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カテゴリーエラー  作者: あごひげいぬ
1章 王と名もなき小人
22/71

4. 夜に馳せる-3

 宵が人々に安らぎの時を与え、月影が優しく照らす。

 コルダート海に浮かぶ夜天の星々が、まだ見ぬ明日を祝福していた。

 今頃、子供達は夢の中だろうか。男二人はこれから酒宴らしい。桜花もご相伴に与ろうとしたのだが、未成年だからと捨て置かれた。

 和雲では成人年齢は18歳。ならば18になる桜花は十分成人だ。が、郷に入れば郷に従え、そこは仕方がないと諦める。イグノーツェ内でも成人年齢は統一されていない。18以上から飲酒可能な国に行けばいいだけだ。

 アルコールへの想いを人知れず胸に秘めた桜花は今、2階にある黒龍の書斎の前に居た。

 服はパジャマを完備している。朱色の生地に、あちこちと散りばめられた犬の肉球模様がお気に入りの逸品だ。レイロードがフォルを抱き抱えながら、肉球模様に熱い視線を送っていた事に少しばかりの優越感を覚えた。

 ドアを4回ノックし、中からの返事を待つ。特に何かある訳ではない。ただ話をしてみようと思ったのだ。

 直ぐにどうぞ、と声が掛けられ、桜花は書斎へと踏み入れる。眼前に広がったのは大学での黒龍の研究室に似たクラシカルな室内。今は何時代だっただろうか? と思ってしまうような浮世離れした感覚が桜花を襲う。

 相変わらず大量の古書が陳列されているが、棚にはヌイグルミや小物も数多く見られ、家族4人が写った写真も多く置かれていた。ここがプライベートな空間である事を実感させる。木製の机に座るディスプレイが場違いだと感じた。


「おじゃましますね」

「はい、いらっしゃい」


 黒龍が柔らかい微笑みで出迎え隣の椅子を促す。桜花は勧められた椅子へと軽く頭を下げ腰掛ける。それを以って黒龍から声が掛けられた。


「今日はありがとう。子供達も喜んでいたわ」

「いえ、大した事はしていませんよ」


 目を細め黒髪を揺らし微笑む黒龍に、桜花は軽く手を振り何でもないと答える。実際、風呂上りに遊び相手をしただけだ。2つ年下の妹が幼かった頃はよく遊び相手をしていた。それを思い出した。

 それは良いとして桜花は視線を机に移すと、部屋に入った時から目に入っていた物を黒龍に尋ねて話を変えた。


「それ、フォルですか?」


 簡素なブックホルダーが掛けられた、黒い装丁の本。その横に可愛らしく座る手の平大のヌイグルミ。それを手に取り黒龍が答える。


「これ? ええ、そうよ。中々に可愛らしいでしょ?

 昔は獣なんてって思っていたのだけれど。子供が生まれてから暫くして、アズライトがアルフォードの格言を口にしたのよ。あの子達のためならと思ったのだけれど、私自身すっかり絆されてしまったわ」

「ふふっ、子供が生まれたら犬を飼いなさい、と言うあれですか?」

「ええ、それね」


 微笑み、桜花が口にした内容に、手のひらに乗せたフォルを撫でながら黒龍が頷いた。

 桜花の実家にも犬がいる。気が付けば中型犬が3匹だ。フォルも可愛いが、自分の家の子が一番可愛いのには変わらない。無論、口にはしないが。


「でも……居なくなってほしくはないわねぇ」

「そう、ですね」


 少し儚げに、憂いを秘めた眼差しを窓から月夜へと送る黒竜に、桜花は胸を抑えながらも頷いた。どう足掻いても同じだけの時間は生きられない。だから大切なのだと。そう、知っている。

 軽く頭を振り、感傷に浸たり胸に広がる哀惜を抑え、桜花は掌に座るフォルを指差すと黒竜に尋ねた。


「そのフォル、見せて貰っていいですか?」

「ええ、勿論。因みに私のお手製よ」


 ほう、と一言感嘆し、手渡されたヌイグルミを見やる。手の平サイズながら、頬の辺りのフサフサ感や、微笑むような口元、ボリュームある尻尾が見事に再現された逸品である。肉球も完備だ。形も全く崩れていない。精緻に編まれたフォルは芸術品とも言えた。頼めばうちの子も作ってくれるだろうか?

 ほうほうと、フクロウよろしく感嘆しながらヌイグルミを撫で回す桜花に、苦笑する黒竜から声が掛かる。


「気に入っのたなら、作ってあげましょうか?」

「是非お願いします。あの、うちの子のでも作れますか? 写真はありますので、後で持って来ますから」


 一にも二にもなく頷く桜花に黒龍が優しく微笑んだ。何だか本当に母親のようだと思ってしまったのだが、実母が聞けばさめざめと泣いてしまいそうで、口にはしなかった。


 何時までも持っているのも何であるかと、フォルのヌイグルミを返そうとした時に、机にあった一枚の写真に目が留まった。丁度ヌイグルミで隠れていたいたようだ。

 イタズラっぽい笑顔をした少女が、少年少女3人の肩を抱き寄せている。中心にいる淡いブロンドロングの美少女は、前髪の左端に編み込んだ房を垂らしている。これは、ナロニーだろう。

 左手側にはグレーの髪をしたややタレ目の少年が軽薄そうに笑い、その横で手から逃れるように黒髪を切り揃えたゴスロリ少女が不機嫌そうに顔を歪めている。これはアズライトと黒龍だとすぐに分かった。

 問題は、右手側にいる黒髪をポニーテールに纏め、無表情を貼り付けた黒い瞳の中性的な子。このメンツで残りを考えるのであれば、自動的に一人へと絞られるのだが……。


「れいろーど?」


 桜花は懐疑的な、それでいて間の抜けた声でその人物の名を呟いた。


「ああ、それ? 私達が初めて組んだ時に、ナロニーが記念写真を撮ろうと言い出したのよ。その時のものね。確か……15年前? だったかしら?」


 桜花が呆けているのを見ながら、黒龍が面白そうに笑う。そして、その写真立てを手に取ると続けて桜花の呟きに答えた。


「見た目だけは綺麗でしょ? アズライトのハーレムみたいに見えるのが癪なのだけれどね」


 本当にレイロードらしい事を桜花はその言葉から読み取る。写真は他にも何枚かあり、徐々に年を重ねていたのだが、10代後半と思われる姿でも現在と全く結び付かない。この写真を見る限り、黒龍が今のレイロードを見て戸惑ったとしても仕方ないだろう。

 他に気になった事があるとすれば、皆表情が少し硬く見えた事だ。


「でも、今の方がいいですね」


 桜花にとってのレイロード・ピースメイカーは今の姿である。昔と今、どちらが良いかと言えば、無論、今の方が良い。桜花に打ち勝った、今が。そして、昨日見たナロニーの笑みが。今日見た、黒龍とアズライトの笑みが。


「そう? そうね。そうかもね。

 その頃は殆ど口を利かなかったしね、あの男。正直今の方が遥かに取っ付き易いわ」


 そして、黒龍にとってもそれは同様であったらしい。理由は少々違うが。その事に、桜花は何となく心が緩んだ。今この4人の写真を撮れば、きっと、もっといい表情に写るのだろうと。


 桜花から返却されたフォルのヌイグルミが机の上で見守る中、写真立てを戻し黒龍が微笑む。そこから発せられた声は実に柔和な口調だった。


「で、本題は? 何かあるのではないの?」

「いえ、話の目的があって来た訳では。強いて言えば、話をする事自体が目的ですか。

 でも、そうですね。折角ですから聞いてみましょうか。プライベートな事ですけど」


 そう、特に何かある訳ではなかった。ただ話をしてみたかっただけなのだ。

 大学で会った時、黒龍は苦手な部類であると感じた。それは今も、実は同じだ。それ故に、自身がイグノーツェを旅する理由に、何か変化をもたらすかもしれないと。


「何と言うか……私は……私は私になりたいんですよ」

「また随分と唐突ね? 貴方は貴方でしょ?」


 黒龍が桜花の口にした言葉に、若干眉を顰めながらも即答する。迷いなど微塵も感じぬその姿勢に桜花は苦笑した。自身もそうであれば、きっとここには居なかっただろうに、と。


「ふふっ、模範的な回答ですね。少し前に聞いた時とは大違いだ」

「あら、お気に召さなかった?」

「いえ、レイロードが言っていたんですよ。人と人の繋がりが個の存在を創る、そんな事を」

「ふ~ん、ピースメイカーが? ちょっと意外ね。周りなど気にする男ではないと思っていたのだけれど。

 ……"王と名もなき小人"かしらね?」


 黒龍が手を自身の顎に当て、胡乱げな瞳で何処か遠くを見つめると、桜花の聞き覚えのない単語を口にする。何かのタイトルだろうかと思いながら桜花は聞き返した。


「王と名もなき小人?」


 小首を傾げる桜花に、黒龍が軽く頷くと、机の上にある黒い本に手を添え、話を続ける。


「そう、最古の詩集、イグノーツェ詩集。その序文として記されている寓話ね。

 昔々あるところに何でも識っている王様と、何も識らない小人が居ました。

 王様はそんな小人を見かねて旅に出させます。

 小人は長い年月を掛けて、人と人の間で生きる事が、世界に生きる事だと識りました。

 そんな小人に、王様は人間という存在を与えました。要約すればこんな感じね」


 黒龍が要約した内容に、桜花は一人頷く。確かに似ているかもしれないと、桜花は、黒龍よろしく顎に手を当て黙考する。そんな桜花に、黒龍が微笑みか掛けながら、話を続けた。


「観測される事で、事象はその存在を定義されると言う話があるでしょ? 元は量子力学なのだけれど。

 要は人も同じ。誰かに観測される事で、始めて存在を定義されると言うお話。

 つまり、貴方の存在を定義するのは、観測する誰か……そうね、貴方の両親であったり、友人であったり、社会であったりね」

「でも、私は……私は生まれた時からこうでしたから……勿論、体は違いますけど」


 黒龍が語る言葉に、自然と桜花の目は伏せられ、そこから発せられた声も、どこか弱々しい物になっていた。項垂れる桜花を気遣ったのか、次に黒龍から掛けられた声は、ごく柔らかい物だった。


「本当に貴方の起源は貴方が創ったの? 貴方の周りに居る誰かの影響が、貴方の起源を象ったのではないの?」


 その言葉に、桜花は思う。自身は天が造った人形だと、桜花は認識していた。佐伯織佳は存在して居なかった、と。それを超えようとしたのは、蛍佳の、妹の影響なのだろうか? 考えて仕舞えば、否が応にも、それが浮かぶ。


――姉さんはズルい! 姉さんは何の努力もしないで何だって出来るじゃないか!――


 凜とした貌を見る影もなく歪め、泣き叫んだ妹の顔が。生まれた時から見ていたにも関わらず、言われるまで全く気が付かなかった、妹の胸中が。

 それ以来、たまに浮かぶのだ。先の食卓のように。黒龍から告げられた事は、本当に気にしていなかった。何時もの事だからだ。ただ、何時もの事、そう思った時に、妹の泣き顔が過ぎった。

 こうなのだから仕方ない、と言えればよかったのだろう。それが持ち得る者の傲慢だとしても。だが、やはり何もせず得た技能に、胸を張る事も出来なかった。

 だからせめて、自身が感じた生まれた意義、戦う事だけは、自分を超えたかった。それまでは、天が落とした人形なのだ、きっと。

 桜花が思考の渦に飲まれる中にあっても、黒龍の声は尚も続いていた。


「歳を取るにつれて、知らずと受け入れて行くのよ。みんなね。それを受け入れられなかった者達が、落伍者だとか社会不適合者だとか呼ばれるのよ。

 でもね、世界に従って自身の幻想を捨てた者が大人だと言うのなら、私は子供のままで構わないと思うわ。それではつまらないもの。

 勿論、自分で世界に従って、その道を貫き通すなら、それはそれで大人だと思うわよ? ピースメイカーみたいにね」


 一通り話し終えたのか、黒龍が息を吐く。しかし、一瞬何かを口にしようとし、それをやめる素振りを見せた後、恐らくはそれとは別の事を口にした。


「やめましょう、無駄にお説教臭くなってしまったわ。

 駄目ね。大学の講師なんて、もっと適当でいいと思っていたのに。ふふふっ、今ではすっかり先生なのよ?

 ……あぁ、簡単な例がここにあったのね。私だってそうなんだって。ふふふっ、やっぱり駄目ね」


 朗らかに笑う黒龍に、桜花は一息付いて視線を向ける。


「ふぅ、ありがとう御座います。一つ、心に留め置きましょう。

 ですが、はいそうですかと納得は出来ないようです。

 私は……まだ、今の私を認められません……」


 最後の一言を発した桜花の貌は沈痛な面持ちに満ちていた。そして、そんな桜花を、黒龍は否定も肯定もしなかった。


「ええ、それで良いのではないかしらね。私が言った事も、ピースメイカーが言った事も、貴女にとっては所詮他人の価値観だもの。絶対に正しいなんて思えなくて当然よ。

 でも、その事もちゃんと考えては居るのでしょう?

 沢山の選択肢を探し出し、その中から貴女が納得する答えを見つければいいのよ。

 自分に固執して他を拒絶するのも、他に依存して自分を蔑ろにするのも、真っ当とは思えないもの。私は、だけれどね」


 柔らかく微笑む黒龍が眩しい。やはり、苦手だ。桜花は裏表のない人間こそ、寧ろ信用出来ないからだ。言葉を、ではない。人間としてだ。人間らしくなくて、どうにも不気味感じてしまう。

 しかし、黒龍に不気味さは感じない。信用も、出来る。だからこそ、苦手だ。真っ直ぐで、眩しくて、苦手だ。レイロードもきっと、そんな所が苦手なのだろう。あの男は、何処までも人間だろうから。


「ああ、そういう意味ではピースメイカーは駄目ね。自分の考えを押し付けるだけなのは頂けないわ」


 鼻息荒く、レイロードを批判する黒龍に桜花は苦笑してしまう。


「大丈夫ですよ、きっと。自己完結するくらいならば求めるな、と言っていましたからね」

「あら、そうなの? ふ~ん、あの男がねぇ」


 呟きながら、黒龍の瞳が窓の外へと向けられる。それに釣られて桜花も窓の外へと視線を向けた。イグノーツェの空には別世界のように満点の星空が夜を覆い尽くしている。月も負けじと柔らかい光で営みを照らしていた。

 その光景に目を細めながら桜花は、言葉数さえ違えど二人の言っていた事は似ているな、と感じていた。根底が似ているからこそ、表に現れる違いが許せなくなる。自身を否定されているように思えてしまって。要は同族嫌悪の一種なのではないかと、桜花には思えた。

 尤も、レイロードはよく分からない。あの男の言葉は本心だが、その裏にもう一つ、別の本心が見え隠れしているからだ。ならば、全てを識る事は出来ない。考えても、答えは出ないだろう。妹の事と同じだ。答えの見えない単なる自問自答。

 だが、あの男に出会い、やっと躓く事が出来た。超える壁が見つかった。それには、感謝しなければならない。それとも、甘えているのだろうか、あの男に。


「むぅ……」


 思考が横道に逸れ、思わず声が漏れる。そんな自身に呆れながら視線を部屋へと戻した時、黒龍の手が黒い装丁の本に置かれているのが見えた。その手が優しく装丁を撫でているのを。


「ああ、その本がイグノーツェ詩集ですか? こちらでは有名なので?」


 桜花の声に黒龍が目だけを寄越す。アメジストの瞳に、僅かな哀愁が浮かんでいた。


「ええこれよ。知名度は……余りないと思うわ。文学と言うより、研究資料と言った所だもの。

 私が知っていたのは、現代訳を行っていたのが祖母だったからね。子供の頃はよく両親が読み聞かせてくれたものよ。

 父は研究にかまけてばかりで、家庭を顧みない人だったのだけれど、これだけはよく読み聞かせてくれたわ。祖母が亡くなってからは、よりその傾向が強くなって行ってね。母は耐えられずに私を連れてロマーニに」

「う、すみません。嫌な事を話させましたね」


 よくある話ではあるのだが、人聞きと本人からでは、やはり受ける印象と居心地の悪さが違う。特に桜花の家庭には問題などなかった。妹の事とて、ちょっとした姉妹喧嘩。桜花の気持ちだけが問題だったため余計にだ。


「そうでもないわ。少し昔の思い出話よ。そのおかげで変な連中にも出会えたのだし、マイナスだけでもなかったもの。貴女が気を揉む事など何もないわ」

「そう、ですか……」


 顔を戻した黒龍が片肘を突き、何やら考え込んでいるものの、特に気に病んでいる事も見受けられず桜花は安堵した。今日はこれでお暇しようかと、黒龍に声を掛ける。


「えと、それでは、これで失礼しますね」


 今も何やら考え込む黒龍に暇を伝えると桜花は腰を上げた。ただ、何だか暗い雰囲気のまま去るのも気が引けると思い、桜花は振り向くと割とどうでもいい事を黒龍に一つ尋ねた。


「ああ、所で……何で髪を染めているんですか?」


 黒龍の髪色は黒だったが、それにしては毛量が多い気がする。本来はブロンド系だろう。オニキスを見る限り、銀だろうか。


「あらぁ? それを聞いてしまうの?」


 それまでの柔らかな微笑みから一転、初めて会った時のような不遜な笑みを湛えクツクツと嗤う黒龍に、桜花は、ああ、そう言う事かと納得し、それは的中した。


「それは私が、黒龍だからよ!」


 桜花よりも慎ましい胸を張り、堂々と、そして尊大に答える黒龍に、桜花はやはりかと苦笑した。何処までも迷いなく、何処までも眩しい。焼き尽くされてしまいそうな程に。照り付ける黒い太陽に目を細め、その身を焦がされぬよう、桜花は書斎を後にした。


 黒龍の書斎を離れ、充てがわれた部屋で、桜花はPDを片手に独りごちる。結局他人事だったのだろう。

 イグノーツェに知人などいないし、自分一人ならどうとでも出来ると。だからこそ、"世界でも救ってみせれば、天が落とした人形ではなくなるのではないのか"と言う、半ば投げやりな思考に至ったのだ。

 そして、他人事だったが故に、身の振り方を流れに任せた。最善と判断して、ではなく、好奇心に駆られて。

 本来ならば、立場を気にする必要のない桜花は、首謀者たる教皇の収容先確認と、教皇庁内の反応くらいは見ておくべきだったのかもしれない。

 教皇の収容先は、セキュリティと設備を鑑みれば教皇庁内かセント・テーア国立総合病院のどちらかだろう。

 組織立った動きは見られない。単独行動でも問題はないだろう。先ずは教皇庁を目指すのが無難か。

 他人事だった。だが、違うのだ。その想いは、傲慢なのかもしれない。それでも、今まで出会った笑顔を消させたくはない。そう思っていた事に、気が付いたのだ。

 ならば思い立ったが吉日とばかりに、桜花はパジャマから戦闘服に着替えると、レイロードに言付けるため部屋のドアを押し開く。

 黒龍へと渡す愛犬達の写真も、既に整理し終えていたが。

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