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〜奇跡は起こすもの〜

○一軒家全景


古びた一軒家の前に立っている駄々とケンジ。


ケンジ「……え?」


  駄々を見るケンジ。


ケンジ「これ、駄々んち?」

駄々「正確には俺の親父の家だ」

ケンジ「こんな近くに、誰か住んでるの?」

駄々「一応な。こっちだ」


  家に隣接している小さな小屋の方へ向かう駄々。


ケンジ「え?」


  小屋の中はゴミ屋敷の光景。

  小さなテーブルには缶ビールなど空き 缶。何とか通れる床、汚い敷き布団が見える。


駄々「ここが俺の家。元々倉庫だったんだけど」

ケンジ「あの家は?」

駄々「認知症の親父と引きこもりの兄貴が住んでる」

ケンジ「……」

駄々「俺はたまーに此処へ来てる、台風とか雨強い時とか?最近は来てないけど」

ケンジ「あの家には入ってないの」

駄々「ああ。兄貴とは何年も会話してないし、親父とは会話にならないし」

ケンジ「大丈夫なの?」

駄々「何が?」

ケンジ「何がって、親父さんとか」

駄々「あーたまに訪問介護?みたいな人来てるみたいだから大丈夫じゃないか?」

ケンジ「……」

駄々「お前が言ったんだぞ、家見せろって」

ケンジ「そうだよ、何?」

駄々「何だよ」

ケンジ「何が?何だよ」

駄々「何だよって何だよ、なんなんだよ」

ケンジ「何がだよ。何よ」

駄々「だから何がなんなんだよ」


  とよく分からない事を言い合う2人。

  ガラガラと玄関のドアが開く音がする。

  倉庫の扉越しに外を見る2人。

  こちらを見ている男(駄々の兄)がいる。


ケンジ・駄々「……」


  こちらへ向かってくる男。そしてケンジを挟んで向かい合う男と駄々。


ケンジ「……」

兄「お前、今何してんだ」

駄々「……は?なんにも」

ケンジ「芸人です」

駄々「おい、余計なこと言うな」

兄「なに?なんだって?」

ケンジ「……」


兄がゆっくりと近づき駄々を掴む。

駄々もゆっくりと兄の腕を掴み静かに取っ組み合いが始まる。 


ケンジ「あの、ちょと」


 無言の争いが激しくなっていき駄々が兄を取り押さえる。


兄「い、痛いっ」

駄々「はぁはぁはぁはぁ」


  それを見ていたケンジが駄々に後ろからチョークスリーパーを掛ける。


駄々「ぐっ」

 

  倒れ込みタップする駄々。


駄々「はぁはぁはぁ、なんなんだよ!ちきしょう!!」



○ファミリーレストラン


  テーブルにはコーヒーが3つ。


兄「誰が引きこもりだ、この野郎」

ケンジ「また嘘ついたのか」

兄「……まぁ、コイツからみたら引きこもりでしょうね。私もちゃんと仕事してる方でもないですけど、コイツよりかマシですよ!親父の事はほったらかし。自由奔放に

自分勝手で、10年以上無職で、どこでどう生きてるかもわからねぇし。運が良いの

か知らねぇけどなんでそんな感じで生きてられんだ」

駄々「生きる生きないは関係ないだろ」

ケンジ「今―、仕事はしてますよ、この人」

兄「…………え?」

ケンジ「まだその日暮らしですけど。今日もここ奢ってくれますし」

駄々・兄「は!?」

兄「お、お前、ほ、本当かよ?」

駄々「……あ?……まー、そうだけど」

兄「……何があったんだよ、お前に」

駄々「別に」

兄「お前が働くなんて……。そういえばさっきのは何だ?芸人?て、何のことだ?それの事か?」

ケンジ「あいや、それは仕事じゃないです。一時的なボランティア、の様な感じです」

兄「お前が、ボランティア……?なんだか良く分からないけど、……あなたもそうなんですか?」

ケンジ「……あー、まぁ同じ様な感じです」

兄「あなたが拓郎を変えさせてくれたんですね」

ケンジ「え?」

兄「あなた促したんでしょう?仕事しろって。

 同じ職場の方ですか?」

ケンジ「えーと、そうですけどー」

兄「本当に……ありがとうごさいます」


  頭を下げる兄。


ケンジ「……」

兄「コイツ俺が何を言っても反抗するばかりで、言うことなんて人生で聞いたことないくらいなんですよ。まさかこんな奴に仲間がいてくれて、しかも仕事まで」

ケンジ「いや、仲間というか、僕は何も」

兄「奇跡ですよ、……ありがとうございます」

ケンジ「……」

駄々「……」


  立ち上がる兄。


兄「たまにはこっちの家に来て親父に会ってやれ。まさかお前に奢られる日が来るなんてな……。どうも今日はすいませんでした。コイツを宜しくお願いします。ではこのへんで失礼します」


  去って行く兄


ケンジ「……」

駄々「なんだよ、奢るって。勝手なこと言いやがって」

ケンジ「……奇跡なの?駄々が働くって」

駄々「知らねーよ」

ケンジ「奇跡は起きるんじゃなくて、起こすもの……、あれってどういう意味?」

駄々「知らねーよ適当に言ったんだから」



○商店街


メンチカツを頬張って歩いているケンジと駄々。


駄々「懐かしっ。よく食ったなぁこれ」

ケンジ「なんか急に元気になったな」

駄々「……。お前はどうなんだよ?」

ケンジ「ん?」

駄々「家族?」

ケンジ「俺はいい」

駄々「そう、深くは聞かないけど。俺の家族よりマシだろ?」

ケンジ「聞いてんじゃん」

駄々「途中でソース描けると2倍楽しめるぞ」


メンチカツにソースを付属のソースをかけて食べる2人。


ケンジ「俺養護施設に居たから、親の虐待で」

駄々「…ふ~ん。じゃあ今からその親ぶっ飛ばしにいくか」

ケンジ「何処に居るか分かんない。てかもう関わりたくない」

駄々「そう。ま、いつでも呼んでくれ。力はあるぞ、俺」

ケンジ「チカラって、なにそれ?」

駄々「は?パンチ力だよ」

ケンジ「パンチなんてした事ないでしょ」

駄々「見ただろ?俺が兄貴ねじ伏せたの」

ケンジ「してないじゃんパンチなんか。その後俺に沈められてたし」

駄々「……」


  立ち止まる駄々。

  ぎこちないシャドーボクシング始める駄々。


駄々「昔はもっと早かったんだけどな。シュッシュッ!シュッ!シュシュッ!」


  食べかけのメンチカツが手から離れ飛んでいく。


駄々「ああああああああああああああ!」


  メンチカツを追いかける駄々。

  再び頬張りながら歩いて行くケンジ。



○雅秀の部屋


佳苗「シュッ!シュッシュッ!」


  掌を広げ、ボクシングの様な動きをしている佳苗。


駄々「あまい!もっと!」

佳苗「はい!シュッシュッ!シュッシュッ!」

駄々「ダメだ!もっとこうだ!シュッ!シュッ!シュッ!」

翔「すいませんー」

駄々「あいよ!」

翔「えーとー、メンチカツチャレンジひとつ下さい」

駄々「はいきた!おい、いけいけ」

佳苗「ハイ!」


  おもちゃのマイクを出す駄々。


駄々「さぁ取れるかなお客さん!ここ数日腕上げてますよぉウチのカナちゃんはー毎回取られちゃウチも赤字ですよ~はぃ~取っちゃって~持ってちゃって取れなかったら罰金よぉ~!」

佳苗「シュッ!シュッ!シュシュッ!」


  横で見ているケンジと雅秀。


雅秀「……これネタ、厳しくない?」

ケンジ「厳しいね。入って行くのはやめよう」

雅秀「練り直しだ」

ケンジ「駄々の暴走を止めなきゃ」

雅秀「いや、多分そろそろ佳苗が……」

ケンジ「?」


  コントを続けている佳苗達。


佳苗「あ~~店長また取られた~」

駄々「はいカナちゃんカナちゃんまたまた取られたぁ~店長流石に困っちゃうよ~これじゃあメンチカツならぬメンチマケだよう」

佳苗「厳しーだろ!コレおい!つまんねーよ!ハァハァ」

駄々「え、」

佳苗「やっぱ意味分かんねーよ!なんだよメ

ンチカツチャレンジって!」

駄々「いや、コントってのはファンタジーだろ?」

佳苗「却下!!」


  佳苗に攻められる駄々を見ている3人。



○交差点(現在)


レン「なんだかんだすっかりチーム感出てますね。てかもうボランティアの域超えてません?それ」

ケンジ「そうだね」


  〝カチッ、カチッ〟


レン「ちゃんとネタ作れたんです?2回戦」

ケンジ「うん、駄々のメンチカツのネタを見たお陰でさ、みんな意見出せるようになって。結構熱いネタ作りになったんだよ」



○会場 2回戦結果発表当日


2回戦結果発表の掲示板を見ている5人。


佳苗「……」


 横に居る翔へ顔を向ける佳苗。それぞれ横に居るメンバーの顔を見え行く。最後

 に居る駄々が口を開く。


駄々「おっっっしゃあああああああああ!!」


  掲示板には『みらくるさいくる』の文字。



○ファミレス


5人「カンパアアアイ!」

駄々「いやーキテるね!これはキテるよミラクルが」

雅秀「ねぇ次、3回戦もし通ったら?」

佳苗「準決勝」

翔「準決勝!?てことは?」

佳苗「そこさえ勝てば」

駄々「勝てば?」

佳苗「ゴールデン全国放送賞金1000万」

駄々「えっひとり200万?」

雅秀「やっば!」

佳苗「バカヤロウ共!!」

駄々「へ?」

佳苗「そんな先の事考えてどうする!あまい!先ずは次の事だけに集中!」

翔「まぁ、そうだね、うん。次勝たなきゃ」

駄々「まぁまぁまぁそんな堅くなんなって。今は2回戦突破の勝利をお祝いして食べて飲もう!な!はははは!」

ケンジ「メンチカツで戦おうとしてた奴がよく言うよ」

駄々「あれで確実に団結力高まったよな!良かった良かったははは!」

佳苗「確かにそれは言えてるかも」

翔「あれはあれで意味があったんだね」

駄々「だろぉ?」



○その夜・公園


帰っている最中に公園を通っていく5人。


佳苗「あのさ」

ケンジ・駄々「?」


  振り向くと立ち止まっている佳苗、雅秀、翔の3人。


駄々「どした?」

佳苗「あのー、この間3人で話したんだけどさ、もしー、もし3回戦突破したらさ、今後もみらくるさいくるで活動していくってのはどうかな?」

ケンジ「え?」

駄々「俺らが?」

雅秀「うん、僕たちは前のメンバーよりも、ケンジ君や駄々ちゃんが居た方が面白いモノが作れる気がする」

ケンジ・駄々「……」


  顔を見合わせる2人。


ケンジ「俺らにお笑いのセンスなんて無いよ」

翔「なんて言うか、この5人が融合すると笑いの化学反応が起きるっていうか、……そんな気がする」


駄々「俺たちー、夢も希望も、何もない奴でさ。多分こういうギラギラした世界はー結局向いてないんだと思うんだよな」

ケンジ「……うん」

駄々「だからー、日々何かに向かって生きるって、どうすんのか分かんねぇんだよ、ハハ。な、ケンジ?」

ケンジ「うん。でもー」

駄々「?」

ケンジ「何かに向かって生きるっていうのはこの数日間で色々学んだ気がします。助けられた自分がいます。本当にありがとうございました」


  頭を下げるケンジ。


駄々「確かに、オレも色々助けられた。ありがとうございます!」

佳苗「助けてもらってるのは私達だよね?」

雅秀・翔「うん」

佳苗・雅秀・翔「ありがとうございます!」


  5人で頭を下げているのを見る通行人。

  少しして頭を上げる5人。


佳苗「優勝したら?」

4人「?」

佳苗「じゃあ優勝したら、一緒にやってくれる?」

4人「え?」

翔「佳苗…」

駄々「そんな~先の事より先ずは3回戦のー」

佳苗「優勝したら!いっしょに!みらくるさいくる!お願いします!!」

ケンジ・声「オレも駄々もさ、人生でそこまで人に頼まれたっていうか、必要とされた事なくて戸惑っちゃって。最初は答え方が分からなくて断ってたんだけど、なんか〝生きてる〟って感じがして、隣みたら駄々が立ったまま泣いてたんだよ。鼻水も垂らして」


  映像ではケンジも涙目になっている。 



○交差点・現在


ケンジ「でー、結局3回戦突破したらそのまま活動していくって決まったんだよ」

レン「へーー。それでどうなったんです?3回戦は?」

ケンジ「明日、結果発表」

レン「あ、明日!?ちょっとまって下さい!今現在の話ですか!?」

ケンジ「2台通ったよ」


  〝カチッカチッ〟と押しながら話し続けるレン。


レン「待って待って、え、え?」

レン「うおーーすっげぇー!オレ芸人さんと一緒に居るんですか?やっべ!痺れるぅ~~!」

ケンジ「大げさだよ」


  後ろから休憩終わりの仲間がやってくる。

  その後ろ姿は駄々。


駄々「おつかれー。次の人行っていいよー」

ケンジ「じゃ、休憩入るわ」

レン「あ、はいー!」


  レンの隣に座る駄々。

  (背中姿の2人)


レン「いやー、今ね、ケンジさんから凄い話聞いちゃいましたよ」

駄々「え?何?昨日のG1?」

レン「競馬じゃないっすよー、人生の話っす」

駄々「人生?何?」

レン「いや、コレは本人から聞いた方がいいっす」

駄々「なんだそれ。はぁー、全然寝てないから眠ぃー」

レン「俺もー、何か始めたいなー」

駄々「何だよお前、なんか目がキラキラしてるぞ?薬か何かやってるだろ?」

レン「ある意味処方されましたねー」

駄々「おいケンジー!何したんだお前―!」

レン「おし決めた!俺も動く!何をどう動くか分からないけどとりあえず動く!俺、明日からケンジさんの元でいっぱい刺激受けていきます!」

駄々「怖いよお前」

レン「何言ってるんですか拓郎さん、俺、今までの人生……、え?え?あれ?タクロウ?え?拓郎さん苗字、何でしたっけ?」

駄々「……駄々」

レン「おーーやべーー!駄々だ!」

駄々「呼び捨てすんな!おいケンジ~~!こんなやべー奴だったか!?コイツもユニットに入れた方がいいんじゃねぇか!?」

レン「うお~~シビれる~!みらくるシビれる~~!!」

駄々「うるせーなー!通ったぞほらー!」


 〝カチカチカチカチ〟


駄々「押しすぎだっつの!」

レン「おおおプロに突っ込まれた~!」

駄々「おいケンジー!お前なに話したんだよ!」

騒いでいるレンと拓郎。



○駄々の実家


  テレビから駄々の声が流れ、それを見ながら笑っている駄々の兄。

  








                 おわり


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