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アホのこと中等部3

「……他になんかあるの?」


 ま、まさか、私の知らないところで、黒い画策が……!

 もしや、あれですが! 要ファンのお嬢様が金に物を言わせて、後ろに立ってはいけない眉毛が凛々しい凄腕スナイパー、雇っちゃいましたか!?

 ちょ、待て。どう考えても、わんこ要が私を庇って死んじゃうフラグ……! 最後に「お前はアホだったけど、最高の飼い主だったぞ……」とか思いきりデレて、お茶の間の視聴者号泣させながら、がくりと息絶える流れ……!


「え……やだやだやだやだ! 要、今まで通りツンツンわんこのままで良いから、死なないで! まだ正規乙女ゲームのストーリーも始まってないのに!」


「……なんでそうなった、なんで。人を勝手に殺すな。お前みたいなアホ残して、死んで溜まるか。心配過ぎて成仏できねぇよ」


 ……うん? この要の反応みる限り、暗殺フラグはない?

 よかったー……! 要が死んじゃうなんて、絶対いやだもん!

 要は、いつかヒロインちゃんと出会って私から離れて行ったとしても、その後は絶対誰より幸せにならないといけないんだから! 不幸な境遇背負ったままデッドエンドだなんて、例え神が許しても、飼い主である私が許しません! 絶対っ!


「……しかし、そうなると本当に心当たりないぞ……?」


「………」


「ま、いっか。……それより要さー。また私、教科書無くしちゃったから、購買まで一緒ついて来てよ」


 昔から……ええ、それこそ前世から無くしもの女王だったが、最近とみにその頻度がひどい。それというのも、どれだけ無くしても無くしても、すぐに購買で簡単に手に入ってしまうからだ。

 ……金持ち学校って、すごいんだよ。教科書やら授業道具いくら無くしても、購買にいつでも予備がストックしてあるの。しかも、無料でくれるっていう神仕様!(まあ、その分過分に授業料ぼられているんだろうけど、その辺はお父様のお財布だから言及しないことにする)

 教科書無くしたり、お弁当のしみでまっちゃちゃのぼろぼろにしても、どこで手に入れれば良いか分からなくて途方にくれたあの頃とはまさに雲泥の差! ……いやね、うん。だからって無くしても大丈夫って油断してもあかんと思ってるのだけどね。あの、資源的問題で。

 ……前から不思議なんだけど、私の周りだけ謎のブラックホール存在してない? どう考えても無くしようがないものが、色々消えてくんだけど。部屋だって、今は高井さんが毎日掃除してくれてるから、ぺっかぺかなのに………あ、もしかして私の扱い雑過ぎて、高井さんが必要なものまでゴミと勘違いして捨ててるとか? ……否定出来ない自分が辛い。今度さり気なく高井さんに聞いてみよう。


「………お前、本当にアホなんだな」


「ひどい、要! 確かに最初は授業はじまるまで気付かないこと多くて、要に机くっつけて見せてもらっていたけど、今は朝のうちに確認してるから、だいぶましになったでしょ! ……ま、まあ、なんでそもそも無くしものするんだ、って話だけど」


「違ぇ……まあ、お前が気づいてないなら、言わないでおく」


 ……解せぬ。なんで、今の流れで要からこんな目を向けられねばならんのだ。私の無くしものなんて、今さら……って開き直ったらあかんか。地球の為にも反省しよう。うん。


「というわけで、要ほら、ついて来た。ついて来た。ジュース奢ったげるから」 


「……奢るって、サービスだろ。それも」


「いーじゃん。いーじゃん。一緒に新発売の、イチゴ果汁50%濃厚オレ飲もうよ。つぶつぶクラッシュイチゴ入りの」


「……俺はバナナの方が好きだ」


「バナナもおいしいけど、イチゴの方がぷれむあむな高級感が……っとう!」


 次の瞬間、うっかり足を引っ掛けて前のめりに転びかけた私は、その場でシュパッと跳躍した。

 ……ふふふ。前世では注意力散漫だったうえ、何もないところですらこけることもあったが、女帝様のスペックを引き継いだ私はひと味もふた味も違うぜ! 注意力散漫は残念ながら時々再発するが、立て直す運動神経があるからね!

 そのまま、くノ一が如く華麗に着地した私は、爽やかな笑みを浮かべて、引っ掛けた足の持ち主を振り返った。


「ごめんなさい。ぶつかってしまったわ。……怪我はないかしら?」


 ……ぶつかった私も悪いけど、人が通る可能性があるとこに足出してた君も問題なんだから、慰謝料よこせとか言わないでおくれよ。

 よし、もし裁判まで発展してしまったら、要を弁護人にしよう。きっと要なら、弁護士なしでも勝訴に持ち込めるはず。


「……い、いえ。……こちらこそ、ごめんなさい」


「なら、よかったわ」


 しかし、足を出していたお嬢さんは、引き攣った笑みを浮かべて許してくれた。……うん、お互い様だもんね! ごめんよ、勝手にヤクザ扱いして。被害妄想だったね。


「じゃ、購買行こうか、要………要?」


 ……うん? なんで要、さっきと同じような呆れ返った目をしてるの?


「……まあ、お前が気づいてねぇなら、良いけどよ」


「?」


「あと、さっき飛び上がった時、パンツ見えてたぞ」


「ぎゃああ! 私のシルク百パーセント、純白フリルパンツ、見てしまったのね! このラッキースケベ属性め!」


「見たくて見たんじゃねぇよ。あと知りたくもない情報教えるな」


 ………これだから、メインヒーローって奴はよ!

 あと、頬赤く染めるくらい礼儀として、しなさいな!

 乙女のパンツ目撃したんだから!

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