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アホのこと中等部4

 他に友達はいないながらも、(そして陰口を叩かれたりしながらも)、とりあえず大きな問題はないので、二人ぼっちな学生生活をエンジョイしていたわけですが。


「……なんと」


 ある朝机の引き出しに教科書を入れようとしたら、ビリッと嫌な音。

 ……ま、まさか必要なプリントずっと入れたまんまだった……!

慌てて引っ張り出すと、そこには破れた手紙と、謎の二通の手紙。

 開いてみると、毛筆で荒々しく書き殴った字でこう書かれてました。


『……これで三通目だ。いい加減気付け!! 今日も放課後、屋上で待っている。必ず一人で来るように。 助田 番子』


 ……そして破れた封筒に書かれていたらしき「果たし状」の文字。


 ーーまずい! 要ファンクラブ会長こと、通称「スケバンマッチョ」に呼び出されてしまったぞ! しかも、二回スルーしてる……!




 さて、皆さん。乙女ゲームの攻略キャラの、ファンクラブ会長と言えば、どんなキャラクターを想像するだろうか?

 女帝様がごとく、美人で高慢かつきっついキャラクターか、それか敬語で穏やかそうに見えて狂信者っぽいキャラクター、あとは気が強いギャルとか、そんなところじゃないだろうか。

 ……うん。女帝様とのキャラかぶり心配するならさ、別に狂信者やギャルでも良いと思うんだよ。てか、普通そうだよね。

 推測するに「ちょっと要ルートは色々暗くてSMチック過ぎるから、少しくらい弾けた要素を入れた方がいいんじゃないか」ってシナリオライターが考えたんだと思うんだよ。それか「もうシリアス展開つかれた」って、変なスイッチ入った気がするんだよ。

 じゃなきゃ、さ………



「ーーほう。本当に一人で来るとはね。なかなか根性あるじゃないか」


 ……じゃなきゃ、こんな某世紀末伝説的見た目の、マッチョ女子軍団作らないよね! 絶対!

 見渡す限り、筋肉・筋肉・筋肉の壁!

 スケバンとは格好ばかりで、ヘソ出し(お色気要素じゃない……制服が小さ過ぎるんだ! 胸筋に対して!)の制服から除くバッキバキ

に割れた腹筋に、ロングスカートで隠れていても分かる盛り上がった太股! 

 手に持った鎖とか、もうあれよ! 70年代のスケバンのアイテムじゃなく、RPGのモンスターの武器にしか見えないよ!


 ………「箱庭の虜囚」、最大のネタキャラクターが、今私の前に本物となって現れました。

 正直、もう帰りたいです。


「……まずは、二日ほど呼び出しに応じなかったこと、謝らせてもらうわ。うっかり存在に気づかなかったの」 


 ……まあ、しかし、この怒れるマッチョ軍団が素直に帰してくれるはずもないので、とりあえずまずは謝罪しておこう。

 火に油を注ぐだけにしても、この件に関しては私に非があるからね。……この人達、昨日も一昨日も屋上で待ちぼうけして放課後潰したなら、その間誰も屋上よりつけなかったんだろうな。うっかり放課後屋上に来た人がいたら、本当に悪いことをした。扉を開けた瞬間、ダンジョンが待っていたんだ。さぞ、怖かったことだろう。

 私の言葉にスケバンマッチョさんは、ニヤリと笑った。


「私達を前にして、開口一番がそれとはね。いいさ、気付かなかったものは仕方ない。私達の伝え方にも問題はあったからね」


 ……あら、スケバンマッチョさん、存外いい人?

 いや、待て落ち着け、私。

 か弱い私のような美少女を、集団でかこんている、マッチョ。

 少し優しい顔を見せたからと言って騙されちゃいけない。

 悪人が、ちょっと優しい部分見せたら、めちゃくちゃ良い人に見える、あの心理だから……!


「鳳凰院 綾華……あんたが、この学園に編入してから二ヶ月。あんたが要様のそばにいても良い人物か見定めさせてもらったよ」


 そう言うと、スケバンマッチョさんは手に持っていた鎖を、後ろに控えていた子分に預けた。

 ……凶器を、手放した……だと!? こ、これはもしかしたら、私を害する気はないと言うことか!?


「鳳凰院のお嬢様なんて、ちょっと嫌がらせを繰り返せば、すぐに泣いて要様から離れて行くと思ったが……その程度の想いで要様の隣に居座ることなんて許せないと思っていたが、あんたなかなかやるじゃないか。気にいったよ」


 ………あれ、嫌がらせなんかされてたっけ? うん? 陰口のこと?

 なんか知らないけど、気にいって貰えたなら、ラッキーなことだ。もしかしたら、このまま何事もなく見逃してもらえたりなんか………。


「だがね。私達も、伊達に九年間要様を見守っていたわけじゃない。そう簡単に、ぽっと出の、あんたを認めるわけにはいかないんだ。要様の幸福の為にもね」


 ……しないですよねー。うん、知ってた!

 そして、腕まくりしてる貴女の姿に、今、めちゃくちゃ嫌な予感してる!


「さあ、最終試験だよ。鳳凰院綾華ーーあんたの要様の想いを拳で私に伝えな! ここにいる他の奴らはあくまで見届け人。使うのは素手だけの、タイマン勝負だよ!」


 うわん、やっぱり嫌な予感当たってたー!

 貴女、素手言うても全身凶器みたいな人じゃないですかー!

 完全に死亡フラグしか見えない!!

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