女王を目指せ
ダイワスカーレットとウオッカが牡馬との路線へ進み、女王杯は少々手薄になるのではないかと思っていたが、なかなか。三歳勢がずらりと顔を揃えている。そういえば、ポルトフィーノを除いては牝馬クラシック路線を歩んだ乙女たちはいたって順調にきている。無事これ名馬。
カワカミプリンセスも牡馬との路線へ進んでも、十分に戦えると思うのだけれど、やはりこのレースは、二年前に降着となった因縁のレース。しっかり押さえておきたいだろう。ということは、負けられないということか。鞍上が本田優騎手であったとしたら、絶対に負けないだろう。けれど、ちょっと単勝馬券が売れすぎなのが気になる……個人的には応援したい。金鯱賞の走りは見事だった。
昨日、
「レインダンスが本命なんだけど、レインの癖に重馬場が苦手だからなぁ」
とぼやくおじ様に見せてもらったスポーツ新聞でも、本命カワカミプリンセス、対抗ベッラレイアとなっていた。概ねそういう予想なのだろう。しかし、まだデータがそろってはいないので、確定ではないのだけれど、前日の時点での私の表計算予想ではベッラレイアは四番手にとどまる。その間にレジネッタとレインダンスが挟まるのである。そして続くのは、ムードインディゴ、エフティマイア。秋の狙い目、ダンスインザダーク産駒は両馬とも入線というところだ。
しかし、このG1という輝かしい舞台に、武幸四郎騎手は三頭ものお手馬がいる。にもかかわらず、今のところ一番人気薄のレインダンスに騎乗。個人的にはそのほうが力を出し切れるのではないかと思うけれど、ちょっとせつない。私自身、緊張に弱いほうなので、まるで自分のことのようにせつない。あれは、なんの映画だったかな? たしか『緊張』ではなく『恐怖』についてだったと思うけれど、
「克服しようとしてはいけない。慣れるしかない」
という名台詞を聞いた。なるほど、と思ったものの、実践するのは大変難しい。緊張しているときには、その台詞すら思い出せないくらい舞い上がってることのほうが多い。
最近、競馬をやるようになった女の子から、
「三浦君、よく特集されてますね」
といわれた。早い時期から推奨の騎手として名前を挙げておいたので、ちょっと鼻高々である。そんななか、今年の競馬学校の騎手課程合格者が発表されていた。久しぶりに女の子が入学する。十六歳という年齢をみて、あれ? と思い、娘に聞いてみたところ、多分昨年一緒に受験した女の子だという。各競馬場の芝の長さについて語っていて、娘はぼんやり聞いていたと、去年の受験のあと聞いたのを覚えている。
そもそも、騎手学校は男女別ではない。体力的に考えると、もちろん男子が有利になる。その難関を突破した彼女のこの一年の努力は並大抵のものではなかっただろう。一年前、一緒に受験した二人の女の子は、片や、不合格に涙し、リベンジを誓い人生の美しい時間をそのために費やし、それを達成した。親のたっての願いで受けたもう片方は、不合格に安堵し普通の高校に進学。ろくに勉強もせず、携帯電話と夜更かしに人生の美しい時間を無駄に(私から見ればムダに)垂れ流している。十八歳での合格者もいたので、来年辺り、もう一度やってみないかとそそのかしてみようとは思うけれど、本人にやる気がないなら仕方がない。それに前回以上に減量に苦しむのは明らかだ。
とにかく、合格した桃子ちゃんには心からのお祝いと、エールを送りたい。厳しいことも多いだろうけれど、頑張って欲しい。そしていつか、エリザベス女王杯を制覇し、あらゆる意味での女王に上り詰めて……なんてことも勝手に妄想。それでも是非、女王を目指してください。