01:人として
俺はあいつを親だと認めない。
それは虐待されたわれでも育児放棄されたわけでもない。
あの環境でいえばマシな方だったと思う。
それでも俺はあいつを親だと認めない。
昔も昔、そう80年位前に地球にリヘオフレアと呼ばれる太陽フレアが降り注いだ。
その太陽フレアは昔の人からすると特殊かつ強力で、降り注ぐ電子が強すぎて電子機器がダウンするだけでなくデータをすべてクリスタルのように変化させ世界の結晶の山を築いた。
そしてリヘオフレアで最も不可解で現在も原因がわかっていない事象は
—————生物が魔物に変異することだ。
魔物は一匹につき一つの魔法を使ったり身体能力が以前の生物より格段に上がったり寿命が延びたりなど実に様々な変化がある
それは人間も例外ではなく、あまたに角が生えたり猫耳やしっぽが生えるのは奇跡に近い方で大半は
奇形の怪物になる。
80年前、それはもう地獄絵図になったらしい。
当然だ、人間の数だけでも80億人はいたらしい。それが一瞬で魔物に置き換わったのだ。大丈夫な方がおかしい。
そしてリヘオフレア天災の後、人間は4種類に大別されるようになった。
意思疎通ができ、人間に友好的な存在、「ミルクル」
意思疎通ができず、人間に友好的な存在、「ナルクル」
意思疎通ができ、人間に敵対的な存在、「ザルクル」
意思疎通ができず、人間に敵対的な存在、「イルクル」
その中でさらに魔法を使えるものと使えないもので分けられる。
———————————
「——なのでリヘオフレア天災の後に生き残ったミルクル、ナルクルが町を作り国を作り今の今まで発展してきたのです。」
全く話を聞かない児童たちのざわめきを塗りつぶすようによく響く声で先生が言った。
「先生!」
それを覆すほど元気な声と手を挙げた少年が自信満々に先生を見つめる。少年が発した声は児童の声をなかったものと思わせるほど静かにさせた。
「お、積極的でいいですね。はい、松くん」
先生はいたって笑顔でしかしその児童の顔を見るとどこかあきれた様子で答えた。
「先生はザルクルとイルクルはその後どうなったのですか?敵対的でももとは人間なんでしょ。
人権侵害にはならなかったのですか?」
俺の名前は松 興治。小学5年生。自分で言うのもなんだが大人を困らせるのが好きだ。答えづらいことを言っていつも俺たちを子ども扱いしてくる大人たちが見せる渋い顔、沈黙、視線、そのすべてが好きだ。
さあ先生、この質問をどう切り抜ける?
生存者コミュニティができた後は圧倒的な暴力で殺しただけなのに正当防衛なんて言うのか~
「その頃は国が対応どころか国自体が消滅しました。そのあとに魔法を使えるミルクルがコミュニティを作りましたがそれもただの一般人が作った集落。とてもリソースが足りませんでした。とらえて保護なんてできません。正当防衛です」
「せいぜい苦戦したのはイルクルとの戦いだけでしょ。いろいろな文献を読みましたがコミュニティ設立後は——」
「松くん、あなただけの授業ではないのです。そこまででいいですか?」
「…」
俺はレスバしたいだけなのかもしれない
「では授業を続けます。」
教室にはかすかに聞こえる程度の笑い声が残った。
————————
「では、これで授業を終わります」
周りを見渡すとホームルームが済んでいないのにすでに3分の2の席が空白になっている。
まあ、いつものことだから気にはならない。
「興治。あまり先生困らすこと言っちゃいけないよ。」
ホームルームが終わり帰ろうとしたときに俺に忠告を飛ばしてきたこいつは崎守 紅葉。
鳶色のショートヘアに透き通るような赤い目、「chicken or beaf」と書かれた黒色のTシャツにジーンズのショートパンツをはいている。
本人はこれがいいと思っているらしいが「chicken or beaf」以外の良さが見当たらない。
「俺みたいなやつの言うことすら反論できない大人が教師なんてつとまるかよ。もっと賢いやつ国はよこせよ」
「そんな性格だったら、大人になったときに苦労するよ。」
「大丈夫だって、将来は誰にどんだけ嫌われようと俺が主導権取れる仕事をするんだから」
そんなこと話しながら下校しているとき、路地裏に残飯をあさっている孤児二人を見た。
おそらく兄弟なのだろう。
「兄ちゃん!これ1000円だよ!」
「どれだ!?——本当だな!神様のお恵みだな」
それを遠巻きで見ていた高校生くらいの不良の男がその孤児の兄弟に突っかかった。
見た目はさらさら髪の金色で耳には大仏の耳たぶのようなピアスがあいていて、
180cmはあろうかという身長だった。
「おい、ガキども。それは俺が落としたものだ。よこせ」
「!? ビル、逃げろ!」
兄と思われる方の孤児は危機を一瞬で察知して弟に金を持たせ、逃がした。
言葉を聞いたビルという弟の方の孤児はまるで何度も打ち合わせをしたかのようにその枝のように細長い足に見合わぬ速度で逃げて行った。
だが決して追いつけない速度ではない。
不良の男がビルを追いかけようとしたとき、兄が不良の男のあごにアッパーをかました。
が、その細い腕から繰り出されたこぶしは不良の男に触れた瞬間に跳ね返り兄の顔を激しく殴りつけた。
そう。ただの不良と思っていたそいつは、魔法が使えた。
「あいつ殺してくる」
そういった崎守は俺が制止しようとする前に地面を蹴り抜き不良魔法使いの元へ駆け出した。




