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El Sol de Noche  作者: Yu-tama
1/1

最初の戦士

これは漆黒の闇夜に生まれた一筋の光。

小さな光の物語である。

小さなその光は、蛍の光のように漂っていた。

弱々しく、しかし確かに意志を持つかのように夜の先を行く。


その光はのちに神園と呼ばれることになる。

夜の太陽、その名を冠する最初の人物だった。


やがて小さな光は人の形を取り、神々しい輝きを放ちながら次第に大きくなっていく。

周囲とは明らかに異なる気配。

その風貌から、ただ者ではない実力者であることがうかがえた。


そして、ゆっくりと顔を上げる。

…口元から何かがこぼれ落ちていた。


「あっ、なんだ。ヨダレか」


こうして「El Sol de Noche」

夜の太陽を名乗る戦士たちは、

この最初の一人から誕生していくことになる。



~洞窟の中~



誕生から一年後。

誕生して以来ずっと布団の中にいた神園は、ジャンクフードのゴミが散乱した洞窟で暮らしていた。

異臭が漂い、とても人が生活できる空間ではなかった。


股間をポリポリと掻きながら手を伸ばした先にあったのはポテトチップス。

生まれて初めて味わう薄切りの芋はパリッと弾け、コンソメの感覚を舌全体に広げた。


「う、うめぇー!」


あまりの衝撃に立ち上がり、洞窟の外までスキップしながら走り抜ける。

外に出たのは二十日ぶりだった。


「そろそろ食料を確保しないとな……」


そう呟いた神園は再び洞窟へ戻り、貪るように眠りについた。

そして深い夢の底へと沈んでいく。



~夢の中の 日蝕の関~



???「治癒魔法!早く!!」


慌ただしい戦場。

ぼやける視界。

膝をつく満身創痍の体。

魔力で形作られた盾のようなものを、かろうじて握りしめている。


だがその盾は半壊しており、持ち上げる力すら残っていなかった。


???「あぁ……血が止まらない……」

???「このままでは死んでしまう!」


悲しみと怒りに満ちた声が、幾重にも重なって聞こえる。


彼らにもう戦う力は残っていなかった。


???「どうにかしてくれよ!」

このままでは私たちが全滅してしまう。


慌てふためく声が響く。


???「もう……だめだ……また迎えに来てあげよう」


涙を堪えきれない野太い声が、そう告げた。


???「ここには……置いていけないじゃない……」


震えるか細い声。


???「おい!しっかりしろ!もうどう見てもダメだろうが!」


僕の目にはもう光は入ってこなかった。

耳だけがかろうじて周囲の状況を伝えてくれる。


体を流れる温かい液体の感覚。

腰から下の感覚はすでにない。


次第に音も遠のいていく。

すうっと無になっていった。



~洞窟の中~



神園「わぁ!」


慌てて飛び起きる神園。

またこういう夢かよ。そう思った瞬間。


神園「うぅぁぁぁぁぁぁぁあ!」


この胸が締め付けられそうになる夢は、光がほとんどない漆黒の闇夜の日に見ることが多い。


僕はなんでここにいるんだろう。

何をしているんだろう。

何をしなければならないのだろう。


そして食べ物がなくなり、街まで降りて食い物を探そうと立ち上がる神園。

獣道を抜け、小さな田舎町へたどり着く。


ポテチを盗む算段を考えながらニヤニヤと歩いていた、その時。


ゴォオオオオオ――――ッ!


大型トラックが猛スピードで接近した。


四角い鉄の馬。


神園はそれが危険な乗り物だと直感する。

(あれとぶつかったら、多分タダでは済まない)


そう感じた。


しかし、回避はもう間に合わない。


絶体絶命。


その瞬間。


体が、勝手に動いた。


まるで盾を構えるように。


足裏からぞわりと何かが駆け上がる。

大地が震える。

地の奥から引きずり出すような感覚。

地脈と呼応するような鼓動。


内側から爆発するような熱。


なんなんだ、この感覚は。


体は覚えている。


衝突の、その瞬間

視界が、暗転した。


目が覚めた時。


白い天井。

どこか人工的な匂い。

ピッ、ピッ、と一定の音が鳴る鉄の箱。


神園「こ、ここはどこだ……?」


ガラガラと扉が開く。

白い衣装を羽織った中年の男が入ってくる。


医者「目が覚めましたか。あれだけの大事故でほぼ無傷なのは奇跡ですよ」


そう言いながら、神園の腕、脚、首、瞳孔と手際よく確認して回る。


やけに馴れ馴れしい奴だな、と思い眉をひそめる。


そして、事故の瞬間を思い出す。


神園「あの……あの乗り物と、乗っていた人間は無事ですか。僕……大変なことをしてしまっていませんか?」


医者は少し間を置いてから口を開いた。


医者「あなたは二十メートル以上吹き飛ばされ、舗装路を転がったそうですよ」


それでも無傷なのは奇跡だと、何度も繰り返す。


神園「え。僕、乗り物をめちゃくちゃにしてませんか?」


医者「はい? 頭でも打ちましたか。……ああ、バカなんですね」


明日にでも退院していい、と軽く告げられる。


神園は天井を見つめた。

(あの感覚は……幻?)


大地と繋がった、あの瞬間。

確かにあった、あの熱。


その時


バンッ!!


扉が勢いよく開いた。

室内の空気が一瞬で張り詰める。


幾多の試練を越えてきたと、一目でわかる女が立っていた。

眼光は鋭く、背筋はまっすぐ。

一歩踏み出すたびに、空気が重くなる。


女「ぶっとばすぞ」


静かな病室に、低く鋭い声が落ちた。


神園「え?」


女はまっすぐ神園を睨みつけている。

神園、人生二度目の絶体絶命。


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