカメラすらあるんだけど……!(あ、あれ持ってる、亀田さんは確かお父さんが有名テレビ局のトップ……って、もしかしなくても本物……!?)
ちょ、待って! 要を照らし出している照明も、さりげに要ファンクラブの人がやってるぞ! というか、司会進行してる選挙運営係かと思ったら、今要にマイクを恭しく差し出したのも、マッチョ軍団の一人ではないか……!(親が大手電器店経営している、舞ノ内さんじゃないか……!)
……改めて、要ファンクラブの恐ろしさ見せつけられたわ………。
「……今さら名乗る必要もねぇだろうが、今年度の生徒会長に選ばれた、竜堂寺要だ。どう考えても面倒ごとが増えるだけだから、喜んで受けいれるとは言わねぇが、選ばれたからにはちゃんと役割を果たすつもりだ。どんな想いから俺に票を入れたかは知らねぇが、お前らの期待は裏切らねぇよ」
ローテンションかつ、ざ・俺様な挨拶だが(しかも言葉遣いが汚い)、この状況的にはこれでよかったらしい。女の子達は、みんなきゃあきゃあ歓声あげてる上に、スケバンマッチョさんたちもうっとりと頬を染めて、恋する乙女モードになってる。……カメラさん、撮るなら要より、みんなの反応撮った方が絵になると思うよ。色んな意味で。
……個人的には、こういう公の場もあえて俺様生徒会長っぽいキャラ貫いてる様が、ちょっと高二病っぽくて、くすぐったかったりする。あえて公の場でも、堅苦しい挨拶しない、俺かっけーみたいな。……とか思ってるのバレたら、要から怒られそうだから、絶対内緒にしておこう。
ーー大丈夫、要は私より、よっぽどTPO分かる子だもんね! 粋がってる感じも、生徒を盛り上げる為のパフォーマンスだもんね! 私はちゃんと分かってるよ、うん!
「……で、こうして生徒会長に任命されたからには、早速生徒会長権限を使わせてもらおうと思う」
……あれ。まだ、要の挨拶終わってなかったの?
妙な気恥ずかしさから逸らしていた目を壇上に戻すと、ちょうどこっちをみてた要と、ばちっと目があった。
視線を逸らすのもあれなんで、さりげなく手を振って、口の動きだけで「やっほー」と伝えると、要の目が細まった。
……うん? なんか嫌な予感がする笑みだな。こう、碌でもないこと企んでるような、してやったりみたいな、そんな感じ。え、ちょっと待って気のせいよね。気のせいと言ってくれよ、要。
「ーー会長権限で、新生徒会庶務を任命する。……鳳凰院綾華。お前も、今日から新生徒会メンバーだ」
……て、えええーーーっ……!?
「………おかしい。絶対おかしいって、この状況……」
「ああ? 何もおかしいことねぇだろう。俺は、ちゃんと規定に基づいて、正当な方法でお前を庶務に任命しただけだ」
「だから、それを生徒会長就任直後にやっちゃうのが、おかしいの……!」
……駄目だ、こいつ! 全く悪びれてない……!
私はしれっと手元の書類に目を落としてる要を前にして、頭を抱えた。
「生徒会庶務の任命っていうのは、まずは四人で業務こなした上
で、手に余るようなら任命される後づけな役職なはずでしょ……まだ働いてないうちから任命するなんておかしいって……」
……まあ、一応「建前上は」の話だけど。四人で仕事するより五人の方が楽に決まってるから、大抵の生徒会長は一ヶ月以内に庶務を任命して仕事手伝わせるけど。だったら最初から任命しろよ、と思ってたけど。
……それにしても、ねえ?
「やっぱりさあ……腹黒二重人格副会長にも、チャラ男会計にも、武士系書記にも一言も相談しないのはちょっとさ……」
「ーー誰が腹黒二重人格ですって?」
「っ!!」
こ、このブリザードが如き冷たい視線と、柔らかそうに聞こえるけど、ところどころに刺がある声は………。
「副会長、斎ノ原 愛那……! 何故、ここに……!」




