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競馬場は広い

 私は「お付き合い」で競馬を始めた。

 お店のお客様に連れて行っていただいた初競馬で買って帰った馬券が確か七万円くらいになり、それからなんとなく場外で買うようになったが、当時の場外馬券売り場はいかにも賭博場でどうにも好きになれなかった。

 その後、東京に引越し、府中競馬場が案外近いことに気がつき、これまた「お付き合い」で競馬場に脚を運ぶことになる。競馬場がちかく、JRAも開かれた競馬に力を入れていたときで、競馬人口そのものが、神戸にいる頃よりも比ではないくらい多かった。

 いろいろな関係者の方たちとも出会うことになる。神戸では園田のスタッフさんたちとしか出会わなかったが、東京に来てからは、新潟競馬場の新スタンドの設計に携わった人、その工事を請け負った大工さん、録音されたファンファーレを流すという役目をしている人とも出会った。元高崎の厩務員さんは今でもたまにお酒の席で一緒になる。

 実は、これは他の仕事の関係でなのだけれど、ラジオでの競馬中継のアシスタントのオーディションを受けたことがある。そのときには、テレビにも出ていらっしゃるアナウンサーさんともお会いした。どうやらご実家が近かったようで、アナウンスの話よりも近所のコンビニがなくなったという話ばかりしていた。

 実況中継のアナウンス講座に通っていた知り合いのおかげで、その親睦会にも参加させていただいた。ほとんどが普通の方たちだったけれど、ケーブルテレビのアナウンサーさんもいらしていて、場外馬券売り場なんかのテレビでたまにお見かけする。

 よくよく考えてみると、自ら進んで出会いに行ったわけでもないのに、競馬に携わる人との縁があるなぁ、と思う。いまだ馬主さんとのご縁はないけれども。

 さて、ダービーは現地で参戦したのだけれど、訂正がある。何事もなかったレースと記したが、スタート直後、三着のブラックシェルが他馬に寄られていた。めずらしく、武豊騎手が怒っていた。だが、こうも荒れたレースが続き、その被害馬になっていれば腹も立つだろう。

 安田記念は、なぜか現場にいることが多い。ダービーのあと、少々熱も収まって入場者数が減り、脚を運びやすいことが要因なのだろうが。二年か、三年前は娘と二人で出かけて、内馬場をうろちょろした。

 ハロン棒が、死体のように横たわりおいてある場所で、なぜか笑ってしまった。想像以上に大きかったのと、なんだかかわいらしかったからだ。電光掲示板には目いっぱい近づいてみて、その電球の大きさを確かめたりした。歩き回っているうちに、スタンドに戻ったころにはメインレースが終わっていそうだったので、二人でスタートを見ることにした。

 スタンドの喧騒が、遠くに聞こえる。まるで平日の昼間、人通りのない裏通りに漏れ聞こえるどこかの家の居間でついているテレビの音のように不思議な感覚がする。輪乗りをしているところに近づくが、騎手同士が話している声などが聞こえるほどの距離までは近づけない。その場所にいるのも私と娘の二人だけで、ぼんやりとスターターが台上に上がるのを見ていた。

 ファンファーレにあわせた手拍子も、どこかよそのスタジアムのことのようだ。あわただしく人がスタートゲートに群がっているが、その喧騒も届いては来ない。次々にゲートに入る馬を黙って眺めていた。スタッフが離れる。

「ガシャン」

私たちはゲートがあいたその音でビクリとして顔を見合わせた。思いのほか大きな音だった。

 馬が見えなくなると、私たちはスタンドに向かって歩き出したが、まもなくレースは決着していた。クールダウンのために走ってくる馬を見ても、どれが勝ったのかは検討がつかなかったけれど、騎手たちは笑いながら話していた。

 現場で見るのは楽しいけれど、細かい部分を見ようとするとやはりテレビ観戦の方が向いているのか。いろんな談話や情報がすぐに入ってくるという利点もある。

 あ、お高い指定席に入ればそんなことは全部解消されるのかな? そういえば指定席に入ったことがない。今度馬友をお誘いして指定席に行ってみようかな。……って指定席に入ったことのある馬友なんて、私の周りにいるのだろうか。

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