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アホのこと中等部2

 要のファンクラブの頭は頭で別にいるけど、それでもゲームの女帝様には絶対服従は大前提だ。だって女帝様はカースト制の頂点。そして、帝王とされる要と、唯一並び立つことが(犬扱いはあくまで秘密裏だから、ファンクラブの生徒は知らない)認められている、君臨者。ファンクラブの会長に敵う相手じゃない。

 要ルートでは、最初ヒロインの様子見として、女帝様が味方のふりをしてファンクラブから庇う場面まであるのだ。もちろんファンクラブが逆らえない前提で。

 ふははは。鳳凰院の名前に敵う相手などいないのだよ! 要さん! それは無用の心配ってものさ!


「……だから、お前はゲームの情報なんでも鵜呑みにし過ぎなんだよ。まず自分がイレギュラーな存在な時点で、話が変わってくるって気付け。アホ」


 そんな要の突っ込みは、高笑いする私の耳には入りませんでした。てか、右から左へ抜けてきました。ええ。




 ……ふふ。私忘れていたよ。

 女帝様は取り巻きはいるけど、要以外とは周囲と距離を置いている孤高の存在だということを。

 君臨者というものは、悲しいものだな……その有能さ故に並び立ってくれるものがいないのだから。

 だからこそ、女帝様もまた、わんこである要を求めたわけだな。強者の安らぎとして……ふむ。今の私には、不思議と女帝様の持つ悲哀が理解できる気がするよ………ふふふ


「ーー現実逃避してないで、認めろ。総スカン食らってるって」


「……孤高故の孤独なのっ! 嫌われてるんじゃなくて、恐れ多くて近づけない存在なのっ!」


 欧洞学園中等部に進学して一ヶ月ーーただいま、絶賛ぼっち……っていうには要がいるからな……絶賛二人ぼっちなうです。

 ……ある意味原作通りだね! うん!


「……てかさー。鳳凰院よ? 鳳凰院。学園で一番大きな会社のお嬢様よ? なんでさー『新参者の癖に、要様に近づくなんて生意気』とか『要様に権力で、わざとテスト手を抜かせるなんて最低』とか、堂々陰口叩けるわけ? なんで火の粉が自分に振り返る可能性考えないの?」


「集団心理という奴だろ。いくら鳳凰院とはいえ、この人数相手にどうも出来ないだろうという。……あとは無知だな。狭い学園の常識しか知らないから、まさかその外にさらなる脅威があると思わねぇんだろう」


 ……うう。冷静な分析ありがとうよ。要。

 まあ、確かにたかが陰口。いちいちむきになっても仕方ないって分かってるけど。ちくちく聞かされると地味に凹むね!

 机に突っ伏す私の頭に、要のため息がかかる。


「………これで身に染みて分かっただろ。俺から離れろと言ったわけが。今からでも遅くねぇから、俺から離れ……」


「え、何言ってんの、要。私から唯一の安らぎまで奪うとか言わないでよ。要から離れたらぼっち拗らせて、普通に死ぬよ」


 きっと涙目で要を睨みつける。今さらなにを言い出すんだ。

 要がいない、この学園とか普通に淋し過ぎて死ぬでしょう! いやに決まってる!

 密かな(しかし、おそらくバレバレであろう)お父様の手回しによって、要と万年隣の席でいられることが、救いだというのに!


「いや……だから、俺から離れて、新しく友達を」


「新規コミュニティの参入に失敗した時点で、友達作りのチャンスはほぼないも同然なのだよ。少なくとも私のようなコミュ力の人間は」


 ちっちっち……甘い、まるでカラメルをとろっとかけた溶けかけのソフトクリームのように甘いよ要!

 友達作りは初動が肝心。それを私は前世の経験でよく知ってるのさ。

 最初に笑って受け入れてもらえればスムーズにコミュニティになじめるが、ドン引きされればぼっち地獄にごーなのが学生時代。なので私の前世の学生時代は、クラス分け直後に明暗が分かれている。

 はっきり言えば、今から一人頑張って友達作れる自信なんか全くなーい! そうでなくても、女の子からは敵意しかこもってない目向けられるのに、これで要まで傍からいなくなったら……うう、考えただけで涙がちょちょ切れそうだよ。

 ……だいたいさー


「……それに、私に離れろっていうけどさー、私いなくなったら要だってぼっちじゃん」


 そう、要は幼等部から欧洞学園にいるのに、一緒に過ごす親しい友達が誰もいないという淋し過ぎる学園生活を送ってたのだ。九年にもわたって。

 ……まさに「孤高の存在」扱いとはいえ、普通にこれいじめじゃない?

 まあ、噂を耳に挟む限り、要自身が「近寄るなオーラ」流してるらしいから、仕方ないかもだけど。

 しかし、私は要がどんなオーラ流してようと、関係なく近付かせて頂きますよ! だって私は飼い主だからね!


「……俺はいいんだよ、俺は」


「よくないでしょ。要だって、本音を言えば淋しかった癖にー。いいのよ? 変な意地張らないで、傍にいて欲しいって、雨に濡れた子犬が如き目を向けてくれても!」


 淋しげに、くぅーんと鳴いてくれればなおよし!


「淋しいも何も、それが当たり前だったから、今さら何も感じねぇよ……それよりお前に何かあったら、お前の父親に顔向けできなくなる」


 さらっと私の言葉無視しやがったけど……全く心配性なわんこだなあ。

 平気なふりをして、本当は寂しがり屋な癖に。……これも、ある意味でわんこの忠心かな?

 ふふ……愛い奴め。


「心配しなくても大丈夫だよ! いじめというか、陰口言われて、ちょっと孤立してるだけだもん。こんくらいじゃ心折れたりしないよ!」


「……………は?」


「要がいる限り、完全にぼっちじゃないしね。……しかし、さすがお嬢様学園。表だって嫌がらせする人は少ないねー」


「…………………………は?」


 ………はて。要はなんで、そんな信じられないものを見る目で、私を見てるんだろう。


「……お前、陰口言われて孤立してるだけって、本気で言ってるのか?」


 ………はい?




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