居城したら和睦
織田信長って同盟破棄した相手を許した時ありましたっけ?
毎回言っている気がしますが、お久しぶりです。
初めましての方は第1話へどうぞ。おひさーでヒマーな方。
北条が衰退し始めるのはいつからですか。そして意外にも徳川が邪魔だ!
俺たち景勝派が春日山城を制圧した後。とにかく急いでやるべきことはやった。
まずは印判とか筆とか、書類系で重要な物の確保。これは景勝様に保管していただく。継承性は斎藤朝信・新発田長敦・竹俣慶綱さんらが保証してくれています。
次に制圧した3つの倉庫。俺は弟と親父と一緒に食糧庫へ向かい、どれくらいあるか確かめた。
「結構あるんですね」
「越後は穀倉地帯だからな。これならば当分は保ちそうだ」
糖分と当分が掛けられているのか…ンな訳ないか。寒いこと考えてしまった。忘れよう。
沢山の米俵を見るだけでどれくらい保つかなんて、俺には全く無理なことだ。適材適所ってやつだな。ここは親父に任せよう。
武器庫には槍と刀が多くあった。俺たちにはそれぞれ貰った武器があるから遠慮する。その中でも一級品だと思われる太刀は景勝様の腰にある。【姫鶴一文字】という名らしい。確か謙信公が名付けたんだったっけ。
他に武器がボロい奴も取っ替えていた。だが弓は駄目だな…消耗品だし。
鉄砲も無い。まあ、これは予想していたことだ。そういや鉄砲って、元寇の【てつはう】とは違うのか?普通なら誰でもピンと来るはずだけど。
金蔵には大量の金塊があった。うっわ、これ現代だったら何億するんだろう。目が¥になりそうだ。
これは多分賄賂とかで飛ぶな。ってか景虎派には外交に強い奴ばっかりだし。説得するとしたら伊達氏と武田氏あたりか?
金で動く奴らってどれくらいいるんだろう…これは最後の手段にしておこう。
うん、大丈夫じゃないか?
なんか、ここまで籠城戦の準備が整っているとヤバイな。気ぃ抜いちゃってだるだる。
こんなに差がついているんだから、景虎様も和解するのに同意するだろ。
「さて、どうなるかなー…」
そう思っていた時期がありました。
どうやら武田は北条氏から援軍の要請があったようだ。ってか何で景虎様は北条に帰ろうとしなかったんだろう。「逃げちゃダメだ!」って思ったのか?
そんなこんなで交渉は滞っております。いや、本当にどうしよう。
とりあえず整理しよう。
まず景勝様。先手必勝で上杉家当主になったので、中立派だった家臣も多くがこっち側に来ている。
景虎様とは喧嘩別れしちゃっているらしいです。いつの間に!?と訊いたら
「父上が亡くなられた後に、自分の価値が無くなったと…どうせ御家騒動で邪魔者扱いして殺すのだろうと叫んでいた…」
と。人質として生きていた人生で、心を開けた人物が消えて発狂したのか。
「上杉家にいる限り、そんなことはあり得ない」
景勝様はそう言ったらしいが信じてもらえず、そのまま喧嘩に発展したらしい。御身城様の存在がそれほどデカかったということだ。
ちなみに景虎様とは和解をしたいらしい。ライバルみたいな感じだったもんな。側近共は仲悪いけど。
対して景虎様。あちらは北条氏の兄達に振り回されている模様。景虎様が当主になれば、北条は太平洋から日本海まで突き抜ける形だ。塩も取り放題。
ただし景虎様は兄の言いなりになる。周りが推してくるとはいえ、自由を求めていることは確か。御家騒動で邪魔者ではあるが、流石にここではそんなこと言わない。北条氏に勝てる力があればいいんだけど、御身城様が亡くなられた上に、家臣達が分裂している上杉が勝てるかどうか…それが問題だ。
確か北条氏が負けたのって小田原攻めだったはず。一夜城だったか。………ムリですな。まず越後から出られないし。
織田信長を味方につけるのもなー。いや、勅命とか無かったらいいか。それに、承ったのは御身城様だから、俺たち次世代組は関係ないのでは?景勝様は了承した【関東管領】ではないのだし。
………もうさー、いっそのこと思い切っちゃおうか。
ああ、真っ白い砦が溶けてきている!
武田も伊達も北条も油断ならない。いつでも攻められるようになっているんだからな。
越後では、景虎派の蘆名氏の家臣小田切盛昭さんが本庄秀綱らと共に、俺たち側の管名綱輔を牽制して、その後に蘆名盛氏に状況を報告していたようです。ずっと各地で睨み合いが続いています。
あ、それと景虎様と和解する予定であることは上条殿達に話しました。和解の使者には俺も行くつもりだ。危険だと反対されたし、景勝様の側近として働くべきだとか言われたけど、景虎様と直接話がしたい。
いっそのこと景虎様を上杉家の分家にしちゃったらどうだろう。以前は北条家の跡継ぎとか考えてたけど、小田原攻めとか考えると却下だ。その点、上杉家の分家ならばまだマシ。後継者問題が多々ある上杉には、分家はいくらあっても困らないし。
上条政繁殿、山浦国清殿、山本寺孝長殿、直江信綱殿、大石綱元殿、北条高定殿、新発田長敦殿などの古参の方々に進言してみた。
「分家、か……」
「向こうが了承するかが問題じゃな」
「北条上杉家として上杉家の分家となっていただくことで和解したいと思っています」
下手に争って戦力ガタ落ちだけは避けたい。それに、景勝様と景虎様は確かに仲が悪いように見えたが、どちらも事情が事情で素直になれなかっただけだと思う。ライバルというか、いつも競っていた。どうにかして景勝様の希望通りに和解したい。
「儂は反対じゃ。いつ反旗を翻してくるか分からぬ」
「儂も山浦殿に賛成だ。北条との事もある」
山浦国清殿と甘糟景持殿は反対。確かに警戒はしないといけないだろうな。北条さえ何とか出来れば…。
上条政繁殿と北条高定殿は賛成だそうです。
「しかし此度の争いで上杉分家も分かれておる。分家を増やして困ることはあるまい」
「北条へ帰る気もないご様子。北条は撤退を命じてきておったが、景虎様は養子としての意地か聞き入れなさらなかった。他の北条からの者共は、上杉を支配した後の誉れ目的だ」
上杉家自体も分かれている状況。もしも衝突すれば、その分家を消さなければならない。
北条の撤退命令って、言い換えたら「北条が直々にやってやるからお前ら退いてろよ」っていう戦力外通知だよな。暴れ回るのに邪魔だし、巻き添え食らわせないためって感じの。
それって徳川秀忠みたいな感じだよな。言う通りに動いていただけなのに、秀忠の力量は知っていたはずなのに無茶振りする家康。経験値と頭脳の差を考えてやれよ。
北条は景虎様のことを考えているんだろうか。…いや、道具として見ているのかもしれない。平成生まれだから個人を重視してほしいって思うけど、戦国では家や同盟を重視するからな。ジェネレーションギャップならぬエイジギャップか。
「…確か、北条は今は佐竹と宇都宮に手間取っておるな。此方に戦力を割くことは不可能ではないか?」
「それもそうじゃ。恐らくは武田と伊達辺りを嗾けるであろう」
大石殿は状況把握が早いな。新発田殿は相手の力量を把握できている模様。上杉に対抗するのに2つか。
北条と同盟を結んでいて、上杉を囲うような配置が出来る。
でも大丈夫だと思う。伊達は知らんがな。
「現時点では伊達は動く気配はない。今参戦しても何も得られないからであろうな。武田の戦力は長篠から衰えているため、北条に援軍を要請するだろうが…」
「北条は寄越さんじゃろうな」
「その時に我ら上杉が和睦交渉を持ちかければよい」
おー。あっさり掌を返して同盟破棄をする上杉ですが(いや、領民の事を考えた末だけど)同盟相手への義は信頼されている。北条と比べたら上杉との交渉に応じてくれるだろう。交渉が上手い安田顕元殿が行くようです。よっしゃ勝つる!
しかしですね。上条さん、山浦さん、直江さん……その笑顔は一体何でしょうか。
「…そうだな。兼続」
「はっ」
「お主も交渉について行け」
「はっ……は?」
「良い機会じゃ。外交を学ぶことができるぞ」
「そうだな、安田殿に直々にご指導して頂くと良い」
……これ以上勉強したくない。
でも言えない。この人たちに言えない。もういいや。
もうそろそろ5月になったかな。そういえば織田との交渉を提案し忘れていた。織田を味方につけて北条を牽制すれば、簡単に和睦できるだろうに。
そして俺、一番大切な事を忘れていた。
武田さんちが無くなったのっていつだった?
俺知らねぇ!ってか教科書には「長篠の合戦で武田氏が織田・徳川両軍によって敗北」としか書いてなかったし!豊臣政権の時にはなかったはずだ。
え、どこで消えていくんですか。もし消えられたら和睦交渉に障害が発生するんですけど。
…また今度考えよう。
とりあえず古参の方々に織田との同盟を提案して、武田へ行く準備もして、三成に手紙を書いて………
「景虎殿が攻めてきたぞォっ!!」
今かよ!!
センターが……センター試験が這い寄ってくるお(´・ω・`)




