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眠れぬ夜

 秋G1の初戦。

 女の子でスリープレスナイトといえば、『恋の病』だろう。しかし私は、調子に乗ってワインを二本あけ、階段から落ちて流血騒ぎを起こし、いいかげんにしなさいといわれて反省のため節酒中で眠れぬ夜を過ごしていた。レースの予想はばっちり当たったものの、どうしてもジョリーダンスが気になって手を広げトリガミになってしまった。

 ロンシャンでのサムソン君の雄姿も、仕事でリアルタイムで見ることはできず、JRAのホームページで見て、一人で、

「審議!」

なんて叫んでいた。スタート後によられたのはかわいそうだった。完全なアウェーのレースだ。日本馬が、二頭以上で挑戦できれば、凱旋門賞もこれまでとは違ったレースができるのではないか。

 さて、競馬が東京にやってきた。明日はウオッカがやってくる。見に行きたいけれど、F1の日本グランプリと重なっている。あきらめてテレビ観戦にすることにする。天気が悪いこともあり、あんまり気分が乗らないが、土曜日のレースも検討する。

 京都の第十レース清滝特別に、クロユリジョウが出ている。平成十七年の勝馬だ。そしてこのレース、私は京都競馬場のスタンドで見ていた。直線で、

「松岡!」

と叫んでいた(けれど馬券は取れなかった)。その日のメインレースは菊花賞。朝から異様な雰囲気に包まれていた競馬場の風景を思い出す。もう三年も前なのかと感傷に浸る。これも何かのお告げかもと買い目を探すが見当たらない。結局、アペリティフとシングライクバードからちょろちょろと流すことに決める。

 ウオッカの斤量を見て、気の毒になる。ダービーをとってしまったので必然的で仕方ないことだけれど女の子なのになぁ、と思いながら雑誌の誌上パドックを見ていたら、ものすごい胸前の筋肉で全く女の子とは思えない。牝馬の優勝は今までないけれど、今回はありえるかもな、と思いつつアドマイヤフジの人気の落とし方に穴党の血が騒いでいる。

 なんだかんだと秋の競馬が始まると、私の携帯電話は忙しくメールを受信しだす。色んな情報を得るのも、競馬の話も面白いからいいけれど、日曜日の朝八時なんかに届く。私にとっては真夜中だけど、返信しなくては……という使命感にかられ、まだアルコールの残る頭でメールを送り、おかげで目が覚めてしまい眠れなくなるなんてことになる。そして日曜日に出勤すると必ず、

「獲った?」

と聞かれる。ああ、私もう何年この生活をしているんだろう。

 いろいろな都合で東京参戦は十一月に持ち越しになりそうだ。第二回のジョッキー・マスターズには必ず参戦する予定。第一回も見ているので、

「ここははずせないでしょ」

と娘を誘ったら、

「多分、ものすごく面倒くさいけれど行く」

といわれた。往年のファンのお客様はオグリキャップを見に行くとおっしゃっていた。

 世界が恐慌に陥ろうとも、天気が悪かろうとも、肝臓が悲鳴を上げていようとも、夜長なのに寝不足が続こうとも、ああ、秋は楽しいなぁ……

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