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御免こうむります。  作者: はいじ


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20/57

※息子の夢

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高宮安武は夢を見ていた。

先程まで前世、親と慕っていた猫の腹の中で泣き喚きそして眠りについた。



彼の見ていた夢、それは前世の夢であった。


前世の、彼の最期の時の夢。


彼は歩いていた。

口には丸々太ったネズミを咥え。

それを、親と慕う“あにき”の元へ届ける為に。


彼の歩いていた場所は大きな道の隣の歩道だった。

周りの人間が口にネズミを咥えた自分をチラチラと見ている事など、彼は一切気付いていなかった。


ただ、彼は“あにき”にネズミを届けたかった。

役に立つ奴だと思って欲しくて、傍に居て迷惑な奴だと思ってほしくなくて。

彼は“あにき”の傍に居たかったのだ。


彼は常日頃、その“あにき”から人間の居る場所の大きな道には飛び出すなと言い聞かせられていたため、大きな道路ではなくわざわざ狭い歩道を通って、回り道をして帰路についていたのだ。


しかし、次の瞬間彼の運命は変わった。


道の向こう側に彼の慕う“あにき”の姿を見た気がしたのだ。

その瞬間、彼の中で“あにき”の言葉は消えていた。

ただ、道の向こう側に見えた気がした“あにき”に会いたくて彼は道に飛び出したのだ。


あれほど、飛び出すなと言われていたのに。


ビッビー!


けたたましい音が彼の鼓膜をつんざいた。

そして一瞬道の真ん中で止まってしまった。

次の瞬間には目の前まで来ていた大きなナニかに吹き飛ばされていた。


口にくわえていたネズミも飛んだ。

彼が吹き飛んで地面に落ちるその時。


彼は道の向こうに居る“あにき”の姿を一目見ようと顔を上げた。

しかし、その次の瞬間は彼には来なかった。

彼はその瞬間、死んだのだ。


行きたい場所を見定めたらまっしぐらに走ってしまう、それは猫の性である。


彼はただ、行きたい場所へと走ったのだった。



「あにき……」



彼は育ての親の温もりを求め、小さく呟いた。



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