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無人島でエルフと共同生活  作者: わんた
ダンジョン運営、始めました
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幕間:ヴィルヘルムがつくるもの

 ダンジョン探索士の多くは個人事業主である。休日は自分で決めることができ、土日に関係なく働ける時に働き、普通の会社員より稼ぐ。


 ゴーレム島では、そんなダンジョン探索士が毎日訪れ、大量の魔石を持ち帰り、魔物から手に入れた大量の魔石を換金していた。


 魔石が安定供給されるようになると、魔道具とポーションの研究も始まる。健人とエリーゼが住むコテージの近くに建てられた研究所では、東京から派遣された研究員3名とミーナ、ヴィルヘルムが、昼夜問わず研究を進めていた。


「こんなに素材を用意してもらえるとは思わなかったなぁ……」


 猫獣人でありポーションの研究を担当しているミーナは、腕を組んで悩んでいた。

割り当てられた2階にある木造の研究室には、小さな窓が2つにテーブルとイス。そして、名前と主な効能が書かれているメモ用紙がプラントに貼り付けられた、プラントに植えられた薬用植物と書物が山のようにあり、小さい部屋を占拠していた。


「どれから、使おうかな?」


 しっぽを大きくゆっくりと動かし、薬用植物の山に近づいたミーナは、宝物を見つけたような、輝いた目をしていた。


 付与タイプは、その物の持つ効果を強化し、そして付与する人間のイメージに合わせて小規模ながら効果を変化させる。健人やエリーゼが使う魔法とは違い素材が必要であり、エリーゼ達の世界には、ポーションを作るレシピが存在していた。


 それさえあれば、効率よくポーションの研究がすすめられたかもしれない。だが、持ち歩くようなものではないため、地球に持ってくることはできず、分量などを暗記していなかったミーナは、どこから手を付けようか考えを巡らせていた。


「まずは、傷を治すポーションを作りたいわけだから、止血、切り傷、打撲傷に使える植物を試してみようかな? あ、傷が治る瞬間は痛みを伴うらしいから鎮痛効果のある植物も必要だよね?」


 健人はダンジョンを運営する社長という立場から、傷を治すポーションの研究を優先するようにと依頼していた。


 異世界から持ち込んだポーションのレシピが書かれている羊皮紙を見ながら、独り言を口にしている。普段は誰にでも丁寧な言葉を使うミーナだが、誰もいない部屋では年相応の10代後半の女の子らしい口調だった。


 薬用植物をいくつか手に取ると、乾燥させるために部屋のドアを開けて、木造の短い廊下に出る。研究所の床にはワックスのかかったフローリングと木の壁があり、見た目はきれいだが、どことなく廃校となった田舎の小学校を彷彿とさせた。


 廊下を歩き終わり階段を降りたところで、拳大の魔石を手に持ったヴィルヘルムと出会う。


「お前が依頼したものを研究するのに必要だと脅したら、気前よく譲ってくれたんじゃ!」


 誰かに自慢したかったのか、ミーナが話しかける前に、魔石を見せつけるように前に突き出す。坊主頭に無精ひげが生えたヴィルヘルムが満面の笑みを浮かべていたが、ミーナにとっては、親しみを覚えるどころか威圧されたような感覚だった。


「そ、それは良かったですね。確かその魔石は、健人さんがアイアンドールから手に入れたものですよね? よく、譲ってもらえましたね」

「ウッドドールのクズ魔石じゃ、ワシの考えた魔道具は実現できんからのう」


 ダンジョン探索士は、ゴーレムダンジョンの地下1階までしか到達しておらず、換金された魔石は、全てウッドドールから手に入れたものだった。ヴィルヘルムが持っているような大きさの魔石は、健人が命がけで手に入れた物しか存在しなかった。


「それにアイツが依頼した物を作るのに必要になるかもしれんと言ったらすぐじゃったぞ」


 依頼した魔道具を作るのに必要だと言われれば、思入れがあるという理由だけで、拒否することは出来なかった。


「それが事実なら良いんですが……いったい何を作るんですか?」


 ミーナにとって普段のから態度が悪いヴィルヘルムの言葉は信用していなかったが、確認することもできないため、深く突っ込まないことにしていた。


「この世界には人工知能というものがあるのを知っておるか? あれを魔道具で再現しようと思っているんじゃ」

「魔石は魔道具の燃料ですよね。それが、人工知能みたいな使い方ができるんですか?」

「人工知能で動くロボットという考え方を教えてもらったんじゃが、魔物に似ておるかもしれん!」


 今、最も興味ある分野について質問されたことで、上機嫌になったヴィルヘルムは自らの考えを饒舌に語りだす。


「どういうことですか?」


 ロボット、人工知能までは何とかついていくことができたミーナだったが、それがなぜ魔物に似ているのか理解できず、思わず質問してしまった。


「この世界の物語では、人工頭脳によって機械を動かす話が沢山あるらしい。生き物ではない、無生物が独自の考えをもって動く。これはウッドドール共と似ていると思わんか?」


 話の腰を折られて怒られると思っていたミーナは、上機嫌に答えるヴィルヘルムに驚いていた。


「た、確かに似ているかもしれません……」

「そうじゃろう。そうじゃろう」


 考えを肯定されたことで、さらに機嫌がよくなる。


「そこでな、ゴーレムダンジョンにこっそり潜って、拘束してから慎重にウッドドールを解体してみたんじゃ」

「こっそり……」

「で、どうだったかわかるかのう? 何もなかったんじゃ! 魔石以外、何もない!」


 目の前にいるミーナの事が目に入っていないのか、相手の反応などお構いなく、次第に声を大きく、そして早口になっていく。


「じゃがな、ワシはそこで諦めずに、他に手掛かりがないか部品を丁寧に観察したんじゃ。そしたらのう。胸にある魔石を中心に、血管のような……いや、あれは魔道具の回路の様に、何か意味のある模様かもしれん。まぁ、それがあったんじゃ」

「それは大発見ですね」


 考えが追いつかないミーナは、適当に相槌をうつ。


「そうじゃろう! そこで魔石の機能の1つに、人工知能のような機能を持っているんじゃないかと考えたのじゃ。いや、人工知能じゃ味気ない! ここは、魔物の魂と言っておこうかのう」

「魔物の……魂……」

「そう! 魂じゃ!」


 魔石は魔道具を動かすための便利な燃料。その大前提が覆るかもしれない、新しい考え方に驚きと共に、えも言われぬ恐怖を感じ、自らのしっぽの毛が逆立つのを止められないでいた。


「そうじゃ、アイアンドールレベルの魔石であれば、複雑な命令も理解できるかもしれん!」

「……ヴィルヘルムさんは、魔道具のロボットを作るんですか?」

「ほぅ。詳しいことは言えんが鋭いな」


 口元を上げてニヤリと笑う。

 ミーナの質問によって健人に忠告されたことを思い出し、現実に引き戻されたヴィルヘルムは、落ち着きを取り戻していた。


「ミーナも草を持っているということは、これからポーション作りかのう?」


 周囲を見渡す余裕ができたことでようやく、ミーナのことが意識に入ったようだった。


「草って……ポーションに適した植物が分からないから、試しながら進めないとダメなんです。完成するまで、どのぐらいの時間がかかるのかなぁ……」


 今後待ち受けている作業を思い出して、うんざりとした表情をしていた。


「それはワシも同じじゃ。死ぬまでに完成させたいのぅ……だが、金の心配をせずに物が作れる環境を用意してもらったんじゃ。そのぐらいの苦労は、受け入れるべきではないかの?」


 まっとうな発言をしたことに驚き、一瞬、言葉に詰まる。


「……そう……ですね。ですが、ヴィルヘルムさんが、そんな風に考えているとは思いませんでした」

「ワシだって、たまには他人に気を使う!」


 ミーナの肩を2~3回ほど勢いよく叩くと、笑い声をあげながら、そのまま割り当てられた部屋に入っていった。


「肩が痛い……です……」


 服の下にある肌は赤くはれていると思われる肩をさすりながら、乾燥させるために外へと向かった。

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