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アホのことサプライズ

 ふふふふ……。

 ついに、ついに、この日が来たよ!

 この1年で練りに練った計画を実行する時であーる!

 要の家に手回し、よーし!(既に一ヶ月前から予約とってるよ! 下手に仕事押し付けられでもしたらあかんからな)

 使用人たちへの通達・及び準備、ばっちーし!(みんな笑顔で協力してくれよ! これも全ては要の……違う、わ・た・し・の! 主人である私の人徳ですな!)

 くっふっふ。後は、要が入ってきたタイミングで、この紐を引っ張るだけ。タイミングをばっちしにするべく、今日は廊下に設置された防犯用監視カメラ(さすが金持ち。監視カメラが標準装備とは……でも私の部屋には絶対置かせてないけどね! プライバシーは大事です)の映像を、特別に私用ノートパソコンに送らせております。

 ……お、要来た来た。あと少し、あと少し……

 ……よっし! 扉に手をかけた!

 今だ! 今このタイミングで……っ! ーーって、紐を止めてるテープ外すの忘れた!


「……こんなところで何やってるんだ、お前」


 呆れたようにこっちを見る要の姿に、私はサプライズの失敗を悟った。

 ……そんな、1年かけて計画練ったのに……。


「? お前何持ってんだ。それ」


 ーーしかし、神は私を見捨ててなかった!

 どうやら金持ちのお坊ちゃまは、庶民のグッズをご存知ないらしい。

 よっしゃ! ならば今こそ……て、固っ! 紐固っ! 


「うん? それ引っ張れば良いのか? 貸せ」


「ぎゃあっ! 私に、私に向けちゃ駄目だって!」


 ……くっ、仕方ない。かくなる上は。


「……要。この紐、一緒に引っ張ってくれる?」


「? ああ」


 そのまま二人でそれを握って、人がいない方に向けて紐を引っ張る。あれほど固かった紐は要と二人ならすんなり引けた。

 途端にパーンと鳴り響く破裂音と、立ち上る火薬の香り。


「……っ!」


 くくく……驚いてる驚いてる。真顔だけど、体びくって言ったもん。びくって。この反応を待っていたのだよ。

 要の目線の先には派手に飛び散ったキラキラの紙と、カラフルな紐達。……ごめんよ!メイドさん。せっかくピカピカにしてくれた床汚して。後で、掃除を……しないから、そこは頼んだ!(だって私、掃除機みたいな重いもの持ったことがないお嬢様ですもの。おほほ)


「ーー12歳の誕生日おめでとう。要」


 今だ何が起こっているのか分かっていない要に、ドヤ顔で言ってやった。


「今日は鳳凰院綾華主催の、要の誕生日パーティーです! 今夜は君を帰さないぜ!」


「……………は?」


「ふふん。残念ながら君に拒否権なぞはないのだよ! 私は鳳凰院家が竜堂寺より格上で、基本的には逆らえないことを利用して、お父様から直々に竜堂寺当主から、明日の昼まで要を借りる許可をもらったのだからね」


 おーほっほと、高笑いしたい気分だ。

 ビバ・権力。

 ビバ・鳳凰院家。

 人の時間は、金で買えるのだよ、要さん。世知辛いけどこれが現実。

 ふーふっふ。私は鳳凰院家の一人娘という権限をフル活用して、一晩要を買うのである。あら、こう言ったら、なんかやらしいね。最高に悪役令嬢だね。いやん、素敵。


「おいしーごちそうたくさん食べて、夜遅くまで二人でゲームして遊んでさ。最高の一日にしよーよ! 去年祝えなかった分まで二倍お祝いするからさ」


 そう。去年私は、要にちょっとしたプレゼントを渡したくらいで、ちゃんと要を祝えなかったんだ。

 お金持ちの家の子どもの誕生日って、親同士の思惑とかもあって、家で盛大にやるイメージがあったから。

 だから、プレゼントを渡した直後に要に言われた一言に、驚いた。


『誕生日プレゼントか……こんなものもらったの、初めてだな』


 ……そこで私は、ようやくゲームの中にあった要の誕生日イベントを思い出した。

 妾腹だと冷遇され、実の母親からも惜しまれることなく本家に譲り渡されていた要は、今までまともに誕生日を祝ってもらったことはなかったのだと、ヒロインに打ち明けるシーンがあったのだ。学園では特別視されるあまり抜け駆け禁止令が出ており(あと女帝様からの圧力もあり)、要自体誕生日オープンにしていなかったから、ヒロインのプレゼントが正真正銘生まれて初めてのプレゼントらしい。

 ……くそ、私め、何故こんな重要なイベント忘れてたし。

 いくら前世の私の推しが薄幸俺様生徒会長ではなく、無口わんこ(ガチ)ハーフ美化委員長だからって、もっと詳しく覚えてろよっ! 確かに要は四番目くらいにサラッと一回プレイしただけだけど! わんこ美化委員長は五回ほど周回プレイしたうえに、未だ気持ち悪いくらい詳細プロフィール覚えているけど……!(武宮(たけみや) 京成(けいせい)、17歳、身長187㎝体重68㎏、AB型で、好きなものは昼寝とヒロインーー!)

 ……ともかく。いくら数年後にヒロインとの誕生日を、より感動的な演出にする為の必要要素だとしても、ここに私がいる限り、要にはこれ以上不幸な誕生日を過ごさせません! だって要は私のわんこなのだから! ペットの誕生日を祝うのも飼い主の役目です!

 原作クラッシュ、上等じゃい! そもそも私を女帝様に生まれさせた神様が悪い! 

 今後の要の誕生日は、私がめちゃんこ楽しいものにしてやるから、神様覚えてろよ!


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