数字の魔力
数字のマジックというのか。
昨日のうちによく検討しておいたレース。間近になってみると単勝のオッズが二十倍を超えている。
「えっ!」
テレビでは私よりもはるかに競馬暦の長い面々がさもありなんと予想を並べているが、一切、その馬の名前は出てこない。
そうだよな。前走、今回よりも軽い斤量で負けている。年齢も九歳。買い目はないかも。私は何でこの馬にしるしをつけているんだろう。……メジロライアン産駒、これか。
一番信用できそうな予想に乗って、自分の予想を捨てて馬券を買う。見事一着で帰ってきたのは、昨日の予想の馬だった。
前走は振るわなかったものの、その前のレースでは今日よりも重い斤量で二着。コースでの持ち時計も前のものとはいえ、三番目の成績。そのときの斤量は今日と同じ。昨日あんなに真剣に考えて出した答えだったのに、なぜ、予想を変えてしまったのか……
これはオッズに負けた典型的な例である。
いつだったか。多分〇三年の安田記念だと思う。四位騎手の不満げな表情が印象に残る。掲示板を見たときか、関係者から聞かされたときか。単勝が四番人気だということを知ったときだった。
確かに。前走は地方交流戦で四着だったものの、アグネスデジタルは中央、地方、海外合わせてGI五勝をあげていた。二番、三番人気の馬のGI勝ち鞍は一つずつ。一番人気の馬にいたってはまだGIの勝ち鞍はなかった。結果はどうどうの一着。
三年前の今頃。競馬新聞だったろうか。『かたい決着のレース』というような文字を目にした。むくむくと反抗心がわきあがる。
「そんなことあるか。オッズは人間が決めてるもんだ」
私は上位人気から七頭、下位人気から五頭選んだ組み合わせで馬連を買い、見事的中した。三番人気と最下位人気の組み合わせだった。
そう、オッズは人間が決めるものだ。みんな、それぞれに研究し、予想し、結論を出して馬券を買った結果がオッズに現れるのだから、全くあてにならないことはないと思う。大きなレースの場合、馬主さんなどの関係者は、当日忙しいため、前日の前売りで単勝馬券をごっそり買う。競馬専門紙などの予想より、はるかにオッズが低い場合は勝負気配と読んだりすることもある。
しかし、結果に即結びつくかといえば、違う。どこかで何かを多くの人が何かを読み間違えて、とてつもない払戻しになったりする。だからオッズは『みんなが勝つと思っている』度なだけで、『どの馬が強いか』度とは必ずしも合致しない。『予想を左右させる重大なファクター』にしてはいけない。
とは思いつつ、三番人気と最下位人気も、ようするにオッズ買いだったりするし、昨日のレースでは、本命対抗で予想が当たっていたにもかかわらず、馬券が取れていない。欲を出して、三連単で勝負などをしたものだから、三着の馬を読みきれずに外した。これも
「三連単なら万馬券だ!」という、あさはかな自分に負けたのだ。
『ゼッケン好き』といわれないためにも、今年は初心にかえり、数字の魔力に負けない予想を心がけたい。来週は、番組編成で最後となってしまうガーネットステークスでも見にいこうかと思う。今までの最高配当を当てたレースだし。
あ、これも数字の魔力がらみか。