プロローグ 教室が消えた日から
――これは現実に潜む、非現実の物語。
日常のすぐ隣に、“それ”は存在していた。
スマホをいじる通学路。
退屈な授業、誰かの笑い声、ため息混じりの昼休み。
いつも通りの放課後。
けれど、ほんの一歩踏み出すだけで、現実は音もなく“ズレ”を見せ始める。
誰かが嘘をついたとき。
誰かが泣いたとき。
誰かが、誰かを「見なかった」ことにしたとき。
その歪みに、目を向ける者たちがいる。
それは、ただの部活――のはずだった。
* * *
部室に残された1冊のノート。
ページをめくると、整った文字が並ぶ。
「現実ダンジョン部 活動記録」
「現在、第三十八層を踏破」
「観測型:精神干渉領域に突入」
――これは、本当に部活動の記録なのか?
その中には、次元の歪みに潜む“影”との交戦記録。
「共感リンク」「適性者」「記憶領域」といった、常識では理解できない語句。
そして、名前。
「神崎美紅」
「樋口颯」
「中谷彰」
どれも、今はもう廃部になった“ダンジョン部”の部員たちの名前だった。
だが、記録は止まっていない。
いや、むしろ加速している。
現実は静かに、確実に、異変に蝕まれていた。
そして彼らは再び――“その扉”の前に立つ。