インサイダー
かするほどいやなことはない。
じっくり予想して、買った馬が三着四着五着だったりすると、一日終わった気分になる。あと一歩が足りていないのだ。だが、自分ではじっくり予想してしまったため、何度見ても見直すことができない。もう手遅れなのである。この前の土曜日は最悪だった。
ワイルドファイヤーは二着。ゼンノパルテノンは一着だが、対抗にと考えていたシアトルバローズが取り消し。馬連でも勝負したが、だめだった。
競馬ではないが、株で儲かった知り合いがいる。私は株はやったことがないのだが、競馬以上に情報収集が大変だというイメージがある。彼は非常に忙しく、情報どころか、
「いつ買ってるの?」
といいたくなるくらいだ。で、聞いてみた。すばやく情報を集める方法でも教えてくれるのかと思いきや、答えはチャート。チャートのみなのだ。
個人投資家は所詮、プロの投資家には勝てない。彼らは私たちが仕事をしている時間情報を集めることを仕事としている。それに、運よく彼らと同じだけ情報を集める時間を得たとしても、付け焼刃にすぎない。それに私たちに届くときにはすでに情報が古いのだ。
「結局、インサイダーには勝てないってことよ」
インサイダーと言っても違法なものではない。どんな会社にも噂は流れる。そんな会社から漏れ聞こえる合併するかも知れない話やリコールするかも知れない話、まだ都市伝説の時点から彼らは検証する。時には失敗もするだろう。それでも培った情報網とその検証能力にはあがなえない。
それがいち早く反映するのがチャートだという。彼は、
「金額はさほどあがらないのに、出来高が異様に多い銘柄」を買い付ける。その会社がどこの会社でも何をやっている会社でもかまわない。
その方法を取り入れている友達がいる。
競馬にしてみればそれは何か。
オッズであるという。馬主は少なくとも、馬券ファンよりも多くの情報を持っている。勝負気配で、がっつり突っ込む馬主を探す。早朝発売では二倍をきる倍率でも、普通の発売になるころには十倍近くになっている馬がいいらしい。ただし、
「武豊が乗ってるのはだめ」らしい。騎手の人気でオッズが下がっているのかが判断できないという。
そういわれて、ちょっと見てみたが、それは先々週で、雪の影響でかなんでか、検証はできなかった。まあ、ある一つの買い方の例である。
フェブラリーステークスはこれまた四着馬を買うのが上手なレースだ。去年は確かカフェオリンポスから勝負に行った。と、言うことをふまえてこの後をお役立てください。
今のところ本命はクワイエッドデイ。調教師は引退間近である。続いてメイショウトウコン、幸騎手が騎乗するであろうブルーコンコルド。心情的にいつも買えないスカーレットを買うと、四着になったりして。てなところである。
それにしても、だ。
『正義と正論とその他』にも書いたが、人間とは真っ向から正論をぶつけられると、まことに不愉快な気分になる動物である。
「やーい、下手くそ」とからかう友達がいるのだが、昨年の年間収支ではたぶん私のほうがうえである。そやつに下手くそといわれると、非常に腹がたつ。が、私は大人なので右から左へ受け流す。このところの不振では、腹もたたなくなってきてしまった。これはかなりの重症である。
今度こそ、しっかり勝ち報告と自慢をお知らせしたい。間違っても連載休止のお知らせ、なんてことにならないように……
ちなみに筆者は「バカ」といわれるとまことに遺憾、嫌悪感が襲ってくる。それは関西人だからという理由であって、まさに正論だから、ではない。