出会ったらフラグ
あれから四年くらい経ちました。
確か冬が四回来たからね。多分それくらい。来年には小姓にされるよ。
あと俺の二つ下の弟が産まれました。すっごい可愛い。前世は兄弟がいなかったから嬉しいです。
なんかちょっと前に大人たちがガヤガヤしてたけど、何かあったのか?
俺と弟は家の中にいろって言われました。
ただ、ね。
話を聞いてたら、城に御実城様が来ているというじゃありませんか。現代っ子としては気になるわけで。
あの信長が恐れて貢いでた人だよ?性別でさえ不明な人だよ?
見たいでしょ!
「与六様!行かせませんよ!」
なっ!
こっそり行こうとしたら、見張りの女中さんに止められてしまった。
「兼豊様から見張るようにと仰せつかっています!与六様は好奇心が旺盛だから、きっと見に来るだろうとのことです!」
流石父上。息子のこと分かってるなあ。
残念だけど諦めよう。もしかしたら大きくなって会えるかもしれない。
その日は与七と遊んでました。
で、一週間後。
周りも落ち着いてきたので、早速与七と遊びにいく。
「久しぶりの丘だー!」
「あにじゃー!なにしてあそぶのですか?」
「んー…」
いつもは他の子達と陣取り合戦とかだけど。誰も誘ってないしなあ。
「おい!」
「ん?俺か?」
呼びかけられた方を見ると、俺たちより身なりのいい年上の子供が三人いた。武士の子供かな。
俺は生憎、この三人を知らない。もしかしたら前の陣取り合戦で舎弟をやっちゃったのかな?
「そうじゃ!お前、誰の許可を得てここに来ておる!」
「え、ここって危険区域?」
「そうじゃない!ここはわしらの場所じゃ!」
「そうじゃ!出て行け!」
あ、このパターンか。この丘は越後のものだから、つまりは御実城様の物なのに。
とりあえず、与七を逃がすか。
「与七、いつもの通りに逃げろ!」
「あ、あにじゃは!?」
「俺は大丈夫だ!行け!」
近くにある草原に向かって走っていく小さい背中を見送って、馬鹿三人に向き直す。
なんか武士がどうだの親がどうだの言っていたが、よく分からないから聞き流す。
でも、聞き捨てならない言葉を聞いた。
「わしらの父は武士じゃが、お前の父は武士は武士でも腰抜けだろう!」
「ただ薪を数えるだけなど武士ではない!」
「武士だけがこの越後を支えておるのじゃ!」
プッツンしました。
「ハッ!親の七光りに隠れていないと威張れないのか?この越後を支えているのは武士だけではない。百姓も家老もだ。なのに武士だけ?ふっざけんなよ!なら内政も武士だけで出来るっていうのか!そんなことも分からないで言葉を発するな!」
「なっ!」
「お前、いい気にって、うわぁっ!」
とりあえず一番近くにいた子を足払いした。三人とも巻き添えになったところで、与七が逃げたほうへ走る。
ちょっと大廻りしながら。与七が通った跡は分かる。それから大きく避けて走ればいい。
「いたぞ!かかれー!」
「「おー!」」
来た来た…プププ。
俺と与七をすっぽり隠すくらい長い草原は、足元も隠してくれている。
「「「うわあっ!!」」」
計画通り転けた。三人の足元には草を結んで出来た輪っか。
ショボい罠だけど、子供にはこれくらいがいい。与七の頭を撫でながら、倒れている三人を見る。
「さて、お前らよくも父上のことを侮辱してくれたな…!」
草を掻き分けて近寄る。倒れたまんまの一番近くにいた子を仰向けにした。そのまま乗り上げて、鳩尾に体重をかける。
俺の小さい拳で殴り付けようとした瞬間。
「止めろ」
俺の手を掴み、俺を止める声がした。
そのまま手を引かれて、三人は慌てて逃げ出した。くっそ!
「何故止めた!」
「あのままだと争っていただろう」
「向こうから始めたことだ!お前は父上が馬鹿にされて黙ってろっていうのか!?」
「なっ!」
「あいつらは俺たちの父上を腰抜けだと馬鹿にした!父上は立派に自分の仕事をしているだけだ。それは越後の安寧につながっている!
俺は父上が大好きなんだ!これは俺の義を貫くための戦だった!父上への想いなんだ!それをお前に止められる謂れはない!」
「喜平次様ー!」
「無礼な!お前、この方を誰と心得ておる!」
「これ!離しなさい!」
……え?
もしかして、まずった?
家に帰ったらカンッカンに怒られました。まあ、相手は若様だったもんな。思いっきりタメ口で怒鳴っちゃったよ。
喜平次様の母、せんとういん様は怒っていない様子。モンペよりかは良いけど。逆に何かを考えているようだ。
まあ、やってしまったものは仕方ないか。