表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

1

次の授業のために移動している最中で学園の校庭に彼女の姿を認めたその瞬間、僕の中で稲妻のような衝撃が走った。

「おっ。あれ、クリスマス寮のイヴさんじゃね?」

「え?ネロお前、あの子のこと知ってるのか」

「ジャックは逆に知らないのかよ。クリスマス寮のイヴさんと言えば、今やこの学園じゃ知らない人がいないくらい有名な美人だぜ。いわゆる学園のマドンナだな。それにしても遠目から分かる美人だなあ、今日はいいことがありそうだ」

友人のネロは校舎の廊下から遠巻きに眺めて浮かれているだけだったが、僕は最初に感じた衝撃を未だに抑えることができなかった。

白銀のように綺麗な髪に長いまつ毛に囲まれたつぶらな瞳、制服の上からでも分かる細い木の枝のようにスラリとした四肢。昔博物館で見たギリシアの彫刻にも勝るとも劣らない美しさではないか。

彼女の姿を見ているだけで、胸の高鳴りが止まらない。

これが、俗に言う一目惚れ。

一度そう認識するともう感情の波は制御不能となり、僕は拳を強く握りしめながらネロにこう宣言した。

「決めた。俺、彼女にアタックする」

「お前が?」

そう聞くなりネロは目を点にしていた。

「辞めとけよ。彼女に一目惚れする気持ちも分かるけど、いくらお前がハロウィン寮生徒会長で人望があるからといって叶いっ子ないんだから。この学園の校則の厳しさは俺なんかよりお前の方がよっぽど理解しているはずだぞ」

そんなことは言われなくても分かっている。

ここ聖フェスト学園はハロウィン寮、クリスマス寮、プリマヴェーラ寮、ハイビスカス寮の四つで構成されている。そこからさらに前者二つがイースト棟、後者二つがウェスト棟に分かれてこの大規模な生徒数を誇る学園は成立しているのだが、ハロウィン寮とクリスマス寮の寮長同士の仲が険悪なせいで現在イースト棟の二寮は校則で授業以外での交流を制限する接触禁止令を敷かれているのだ。

それを承知しているネロは心配そうにこちらを見つめてくるが、ジャックの中で燃え上がった炎はその程度で揺らぐほど弱くはなかった。

「僕も自分で知らなかったよ、本当に好きな人のためなら平気で規律を犯せる人間だったこと。校則なんてクソ喰らえさ」

「ジャック、お前・・・」

「悪いけど、移動教室は先に行ってて。彼女に話しかけに行かないと、もう気が済みそうにないんだ」

ノートと筆箱を押し付けたネロの返事を待たずに、僕はずかずかと彼女に近寄って行った。

「やあ、初めまして」

校庭で佇んでいたところを話し掛けると、彼女はゆっくりと顔を上げる。間近で見ると遠目から見た時の十倍は美人だったから、僕の鼓動はさらに速くなる。

「えっと、あなたは・・・」

「高等部二年のジャックだよ。ハロウィン寮で生徒会長をしているんだ、以後お見知りおきを」

ハロウィン寮の人間だと告げて彼女に怯えられることは折り込み済みだったが、意外にも彼女は自然体で自分も自己紹介をしてくれた。

「よろしくね。私はクリスマス寮のイヴって言います、あなたと同じ高等部の二年生だよ」

「ああ、さっき横にいた友人に聞いたよ」

そう聞くと彼女は訝しげな表情で何か言いたそうにしていていたが、その言葉を待たず僕は単刀直入に告白する。

「君に一目惚れしたんだ。僕と付き合ってくれないかな?」

「・・・えっ」

しばらく固まってから、彼女の顔がみるみる紅く染まっていく。その様子が可愛らしくて、僕も今更ながら顔を染めた。

「ご、ごめんなさい。男の子に告白されたのなんて初めてで、どうしたらいいのか分からなくて・・・」

「そうなの?すごく美人だからそれは意外だな、きっと男はみんな恥ずかしくて君に告白できないんだよ」

「いやいや。仮にそうだとしても、真正面から告白されたのはこれが初めてだったから。恥ずかしくて、つい・・・」

そう言っている間も、彼女は赤らめた頬を両手で押さえている。つくづく可愛い子だなと僕はさらに惚れ直す。

「えっと、友達から始めるっていうのじゃダメかな?告白はすごく嬉しいんだけど、まずはあなたのことをたくさん知りたいから」

「もちろんいいよ。それじゃあ、僕は移動教室があるから。また話そう」

そう言って、僕は彼女に手を振りながら颯爽と去って行く。そして早足で教室に向かっている間も、胸の高鳴りは収まってくれない。

彼女が寮のどの部屋に住んでいるかとか、校内のどこによく顔を出しているかとか、特に聞いた訳ではない。

しかし、絶対またどこかで会える予感がしていた。

その後絶対間に合うはずだと向かった移動教室に若干遅れてしまって先生にこっぴどく叱られることになるのは、もう少し後の話だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ