再会したら昔語り
親友と再会します
今度は八年くらい経ちました。確か西暦でいうと1572年です。高校の先生が戦国時代が好きで、授業中にいつも色々な武将のことを話していた。その時に濃越同盟の話を興奮気味で話していたのを憶えている。俺はよく話が分からなかったが、要は織田信長と上杉謙信が「休戦しましょー」っていう同盟を組んだというものだ。
まさかその場に立ち会うことになるとは…。いつか顕景様を支える家臣としての勉強ということになっているが。あ、喜平次様はずっと前に顕景様に名前を変えました。
で、感想ですが。
織田信長怖えっ!
眼つきすごいです。覇気が尋常じゃない。目力は御実城様や顕景様のように惹きつけられるが、同時に畏怖さえも感じられる。
「では。これにて濃越同盟、締結ということだな」
「そうじゃのう。おい猿!酒を持て!祝い酒じゃ!」
「はっ!」
「御実城様、私はつまみを用意して参ります」
「うむ」
信長公の猿くらいは分かるぞ。あの猿顔が後の豊臣秀吉か。キビキビ動いているなあ。
台所に向かい料理人たちにつまみを作ってもらった。甘味も勿論ある。流石に金平糖は用意出来ないけど。
小姓たちがそれを運ぶのを手伝って廊下を歩いていると。見覚えのある顔があった。
「…え?」
「…え?」
向こうも気づいたようだ。
まさかとは思うが、いや、他人の空似かもしれないけど。
話しかけようかどうか迷っていたら、相手はさっさと俺の前まで来ていた。
「…お前、暁か?」
「…え?」
「…いや、すまん」
おいおい。怖いモン無しか!
この率直に言う性格。このムカつく位のイケメン。この言動。
こいつ、やっぱり。
「…まさか、春人か?」
「え、え?じゃあ、お前やっぱり…」
「前の名は直野暁だったな。今は樋口与六、後の直江兼続だ」
「はっ、ははは…やっぱりお前も死んでたのか…」
俺もお前には死んでいて欲しくなかったよ。この時代ってマジでツライし。飢饉はあるし、戦で血生臭いし。現代っ子で平和大国日本生まれの俺たちには耐えられない。
「久しぶりだな。お前、今の名前は何だ?」
「…佐吉。聞いて驚け。後の石田三成だぞ…」
「あっ…」
直江兼続と石田三成。ゲームや漫画、ドラマで言わずと知れた親友同士。
「…とりあえず、これ持っていっていいか?その後話そう」
「ああ。捕まるなよ?」
「無理っすね」
「未成年の飲酒は犯罪だぞ」
この時代って未成年の概念は無に等しい。
部屋に戻ると、既に他の人たちも一緒いて盛り上がっていた。何人か出来上がっている。布団の用意もするべきか?
「与六、戻ったか。ほら、呑め!」
「あ、有り難く頂戴します!」
「ん?おお、佐吉!おみゃー、どこに行っとったんじゃあ!」
「酒を追加しに。ささ、どうぞ!」
秀吉さんの杯に酒を注ぐ佐吉の態度は馴れている。あれはいつもやっているんだな。
俺はこの御実城様や周りの人たちに付き合っていたら、自然と酒に強くなっていた。うん、美味い!
「御実城様」
「ん?」
「少々酔いが回ってきたようですので夜風に当たって参ります」
「うむ。一人で大丈夫か?」
「平気ですよ」
大丈夫かっていうのは外の忍びだ。こうしている間にも、他国からの忍びが忍び込んでいるのではないか。特に今回の同盟で不利になるのは武田信玄公だ。甲斐の忍びがいるかもしれない。
でも俺はただの小姓ですし。
で、庭に出てきました。少し遅れて佐吉も出てきた。若干顔が赤いけど。酒に慣れてないのか。
冷たい風で酔いが醒めてきたところで。
春人こと佐吉から歴史を教えてもらった。正直、俺より春人の方が日本史の成績は良かった。だが春人のそれも教科書と資料集並み。
「俺たち歴史系ゲームも漫画もそんなに興味なかったしなあ」
「アニメもドラマも時代モノはあまり見てなかったな」
「ちょっとは見とけば良かったな」
「でも分かることはあるぞ」
いきなり佐吉が真面目な顔をした。佐吉は今俺たちが分かる情報の中で、最も重要な情報を挙げた。というか、阻止しないといけない情報。
1600年に起こる、天下分け目の戦い。
「会津攻めと関ヶ原の戦いだ」
「会津攻め?なにそれ」
「漫画でしか見たことがないが、直江兼続の書状で怒った家康が会津に攻め入る戦いだ」
「何で会津?」
「秀吉様に上杉家はそっちに移されるから」
あー。だから会津百二十万石って言われたのか。今越後だから不思議だったんだよなあ。
って!
「俺の書状!?」
「直江状とかいうらしいぞ。お前なに書くつもりなんだ?」
「知るか!絶対書かん!」
東海道一の弓取りと呼ばれる家康だぞ。天下人で約二百年の平安を保った人だぞ。勝てねーよ!
歴史チートがあればマシだったかもしれないけど、俺たちはご覧の通りだ。教科書と資料集の二つだけで生き残れるのか…。
そういえば、関ヶ原の戦いといえば。
「佐吉」
「ん?」
「お前、福島正則とか加藤清正とかと仲良くしているのか?」
確か歴史の先生が言っていた。福島正則ら賤ヶ岳の七本槍の七人は、石田三成のことが嫌いだったから東軍についたらしい。三成は秀吉のお気に入りだったからな。秀吉に恩義を感じているなら西軍につけよ。
「…まあ、なんとか。あまり出しゃばらないようにしているし、俺は武闘派じゃないからな」
「槍とかやってないのか?」
「俺が戦えると?」
「すまん。俺もお前も無理だったな」
誰かを殺すとか無理。いつかしなければならないんだろうけど、今はまだいいと思う。一応、護身を兼ねて剣術はしているけど。
殺さなきゃ殺される。生きたきゃ殺せ。
それが戦国時代の掟なのは分かってるけど。割り切れないというか。
「軍師として頑張るのか」
「ああ。それしかないだろうし」
「俺は剣術は頑張るけど、知能戦はちょっとなあ…」
「将棋とか囲碁が得意だったお前ならいける。今もやってるんだろ?」
「あんまりしてないな。今は御実状様の弟子で兵法をご教授頂いている」
こうして頭を作り変えられていくのですね(白目)
まあ、俺たちの命の危機はともかくとして。もう一つ問題が。
「武田勝頼だな」
「ああ。同盟組んじゃってるし」
作戦会議スタート!
「あ、佐吉」
「ん?」
「今の会話、誰かに聞かれてないかな?」
「…………」
この先は考えてないです(ヾノ・ω・`)ムリムリ