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ステージ上の天使が、相変わらず大袈裟な動作でスクリーンを指し示した。
『本日は、女神様から皆様に直々にお願いがあって、こうして集まって頂きました。それでは女神様のご登場です。スクリーンにご注目ください!』
そう言った瞬間スクリーンに映し出されたのは、10代後半から20代前半の若い女性だった。カスタードのような薄い黄色味がかった金髪は長く、ぱっちりした瞳は水色とグレーが混ざり合ったような不思議な色をしている。桃色の唇をやや突き出したように尖らせ、甘えたような表情でこちらを見ていた。
女神と呼ぶに相応しいかどうかは別として、とてつもなく可愛らしい女性であることは確かだ。ただ、それよりも今までの流れからして、「大丈夫か、天使と女神」という不安に、この場に集まった者達は凍り付く。
画面の右上には「LIVE」の文字があったが、一体どこから生中継していると言うのだろう。
『みんな今日は来てくれてアリガトー! あのね、アタシ、地球が始まってから、ずぅーっと今まで生きてきたんだけど、一通りの娯楽には、もぉいい加減飽きちゃって。大好きな日本のアニメも、ついに見尽くしちゃったんだよね』
満面の笑みで両手を振った後、ふんわりとウェーブした髪をクルクルといじりながら人差し指に巻きつけ、唇を尖らせた。舌足らずな喋り方に、甘ったるい声。
『でね? お願いがあるんだ。キミたちでオリジナルのアニメを創って欲しいの。それも、ただアニメを創るんじゃなくて、過程も楽しみたいんだよね。だから、アニメの出来を競う、勝ち抜きバトルをやってもらいまーす! そうだなぁ。1チームのメンバーは、4人までね。それで、自分たちで仲間集めて、アニメ創ってみてくれる?』
人差し指を顎に当て、首をかしげて上目遣いをする。
『あ、大丈夫。アニメがお手軽に作れるアイテムは用意してあるから。モンスターからドロップするよ! 強い奴ほどイイの落とすから、頑張ってね! まずは予選の締め切りだけど、そうだなぁ3ヶ月後? 作品の選考は、アタシの好みと視聴者ユーザーの『いいね』の数で決めるね。そこで勝ち残ったチームは、次のステージに進出できるよっ』
ポカンと口を開けてスクリーンを見上げるユーザーたち。
女神は安心させようと詳しく説明したつもりだったのだろうが、「モンスター」などと余計に不安を煽る単語を口にした。しかし、当の本人はその事に全く気づいておらず、楽しそうに体を揺らしながら言葉を続ける。
『タダとは言わないよ! 最後まで残った優勝チームには、お願い事を一つ叶えてあげる。でも命に関わることはダメ。寿命は決まってるからね。叶えるお願いは、チームで1つだよ! みんなでよーく話し合って。あとは、チーム全員、メジャーデビュー! ね? ヤル気出た? じゃ、みんなよろしくー!』
無邪気にほほ笑み、自分でパチパチと拍手すると、そこで映像がプツリと途絶える。
話しの内容に理解が追い付かず、その場にいる者達は砂嵐になってしまった画面をただただ見続ける事しか出来なかった。