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平塚流と倉橋流
「…また、貴様か?」
私の目の前にいる男、――倉橋朱里は私を睨みながら立っている。
「…朱里、…まあ、そうね。だから何かしら。」
「貴様は、この世界の了解を分かっているのか…?」
「…ええ、痛いほどわかるわ。」
「じゃあ、身を引け。」
朱里は鞘から剣をスッと抜き、剣先を私の顔へ向けた。
「あら、怖いこと。」
この程度の挑発、いちいち気にしてられない。
私も朱里に応じるように家に代々伝わる上物の剣を抜き、朱里の首に添えた。
「…そのまま切るつもりか?」
「…いいえ。」
だって、私の後ろから武士の大群が来ているもの。
「……あれは、卯ノ月流だな。悔しながらも貴様と利害が一致するようだ。」
私たち、平塚流と倉橋流は卯ノ月流をライバル視している。
まぁ、卯ノ月流がこの世界での禁忌を犯したから、ライバル視っていうよりは敵視かな。