金杯で乾杯
年はじめは金杯から……
なんていうが、記憶する限り、金杯でいい思いなどしたことはない。
「いったい今年はいくら貢ぐことになるんだろう」
と不安にさせるような成績ばかりだ。年末年始は忙しく、予想に力がいれられないから、なんていいわけも、この三年は通用しない。年末年始、しっかりお休みのある職場にいるからだ。
一生懸命、しかもがっちり予想したレースが、さらに年始で『今年を占う』だの『お年玉をゲットしよう』だのサブタイトルがついての負けはかなりへこむ。それでも必ず参加してしまう。そして目も当てられない借金からのスタートが切られる。そして、
「みんなの年はじめは金杯からでも、私の年初めは東京開催からだ。うん」
などと、すでにまるまる一ヶ月負けてから言い訳を始めるのが常となる。
そういえば、昨年中山金杯を制したのは、年男の田中勝春騎手だったな、と思い、今年の年男を調べる。ちなみに私も年女である。京都の金杯には四位騎手、河北騎手。あれ?藤田騎手も同じ年か……そういえば、今日見た夢には、十年も前に付き合っていた同じ年のカレシが出てきたな……そうそう、安藤勝己騎手も一回り上なんだよね、なんて思いながら出馬表を眺める。
中山には江田照男騎手だけか。これは大穴かなぁ……ん?待てよ。
そうなんです。安藤勝巳騎手が一回り上のように、一回り下もいるはず。調べてみると、これが八人もいる。中には去年GIジョッキーになった松岡騎手も……
私が小学校六年生のときに生まれた坊ちゃんたちが、気がつけば成人式も終え、第一線で活躍するジョッキーになっている。毎年、毎年書初めに、
『お掃除頑張る』なんて書いている自分が恥ずかしくなる。はぁ、なんだかなぁ……
そんな私の哀愁には関係なく、時はたち、また朝がやってくる。哀愁なんて感じてはいられない。ぼおっとしている間に、一年のうち五日も過ぎてしまう。今年こそ、金杯を年初めにしなくては。
それにしても、結構年配の馬たちが金杯に登録しているものだ。一番若い馬が生まれる年の金杯で、一番年寄りのアサカディフィートは勝馬となっている。そのときにはまだ三頭の馬が、この世には生れ落ちていなかった。
彼はそれから毎年、金杯に参戦し、翌年は五着と連をはずしたものの、後二年は二回とも二着になっている。現在の成績は六十四戦十勝二着、三着ともに七回ずつ。無事これ名馬に余りある成績だ。
それに比べて、私は……なんて本当は、仕事始めでもうちょっとのんびりしたい病の症状であるに過ぎない。さて、今年もなんとか楽しい競馬の時間を過ごせるように、頑張りましょうか。
そして、今年の金杯、彼は五回目の参戦となる。あ、そういえば、私の勝負レースは金杯のひとつ前で、その軸馬も十歳だ。
うーん、まだまだ若い人には負けてられません。