穴を掘ってもはいりたい
やってしまった。
この週末、スロースタートだったものの、好調の波が来ていた。土曜日の第十レースがその日の私にとって最後の勝負だったのだが、三連単を当てる。日曜日にまじめに予想したのは第七レースと第十レース。どちらも完璧な的中だった。
そして皐月賞。データから検討した結果、ブラックシェル、マイネルチャールズ、キャプテントゥーレ、タケミカヅチ、ノットアローンの五頭を選び出した。中でもキャプテントゥーレは久しぶりに買った競馬雑誌の誌上パドックに載っていなかった。ピンときた。
だがマイネルチャールズが残りの三頭に負ける気はせず、キャプテントゥーレとの二頭を一二着に固定し、三連単をがつっと買った。そしてもしものために、五頭の三連複をボックスで買い足しておいた。
十八キロのマイナス体重で、人気が少し落ちる。しめしめ、と心の中でにやりとする。私の持っている情報によれば、十四キロくらいはマイナスで出走するはずだったので、評価を落とす対象にはならない。テレビの中でも
「十八キロのマイナスが気にかかります」
なんて言っている。持つべきものは情報だな、と思った。
返し馬を見ていると、ブラックシェルがどうにも落ち着きがなく見える。これはまずい、と思い、一二着固定の三連単を総流しした。一点百円、三千二百円也。とれればたいしたことない。もしものボックスもある。完璧に高を括っていた。
スタートから、ぽんと抜け出したキャプテントゥーレはそのまま一着で帰ってきた。が、マイネルチャールズはハナ差の三着。うう、悔しい。だが、直線最内に持ち出した柴田騎手の好判断、好騎乗である。心から拍手を送った。
そう。だって私にはその三頭の三連複もある。いつもの買い方をしておけば、馬単も、ワイド三点どりもできたけれど、ここはG1だ。ちょっと頑張っておかないと。
「いくらついたかなぁ」
と何気なく、買い目を再度見直す。
ない。
何度見てもない。
大本命と位置づけた『06』の数字がボックスの中にどこにもないのだ。そして変わりにマークした覚えの全くない『05』の馬番がきらきらと光っている。
やってしまった。マークし間違えたのだ。手はがくがくと震えだし、悔しさがこみ上げてくる。G1だとはしゃぎすぎていた。三連単を買うことに必死になっていた。
「はあああああ」
すぐに切腹したい。タケミカヅチに届かなかった松岡騎手に恨みを抱き始める。いや、でもおめでとう川田騎手。松岡騎手も位置取りからあれが精一杯だったとは思う。そうだ、お祝いにこの手を差し上げようか……なんの役にも立たなかったのだけれど。
その後、自暴自棄になり、全く予想もしていない中山と阪神の最終に手を出し、自ら傷を広げた。二日間で七レース予想し、五レースは完璧な的中だったのにもかかわらず、勝ち分はたったの千円。これ以上ない『とほほ』である。
かくして、今回の皐月賞は忘れられないレースとなった。そして追いかける馬リストがまた少し長くなった。