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〜パンケーキガールと死にたがり〜

佳苗(25)が立っている。


駄々「な、な、なんですか……?私服警官?」

佳苗「え?いえいえ、違います。あ、あの…」

駄々「(ケンジに)おい、銭湯のやつか?」

ケンジ「知らない人です」

佳苗「こんな所でこんな事言うのもこんなですが、おふた方にお願いがありまして」

駄々「……お願い?」

佳苗「あの、私達とチームを組んでくれませんか?」

ケンジ「……」

駄々「……チーム?」

佳苗「あの、今、コントを作っていまして」


駄々・ケンジ「……」


佳苗「あ、私あの、芸人を志してまして。来週キングオブコントっていうお笑いの初戦のネタ見せがあるんですけど。仲間が2人出れなくなってしまいまして。あのさっき役者さんと聞いてもし良かったらお手伝いといいますか、一時的に私達とユニットを組んで頂けないかなぁと……」


  佳苗の後方には、席に台本を広げている翔(23)と雅秀(23)の姿。こちらに会釈している。


佳苗「あの、全然無理でしたら結構ですで。もしも奇跡が起きればみたいな、はは、そんな感じで最後の賭けといいますか、はい、何でもないです、忘れて下さい、失礼

しました」


  戻ろうとする佳苗に声をかける駄々。


駄々「お嬢さん。奇跡は起きるんじゃなくて、起こすんです」

ケンジ「……は?」

佳苗「え、じゃ、じゃあ」

駄々「その話……引き受けましょう」

佳苗「本当ですか!?」

駄々「僕たちも役者としての勉強にもなりますし、お笑いにも興味が無くはないので

ね」

佳苗「あ、ありがとうございます!」

駄々「ただー、条件があります」

佳苗「はい?」

駄々「……今日のここのご飯代、奢ってくれませんか」

佳苗「……」

ケンジ「……」


  席を移動し、駄々とケンジ、佳苗、翔、雅秀、計5人で台本を確認しながら話し合っている。


佳苗「急にですよ?その2人兄弟なんですけど夢は諦めるって言って田舎帰っちゃったんですよ。あり得ます?ユニット組んでネタも作ってさあ出るぞって時に」 


  駄々はうどんを啜っている。


駄々「ふーん、まぁ人それぞれ色んな人生があるよな。で僕たちは何すれば?」

佳苗「あ、この台本のマルちゃんとシゲちゃんの役をやってほしいんです」


  台本にはなかなかのセリフ量が見える。


駄々「お、おう、なるほど。おまえーどうする?シゲちゃんやる?」

ケンジ「……」

駄々「いや、まるちゃんっぽいかな?うん、俺シゲちゃんやるわ」


  さっそく台本の読み合わせをする5人。

  棒読みのケンジと駄々を見て少しずつ疑問と不安を感じ始める他の3人。


駄々「うんうん、面白いねーうんー」

佳苗「あの、役者さん、ですよね?」

駄々「はい」

佳苗「どこか事務所とかってー」

駄々「入ってませんよ」

佳苗「そうですか、あのー役者を初めてー」

駄々「1日目です」

3人「え?」

駄々「僕たち、今日から役者への道を志し始めたので、はい」

佳苗「……」

翔「だから言ったじゃないか、これは危険なやり方だって」

雅秀「そうだよ、ちょっと変だったもん!やっぱりさ、3人のネタ作り直した方がいいって今からでも」

佳苗「本番3日後だよ?ネタ作りする私の気持ち分かる人いる?……もういいよ、わかった。今年はもう諦める。てか、いったん解散するのも考える……」


3人「……」


駄々「ちょちょちょ、ちょっと待って。分かった、正直に言う。僕たちは演技が下手!はい。でも!やる気はありますし、やれば出来る子達です。ここまで孤独ながらも何とか生きてこれました。それはそれは辛かったです」

雅秀「な、何?何の話?」

駄々「たった3日、人生のうち3日だけ本当に死ぬ気で頑張りませんか!?」

ケンジ「……(小声)誰だよ」

駄々「今日から泊まり込みで頑張りましょう!この3日間で未来が変わるかもしれな

い!そんな局面にいるのかもしれない。この出会いも必然かもしれない。どうです

か!やりすか!やりませんか!」

ケンジ「(小声)宿がほしいだけだろ」

駄々「(小声)うるさい」

佳苗「アツイ、熱いよ!こんな熱い人を私は探してたの!聞いた?この人は本物。汚いけど原石」

駄々「汚い?」

佳苗「今はね!?隠れ過ぎた才能の持ち主、踏まれ続けた四つ葉のクローバー。はじかれた稲の青田買いよ!」

駄々「もう何を言ってるかわからない」

佳苗「やりましょう!この3日間全員で突っ走るの。それでダメだったらいいじゃない。 人生100年、このたった3日間だけ生きよう!死ぬほど生きよう!」

駄々「……そ、そうそうそういう事」


 顔を見合わせる翔と雅秀。


駄々「という訳でー、どなたかのおうちでお世話になれないでしょうかっ!」

佳苗「私のアパート6畳!友達特に無し!」

翔「僕もー、ロフト付きの6畳。東京の知り合いはこの2人だけ」

雅秀「……、実家」



○雅秀の家 全景


  いびきをかく駄々。


佳苗「おいあんた!」

駄々「はいっ」

佳苗「死ぬ気で生きるんだろ!」

駄々「はいそうです」

佳苗「もう一回行くよっ、さっきの所から、はい!」

翔「すいません、この列ってそこのカレー屋ですよね?」

雅秀「え?いや、隣のラーメン屋です」

佳苗「え?あそこのパンケーキじゃないんですか?」

ケンジ「パンケーキ?え?ホットケーキじゃないんですか?」

佳苗「え!?ホットケーキ!?え嘘でしょ?パンケーキじゃないんですか!?あ、店員さん来た店員さん来た」

駄々「あ、お客さん、お先にメニューご覧になりますかー?」

佳苗「あ、はいー」

4人「骨盤矯正!?」

駄々「はい、上級者用の鬼矯正もやってるんでもしよかったらー」

佳苗「メニューってそれかい。コースって言えコースって!てか凄い人気の骨盤屋だ

な!」

駄々「あっ、骨盤は売ってないです」

佳苗「わかっとるわ!」

駄々「ちょちょちょ……」

佳苗「はい?」

駄々「なんかなぁ……」

佳苗「なに?」

駄々「もっとキャラクターに深みを付けたらいいんじゃないかなー。なんか物足りないって言うかー……」

翔「確かに」

佳苗「例えば?」

駄々「んー例えば雅秀はトイレに行きたいけど我慢して並んでる人」

佳苗「ほう」

駄々「翔は人生で初めてカレーを食べようとしていた人」

翔「何それ?」

駄々「ケンジは、自殺しようと思っててまぁ最後に飯でも食ってやるかっつってホットケーキ食いに来た人」

佳苗「重いよ!てかなんで最後の飯にホットケーキなんだよ!珍し過ぎるでしょうが!」

雅秀「でもちょっと面白いかもそれ」

翔「確かに、佳苗もさっそく突っこんでるし」

佳苗「……。そう。じゃー、私は?」

3人「……」

ケンジ「太っちょは?」

佳苗「まんまだろそれ!なんであたしだけ容姿の説明なんだよ!」


  クスクス笑う3人。


佳苗「何笑ってんだよ」

駄々「パンケーキガールは?」

佳苗「何だよそれ!むしろパンケーキ売る側じゃねえかそれ!」

雅秀「パンケーキ大好きっ子ちゃんは?」

佳苗「ラジオネームじゃねーんだよ!」


  少し笑っているケンジ。



○交差点(現在)


レン「へー、すげー。ダダって人マジで強運持ってますね」

ケンジ「ピンチになった時だけ発揮するんだ」

レン「え、じゃあその人達と一緒に過ごしたんですか?その数日間」

ケンジ「うん」

レン「すげー、なんか楽しそうですね」

ケンジ「楽しいっていうかー……」

レン「え、でもーよく役者って誤魔化せましたね」



○次の日の朝(雅秀の部屋)


 窓の外から鳥のさえずりが聞こえる。

  ゆっくり目を覚ますケンジ。

  雑魚寝している他の4人。



○町中


  歩いて居る駄々とケンジ。


ケンジ「いつまでやるつもり?」

駄々「あん?あと二日だろ。それまでは宿確保できたしな。その後の事はまたその時だ。あ、それまでちゃんと付き合えよ?あいつらに〝迷惑〟かけたくないだろ?」

ケンジ「……はぁ」

駄々「あー昼飯どーすっかなー。日雇いか?働きたくねぇーしなー。集合時間何時だっけ?」

ケンジ「16時」

駄々「おっとー、出会っちゃいましたー」


  目の前には大型スーパー



○販売コーナー


  かごを持ちながら試食コーナーを探査す

  る2人。


駄々「へー結構簡単に出来るんですねー。凄いね?」

ケンジ「ああ」

販売員「そうなんですよーこっちの方も簡単ですよ?そっちはポン酢でこっち味噌ダレね」

駄々「あー今夜どっちにしようかなー。佳苗ママどっち好きだと思う?」

ケンジ「……味噌じゃないかな?」

駄々「やっぱそうだよねー。ちょっと食べ比べしちゃっていいです?」



○外


駄々「お芝居ってやろうと思えば出来るな」

ケンジ「出来てるの?あれ」

駄々「喉渇いたな。……あ」

ケンジ「?」


  献血の旗が見える。


 ―シーン切り替えー

  オレンジジュースを飲んでいる駄々とケンジ。



○雅秀の部屋・夜


稽古をしている声。

カップヌードルの空カップや菓子パンの袋が置いてある。


佳苗「大分かたまってきたんじゃない?」

雅秀「そうだね」

翔「あと一日……」

駄々「いやーみんな凄い成長だよ。うん、よしっ!寝よう!」

佳苗「え?もう?」

駄々「休むのも大切な訓練のうち!」


  横になる駄々。


雅秀「まぁ、そうかもね」

翔「明日は早い時間からやろうか」

駄々「明日は明日の風が吹く!よし!頑張ろう!」

佳苗「寝たいだけじゃねーのか?」



○電気の消えた室内


  窓から見える夜空を見ているケンジ。


佳苗「寝れないの?」

ケンジ「?」

佳苗「私も寝れないんだー、明後日が怖くて」


  イビキをかいているその他3人。


ケンジ「怖いって何?」

佳苗「え?だって、自分たちの未来が変わるかもしれない大事な日だから。……今までないですか?そういう日」

ケンジ「……無いかな」

佳苗「……そっか」

ケンジ「……」

佳苗「ケンジくんって、本当に何も感じてないの?」

ケンジ「……感じてる、のかな。……ただ、それが何なのかわからない」

佳苗「私もわかんないよ。毎日笑いを作ってるけど、笑えてるのかどうかもわかんない。体がでかいから目立つだけ。……目立たないと、消えちゃいそうで」

ケンジ「……消えたいって思う?」

佳苗「思うよ。……でも、消えたら誰にも覚えてもらえないじゃん。……それが一番怖い」

ケンジ「……俺は逆に、覚えられてるのが怖かった」

佳苗「……なんで?」

ケンジ「覚えられてると、期待される。期待されると、裏切る。……裏切るのが辛くて、もう何も期待されない方が楽だった」


(佳苗、泣きそうになる)


佳苗「……それでも、今日ここにいるじゃん」


ケンジ「……うん。……不思議だな」



○雅秀の部屋・朝


大きなあくびをする佳苗。


佳苗「おっしゃー起きろ皆の衆!」

駄々「おい~目覚ましより先に起きるなよぉ」


  〝ジリリリリリ〟


佳苗「はい鳴ったー!はい鳴ったあ!」


  起き上がる翔と雅秀。 


駄々「ケンジー起きろー。あれ?ケンジ?」


  ケンジが見当たらない。


佳苗「え……?やだ、私……」

駄々「なに?」

佳苗「……昨日」


 〝トントン〟と部屋の扉が開く。


雅秀の母「はい、朝ご飯ですよ~」

雅秀「あれ、どうしたの?」

雅秀の母「みんな泊まり込みで頑張ってるから、せめて朝ご飯でもって」


  後ろからお盆で味噌汁を運んでくるケンジ。


駄々「え?何してるのお前」

雅秀の母「私がご飯の支度してたら何か手伝いましょうか?って言ってきてくれてね。味噌汁作ってくれたのよぉ」

駄々「……うっそだろ?」

佳苗「……」


  微笑む佳苗。


佳苗「ありがとう御座います!」

雅秀の母「さ、コレ食べて今日も頑張りなさい」



○外


  歩いている駄々とケンジ


駄々「コーヒー飲みたいなーー。ねぇ、貯金も何も無いの?」

ケンジ「2万くらいはあった気がする」

駄々「はぁ!?言えよ!え?ご飯食べれるじゃん!」

ケンジ「下ろせないよ。財布も全部前のバイト先に置いてきたって言ったじゃん」

駄々「かぁー、…………。行くぞ」

ケンジ「え」



○健康ランド


 駄々「でー、まだありますかね?お財布」

店長「……。その前に謝罪じゃないですか?どれだけの人に迷惑かけたか分かってる?志賀君。てか、なんでまだこの人と一緒に居るの?」

駄々「僕たちー、実は今お笑いユニットをー」

ケンジ「店長、今までご迷惑をおかけしました。すいませんでした」

駄々「……おぉ」

店長「……はぁ。ちょっと待って」

駄々「……」


  ケンジの方に手を置く駄々。


駄々「よく言った。これで、飯が食えるな」

ケンジ「誰が奢るって言った?」

駄々「またそんな事言う~。なぁ、さっきの芝居か?それともマジか?」

ケンジ「……マジ」

駄々「本当か~?この~、芝居上達してるからな~」



○雅秀の家・夜


翔「噂には聞いていたのですが、本当に美味しのかなぁって」

佳苗「今まで出会わなかったのかよカレーに!日本にいたんでしょう!?」

翔「はい、バリバリの江戸っ子です」

ケンジ「あー、パンケーキかよ。最悪の人生最終日だよ」

佳苗「重いんだよあんたは!、死ぬな死ぬな!てか人生最終日によく行列並べるな!」

雅秀「ダメです、もう漏れそうです!これでラーメンじゃなかったら最悪です!」

佳苗「帰れよあんたは!トイレ行ってこい!」

駄々「すいません、こちらのお客様で本日のスーパーサービス無料骨盤矯正タイムは終了させて頂きます」

佳苗「は!?ここここここ骨盤?」

雅秀「豚の骨盤ですか?」

翔「豚骨!?」

佳苗「ラーメン屋じゃねぇって。ブタの骨盤矯正してどうすんだよ!」

駄々「その方が味が出るんですよ」

佳苗「ラーメンやかい!てか無料かい!」

駄々「豚骨矯正ラーメンです」

佳苗「気になるなそれ!漏れそうでも並ぶコイツの気持ちが分かったわ!」


  部屋からは深夜まで稽古の声が響く。


駄々(声)「なぁそう言えばユニット名って何なの?」

佳苗(声)「みらくるさいくる」

駄々(声)「ダサいなー」

雅秀・翔(声)「ほら言ったじゃんーー」

佳苗(声)「奇跡の周期だぞ!?はい続き!」



○交差点・現在


レン「え、それで無事に大会は出れたんです

 か?」

ケンジ「うん」

レン「え、で、どうだったんですか?初戦」



○大会会場の掲示板前


  張り出された番号通知板の前に立つ芸人達。その中に〝みらくるさいくる〟の文字がある。


5人「……」

佳苗「……、あるじゃん」

雅秀「……みらくるさいくる、ある」

翔「……あるね、みらくるさいくる」

ケンジ「番号、あってる?みらくるさいくる」

駄々「っしゃああああああ!みらくるさいくるううう!!」


  駄々の声で一気に騒ぎ喜ぶ5人。



○ファミリーレストラン


5人「カンパーイ」

雅秀「ファミレスで乾杯って」

駄々「いいじゃないの、出会いの場で乾杯、素晴らしいなぁ~」

ケンジ「お金払った事ないけどね」

駄々「ええ、何か?」

佳苗「いや払えよオヤジ~!」

雅秀・翔「はははは」

駄々「そうだなー、いつかはちゃんと人に奢らないとな~」

ケンジ「……仕事探すか」

駄々「……え、マジで言ってんの?あのお前が?」


  泣きそうになりケンジの肩に手を置く駄々。


ケンジ「何だよ」

駄々「俺は、うれしいよ。本当に。……俺も働くか」

ケンジ「え?本当に言ってるの?お前が?」

駄々「お前って、年上年上ぇ~!でもまぁいいか!ははは」

佳苗「ちょちょ、ちょっと待って。そういえばあなた達、働いてないの?」

ケンジ「……」

駄々「実はー、私達、元ホームレスと元自殺志願者です。あ、ホームレスは現在進行形か。……嘘ついていてすいませんでした!」


  頭を下げるケンジと駄々。


3人「……」

佳苗「どおりで汚らしい格好してるんですね」

駄々「言うねぇ」

翔「役者志望にしては歳いってて演技下手だなぁって思ってた」

駄々「くるねぇ」

雅秀「一円も払わないしなんだか図々しいし」

駄々「悪口入ってる?」

佳苗「でもそんなの関係ないですよもう」

ケンジ「……、怒ってないですか?」

佳苗「怒るも何も、感謝してます。てかもう仲間だし!?改めてカンパーイ!みらくるさいくる目指せ2回線突破~!!」


  乾杯して祝う5人。


駄々「2回戦はいつ?」

佳苗「来週の土曜、はいそうですネタはまだ出来てません!」

翔「ヤバいじゃん!?」

佳苗「大丈夫、また全員でネタ作っていけば!合宿はまだ続くよ~!」

雅秀「えええ?」

駄々「おっしゃー!お泊まり延長戦!」

ケンジ「仕事探すぞ、駄々」



○交差点・現在


レン「キングオブコントか〜、凄いな〜。なんか青春?ですねオレもそんな学生時代過ごしたかったなー」

ケンジ「全然大人の話だよ」

レン「あそっか。でもその駄々って人謎っすね。そんな人垂らしで明るくて器用なのにホームレスって」

ケンジ「……不器用だよ、あの人も」

レン「え?」



○町中


歩道を歩いている駄々とケンジ。手には茶封筒。前を歩いている駄々が呟く。


駄々「なな、はち…。八千三百円かー」

ケンジ「どうしたの?嬉しくないの?」

駄々「直ぐ無くなっちゃいそうだなー。とりあえず飯だな」

ケンジ「宿はどうする?」

駄々「漫喫でいいんじゃない?」

ケンジ「あのさ……」

駄々「あ、お前が居たとこのスーパー銭湯良いかもな!?今ならお金払えるし」

ケンジ「駄々ってさ、何者なの?」

駄々「はい?何だよまた」

ケンジ「本当にホームレス?」

駄々「まぁな」

ケンジ「俺と会う前ってどこでどう生きてたの?」

駄々「どうってー」

ケンジ「服もそんなに汚くないし、髭はボサボサだけど自分で切ってる感じしないし、靴だって汚いけど割と最近のっぽいし。そもそも、荷物ゼロだし……」

駄々「モノは全部家に置いてるんだよ」

ケンジ「どこの?公園?橋の下?どこか施設のー」


  立ち止まり後ろのケンジへ振り向く駄々。


駄々「…どうしたんだよ。らしくないな」

ケンジ「え?」

駄々「他人に興味ないお前が何でそんな事聞くんだ?」

ケンジ「……」

駄々「まぁ、良いことか」


  再び歩き始める駄々。

  駄々の後ろ姿を鋭い視線で見つめながら歩くケンジ。


ケンジ「……」

駄々「……」


  再び立ち止まる駄々とケンジ。

  カーブミラー越しに目が合う2人。


駄々「何だよっ」

ケンジ「何も言ってないだろ」

駄々「感じるんだよ圧を!どんどん生命力上がってるなオイ」

ケンジ「なんで隠すの?」

駄々「……。いいんだな?」

ケンジ「何が」


駄々「そこの領域に入るんだな?」


ケンジ「……」


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