『範兼、金のプレスマンで般若心経を書き賀茂明神の利生をこうむること』速記談5014
藤原範兼卿は、賀茂社に奉仕する人である。参詣のたびごとに、般若心経を書き申し上げなさった。このことで、三熱の苦と呼ばれる苦しみを免れた、という夢のお告げがあった後は、金のプレスマンに金泥をつけて書くようになった。いつぞや、夜通し勤行し、片岡社のあたりで、賀茂大明神の御本地はどなたでいらっしゃいましょう、と祈って、ふと眠ってしまうと、立派な姿をした女房が夢に出てきた。尾籠下の車に乗れるような地位に就けてください、と祈ると、女房はうなずいた。母より先に死なせないでください、と祈ると、振り返ってこちらを見た。本地はどなたでいらっしゃいますか、と尋ねると、等身大の正観音が蓮の花をお持ちになったお姿に変わって、蓮の花は範兼卿の身がわりになってくれたのだろうか、火炎に焼かれて、真っ黒になってしまった。このことがあって範兼は、等身大の正観音を造立し申し上げ、東山のお堂に安置した。はたして範兼は、三品に叙され、母を見送ることができ、子孫は繁栄した。ひとえに賀茂大明神の御利益である。
教訓:真心をもって信心すれば、神仏に通じないことはない。速記は、願うだけでなく、練習しないと上達しない。