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アホのことサプライズ2

 そう一人固く誓ってから、早1年。

 ついに、ついにこの日がやってきたと言うわけだ!


「ーーというわけで、まずはプレゼント第一段ー! カモン・高井さん!」


 高らかに言い放って、パチンと高らかに指を鳴らそうとして……かすっと指が擦れただけでその場は終わった。

 ……しかし、こんなこともあろうかと、ちゃんと対策考えてあったからノープログレム! ボインメイドの高井優里菜さん! プランBに変更よ!

 私はこほんと咳払いした後、パンパンと二回手を叩いた。こう。お嬢様がするような優美な動きで。……うん。要がこちらに向ける目が冷たい気がするのは、気のせいだね!


「……要様、誕生日おめでとうございます」


 メイドの高井さんはプランが変わったことに対する焦りを全く表に出すことなく、自然なタイミングで例の物を持って来てくれた。


「夕食には要様のお好きなものを色々用意しておりますが、まだ時間が早いので………先に誕生日ケーキをお持ちしました」


「……ケーキ?」


「はい。こちらです」


 ……ふふ。戸惑ってる。戸惑ってる。そうだろう。そうだろう。こんな立派な誕生日ケーキを用意したのだから、それくらい驚いても仕方な……


「……その謎の塊がケーキなのか?」


「ーーちょっと崩れてるけど、ちゃんとケーキだよ! そして材料と焼き加減は、うちの専属料理人の監視……指導のもとしっかり作ってるから、味は美味しい! ……はず!」


 確かにクリームは、なんかでろんとしてるし、イチゴも、土台も斜めってる気もするけど、味は! 味はきっと美味しいのです! 多分、きっと、絶対!


「……もしかしなくとも、綾華。これ、お前作ったのか」


「ええ。要様。綾華様が、自分でうちのシェフに頼んだのです。全部自分の手で作りたいから、失敗しそうな時だけ教えてくれっておっしゃって。形はその……独創的ではありますが、味はシェフも保障していましたよ」


「……………そうか」


「あ、要。待って。食べる前に、儀式があるから! もうちょい待ってね」


 たたたーたたーた♪ たたたーたーた♪ たたたたーたーた、要♪ (大人の事情により、歌詞をたたたで誤魔化しております。せっかくの私の美声を、きちんとお聴かせできないのが残念です……あれ、音痴って以前言ったって? 気のせいですよ。ええ)


 有名過ぎる誕生日ソングを歌いながら、色とりどりのろうそくをケーキに差し込んでいく。数はもちろん12本。

 なお、火はとても危険で危なくて恐ろしくて怖いので、プロである? 高井さんにお任せする。

 ……私、マッチつけられないんだよね。前世で小学校でガスバーナーに火つけようとして、火が手の方に上ってきたのがトラウマで。……って、なんでこんなことばっかり覚えているんだ。

 餅は餅屋。適材適所。やっぱりこう言うものは、できる人に任せるに限る。


「……さあ!要、いざ火を吹き消すんだ!」


「……つけたばかりなのにか? 何の為に火をつけたんだ。意味ないだろ。だいたい吹き消したら唾が飛ぶかもしれないだろ」


「そう言う儀式なの! それにこのケーキ食べるのは私達だけなんだから、唾が飛ぶかもだとか、そんなことは気にしない! 今さらそんなの気にする間柄じゃないし! ほら、ぶつぶつ言ってないで消した消した」


 要はちょっと微妙な顔をしていたけど、それでもちゃんと一息で消してくれた。


「改めて、誕生日おめでとう!」


「……何度おめでとうって言うつもりだよ」


「何度だって言うよ! だって今日は、12年前に要がこの世に生を受けたおめでたい日だもん。おめでたいことには、どれだけ祝いの言葉を口にしてもいいんだよ!」


 何度だって、おめでとうって言おう。……要が12年間言われなかった分も。

 生まれて来てくれてありがとうって意味を込めてお祝いしなきゃ。




「……あ、確かに、見た目ほど味は悪くないな。そこそこ食える」


「でしょ? でしょ? なんせ、たーっぷりの私の愛情が込もってるからね! 美味しくないわけないのさ!」


「……いや、どう考えてもシェフの指導の賜物だろう」


 高井さんが切り分けてくれたケーキを、紅茶と一緒に二人並んで食べる。

 ……自分でいうのも何だけど、なかなか美味しくできたと思う。……見た目はともかく。

 なんせ最高級品だからね! 調理工程で大失敗しない限り、味はそれなりに保障されているのさ!

 ……しかし、クリームを柔らかいスポンジと一緒に口いっぱいに頬ばる幸福よ……! 生クリームの下から現れるイチゴの酸味が、また素敵だ……!


「……一気に口に頬張り過ぎだ。アホ。口の回りクリームだらけだぞ……たく」


「……っ!」


 そう言って要が、当たり前のように私の口についた生クリームを指ですくって、自分の口に入れたので思わず一瞬固まってしまった。


「………甘。クリームだけだと、普段甘いもの食べ慣れないから、少しきついな。ケーキはイチゴの酸味があってこそだな………って綾華、お前、何アホ面してるんだ」


「………いや。別に」


 ………やっぱりさ。


 こんなん平気でしちゃう癖に、唾が飛ぶかもしれないだなんて、今さらだよねえ?


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