第4話: 俺のアホな息子、秀宗よぉ…… ちょっとは努力せぇや!!!! 自分のことばっか考えて、どうすんねん!!!
娘に失望した道盛――
果たして息子に希望を見出すことはできるのか?
乞うご期待、秀宗が華麗に罠へと堕ちていく姿を!〜!
「秀元殿っ!お、お願いや!わたくしの提案、
ちょっとでええから考えてくれへんかっ!頼むわっ!」
……ん? なんや……?
今、聞こえたんって……ワイの息子の声やんな?
まさか……ワイ、なんかの能力に目覚めたんか?
ちょっと待て、このタイミングで新能力開花ってどういうことやねん……
いやいや! もしかして、息子がワイに……サプライズくれる流れ!?
神さん、ついにワイにもご褒美くれるんか!?
息子よ……! 頑張ってくれやああああ!!!
「ん〜〜、秀宗殿。わい的には悪ぅない思てんねんけどな……
ただな〜……ちぃと気ぃなるとこもあるんだっちゃ。」
なんでやろな……目ぇ閉じてんのに、まるで映像が“見える”みたいに……
息子と他の二人が話してる様子が、目の前に浮かんどるねん。
てか……なんの提案したんや?
この能力、巻き戻し機能とかないんかいな?
なんか肝心なとこ見逃した気ぃすんねんけど!
まさか……ワイのこと、世界で一番愛されるべきパッパを売り飛ばすような話ちゃうやろな……!?
「お前がええ思うんは勝手やけどな、おらにはまっっったく良くないがいや……
ほんで、加賀のこと、最初っから相手にする気なかったがけ?」
(はぁ〜……なんでおらがこんな役回りせなあかんがいや……
よりにもよって、よりにもよって、相手が秀元の野郎とか、ホンマやっとれんちゃ……)
……前田秀喜の顔、めっちゃ引きつっとるやん。
まさか……ここまで全部、芝居ってことかいな……?
「うん〜! もちろん、そんなことありましぇ〜ん♡」
(ひーちゃん、そんな目で見んといてや〜。台本通りにやってるだけやし〜〜)
……って、おい!!
この“新能力”って、結局なんなん!?
一幕見終わったら、次の幕に続くって……
いや、雑すぎるやろ!?
せめて前回のあらすじとか出してくれや!
ストーリーの概要すら分からんで、どう感情移入せぇっちゅうねん!!!
「……あんたなぁ。正直に言わしてもらうけど、わたくしな、昔っからあんたのやり方、どこか引っかかっとったがいや。
加賀のことやって、今まで一度でも真面目に考えたこと、あるがけ?
関東分社の件やってな、みんなで相談して決めるって話やったやろ。
それをなんで、ひとりで勝手に進めとるんか……教えてもらえんか?」
画面見とったらなぁ……前田の顔、だいぶ渋〜い顔しとってな、伊達の方ジロッと睨んどったんや。
せやけど伊達は、相変わらずヘラヘラ笑ろうて前田の方見とるだけで、ちーっとも動じとらへん。
「やだな〜、でも秀宗殿の案、な〜んやかんやで、ようできとったやん?
んでさ〜、前に秀昭はんの娘さんからも話あったけど……
あれはちょいと、うーん、ビミョーやったんよな〜」
俺が見とる中で、伊達がそう言うてからチラッと前田の顔見て、次にうちの息子をじ〜っと睨みよったんや。
息子の顔……ショックと不満でぐちゃぐちゃになっとったわ。
(ふふ〜ん、やっぱ釣れる思たんよな〜。ひっかかってくれてありがとナス♡)
(なんやて……!? あのアホ妹、まさか裏でこんな仕掛けしてたんか!?
俺が気ぃ抜いとる間に、東北分社と勝手に話つけとったんかいな!?
あかん、確認せな……いったい何の話や……?)
ちょ、ちょっと待ってや息子ぉぉぉ!!
ちゃうやろ!! なんでそんな簡単に信じてまうねん!!
よりによって、妹よりあの二人を信じるって、どないなっとんねん!?
ワイが転生する前の、足利秀昭ぉ!! お前ほんま、どんなクソ教育しとってん!!?
子供らはワイのこと、ただのATMみたいに扱うし……
兄妹は裏で探り合って、まるで敵同士やがいや……
なんでや!? なんでこうなってしもうたんや……!?
ワイかてなぁ……本気でツッコミたくて言うとるわけやないんや……せやけど!!
なんやこの地獄みたいな家庭教育!? 誰のせいやねん!? あ、ワイか!? クソッ!!!
「秀元殿……妹がそちらに“何か”ご提案申し上げた……と仰いましたな?
……おかしいですなぁ、それ、わたくしにはまっっったく話通っとらんのですけど?」
ワイが見とるとやな、うちのアホ息子、顔に不満ダダ漏れやのに、
なんとか笑顔作って、伊達に「ご丁寧」っぽく問いかけとるんや……。
けどな、あの伊達の奴、そんなのとっくに見透かしとるわ。
考え込むフリだけして、返事する気ゼロやがいや……完全に釣っとる。
案の定、息子の表情がだんだん焦ってきよった……!
おい!! それ“わざと”揺さぶってきとるだけやで!?
なんで気づかんのや!? もっと落ち着けやアホ息子ぉぉぉ!!
「何を提案されたんや……? 秀元……
あの女、お前に何て言うとったんや……
おらにはな、先に“関東分社の株、もっと持ってくれへんか”っちゅうて話きとったがいや。
はぁ……取締役の座まで狙っとったっちゅう話やぞ……」
(……ふん、そんな話、あるわけないっちゅうにな……)
ちょ、前田ァァァ!?
なんやその心の声!! ダダ漏れにも程があるやろがいッ!!
お前ら前田家、どないなっとんねんホンマ!?
表向きは正義感ブチかましとるくせに、
中身はド下品なコントかいな!?
「おおん?
せやけどな、あの娘……うちにはこう言うとったんやで。
秀德殿っちゅう人は、秀昭のやっとった内側のやり方を、そのまんま継いでまおうとしてはる”っちゅうてな〜。
ほんで、それがどうにも気に食わんのやと。
せやさかい、本社さんと手ぇ組んどきたい、いう話やったんよ、べさ。
ほやけどなぁ……秀宗殿と秀德殿が、もしかしたらゴネるかもしれへんやろ?
せやから株式ようけ刷るときに、ウチが保証人になっとってくれへんか?っちゅうて頼まれたんやわ、すけよ。
金の流れもな、ちょっとでもスムーズにしたいんやてさ。
ほんで、うちのことも、できたら取締役に入れといてくれまへんか?……っちゅう話まで出てきたんやわ〜、べな。
んん〜? 秀宗殿……なんや、顔色わるぅなってへんか?
だいじょぶけ? 話、ちょっとキツかったんちゃうか? なぁ?
ほなら……この続きはまた今度にしとこか〜?
焦る話やないしなぁ、ふふ……それもまた、一興やな、だっちゃ♡」
「秀元殿……これ、どないなっとるんですかいな!?
なんでまた資金繰りを増やさなアカンのです?
私、今まで関東分社の金回りに問題あるやなんて、ひと言も聞いたことあらしまへんけど!?
父はんかて、そんなヘマ残すはずないですやろ!!?」
(おぉ〜? たかがこんくらいのことで動揺すっかよ?
まぁ、これ全部ウソだっちゃけどな〜、へへっ☆
にしてもやな、この家族……ちょろっと突いたら、す〜ぐバチバチすっぺなぁ。
いやはや、関東分社の件、案外ちょろいかもしれんちゃ〜。
……ほんま、秀昭さえおらんかったら……な)
息子ォォ……そのツラ、もうちょい落ち着かんかいッ!!
見てみぃ、完全にナメられとるやないかいコレ!!
なんでそんなテンパっとんねんアホンダラァァ!!
てか、さっきあのメスザルが言うとったうちの息子の評価……あれ、マジやったんかい!?
もうちょいなぁ、パパのことも考えてくれてもええやろぉ!?
親孝行とか、そういう発想はないんかいワレェ!?んん!?
「その件でございますなぁ……
秀宗殿、あんた……ご存じなかったがですかいね?
あんたの妹さん、すでに取締役の何人かと話つけとって……
新社長の座を狙っておられるっちゅう話、耳に入ってきとるがいや。
しかも、秀德殿とも何やら水面下で話、しとったらしいですなぁ。
――それで、わたくしは……」
(まぁ、あの女が取締役と連絡済みっちゅうんはホンマやけどな……
他の話は、こっちの好きにでっち上げられるがいや……。
あのアホンダラ、秀昭のやつ、長年おれの足ばっか引っ張りおってからに……っ!
加賀の懐ん中にあるもんまで、関東分社が締め上げとるっちゅうのに……
……ふん、計画どおり、進めるだけやちゃ……)
ワイから見たらやな、前田秀喜っちゅう男、どこか残念そうな顔つくって、しれっと伊達秀元に視線送っとったんや。
んで、伊達のヤツは指先見ながら、パチンッて軽〜く指鳴らしよってからに……
なんやその態度はぁぁ!? 舐めとんのかコラァ!!!
息子よ!ええ加減、目ェ覚ませ言うとるやろがい!!
どう見てもその二人、グルやっちゅうねん!!! 完全にお前、ハメられとるやんけ!!
せめてその視線のやり取りぐらい、気ぃつかんかいボケェ!!!
(……俺のアホ妹と秀德、ワイに隠れてこんなもん仕組んどったんか……!?
はぁ!? マジでやりよったんか……!?
これって……ワイの相続権、ぶんどる気か……?
いや、まさか思てたけど……ワイを会社から追い出すつもりちゃうんか……?
株増やされたら、ワイの持ち株ますます薄なる……
今やって三人の中で一番持ってへんの、ワイやろがい……。
このままやったら、完全に口出されへん立場にされてまう……。
……これ、ワイを狙い撃ちしてやがるな……!?
……ええわ……上等やないか。
覚えとけや……
ワイのもんにならんのやったら——灰にしてでも誰にも渡さへんど!!!)
……おい息子!!!
何勝手に一人で被害妄想爆走しとんねん!!!!
「俺のもんにならんのやったら誰にも渡さん」やと!? お前は昼ドラのヒロインか!!!!
ええから落ち着け!!! なぁ? ちょっとでええから、パパのことも思い出してくれや……!!!
「……秀元殿、秀喜殿……。
私もな、関東分社には何かしら変化が要るんちゃうか思てましてん。
せやさかい……お二人から、新しい社長候補をご推薦いただけまへんやろか?」
(くたばれ、秀德!
ついでにワイのアホな妹もや!! 一緒に沈めや!
……ワイのもんにならへんのやったら、他のヤツにくれてやっても別にええわ……せやけどな……お前らには――一銭たりとも渡す気は、あらへんで……)
………
こらあああああああああああああ!!!!
息子おおおおおおおお!!!!
何を考えとんねん!!!!
お前、ほんまにあのメスザルの言うとった通りやないか!!!!
ちょっとは冷静になられへんのか!!!!
うわあああ、俺の贅沢な生活が終わってまうううう!!!!
返金申請とかクレーム対応とか、使える制度どこにも無いんか!?
こんな転生サービスあるかいな!!
「え……ホンマけ?
せやけど、それはちょっと……うちらが口出すわけにもいかんやろ。
関東分社のことはな、やっぱ現場の人間が……
うまいこと動いてくれたほうが、ええ思うんやけどなぁ〜?」
ほぉ〜……伊達のやつ、ふいっと横向いて、廊下の窓の外なんぞ見とるやんけ。
前田のボンは言葉ひとつ発さんと、じ〜っと伊達に目ぇ向けとったわ……。
「構へまへん!
関東分社には、もっと開かれた経営方針が要ると思てます。
うちは、父みたいな轍は踏みたないんや。
資金繰りの問題かて、父の意思決定が一部の人間に偏りすぎたせいやろ。
結果として、妹を信じすぎてもうた。
けどな、その信頼を……妹が悪用して、不正なことしとった可能性が高い思てます。
そないなことなかったら、新株まで発行して資金集める必要、関東分社にはなかったはずや――」
「さっすが、秀昭殿のお子さんやなぁ……
よう切れるがいね。
いやぁ〜、筋の通った推測でございますなぁ。
細かいとこまでは分からんけども、新株の件、君のお妹さんと秀德殿の思惑が絡んどることだけは、まず間違いないがいや……。
せやさけどなぁ……
ほやけど、もしアンタのほうから──その……新しい社長の人選、わたくしらに頼みたいっちゅうこっちゃったら……ほれ、それはそれで、話は違うんやけどなぁ……」
――ほら見てみぃ、前田秀喜、メガネをクイッと押し上げて、ジッと秀宗のこと見とるがな。
で、うちのせっかち息子は言わんでも分かるっちゅう顔して、まるで「はよ答え出してくれや」言うてるみたいに、その視線、真正面から受け止めとったわ。
「あんさんがそう言うてくれはるんやったら、
私ら、どこまでも支えさしてもらいまっせ。」
「ええがいや。
今日の話なぁ、くれぐれも他言せんとってくれんけ?
秀德はんらに、絶対気ィつかれんようにせんなんがいや。バレたら終いやさかいな。
それでやな……新社長の人選については、後日うちらから連絡させてもらうさけ。
これはなぁ、極秘事項やちゃ。絶対に誰にも言うたらあかんがいや。ええけ?
君のこの提案、よう出来とるっちゃ。
せやさけどなぁ……
私らとしてはな、君のこと──新社長さんに、CEOとして推させてもらいたい思うとるがいやちゃ。
取締役会でもな、たぶんやけど……君を推す声、もう出とるはずながいやさかいな。
私らとしてもな、ちょっと……期待してまうがいやちゃ。」
(ま、新社長はんが認めるかどうかは……そりゃ別モンやさかいな。
取締役連中がどう出るかも、これまた分からんがいやちゃ。
ま、うちは別に、そない深う関わる気もあらへんけどなぁ……フフ)
「もちろんや……絶対に守らせてもらいます。」
「……ああ、うちのアホ息子が……
お前、ホンマ何やっとんねん!!!!
前田はんの言うこと、どう見ても兄妹仲ひっ裂こうとしとるやろがい!!!」
そんなモン真に受けたらアカンて、アカン!!!」
あ〜もう、転生しとんねやから、精神感応とか使えたらええのになぁ!?」
てか、なんでワイ、司会者みたいな立場におるんや……」
てか、この心の声が聞こえる機能、切り替えできへんのか……。
こんなアホ息子、もう見たないっちゅうねん!!!!
希望を持たせてくれや、頼むから!!!
せめて、次は別の誰かの様子が見たいんや!!!
……ん?
映像、変わった……?
ちょ、ちょっと待てや〜〜〜!!!!
これって俺のもう一人の息子……名前、確か秀德やったか……?
あいつの会談、どうなっとるんや……。
頼む、見せてくれ……。
こうして俺は、娘と息子のアホさを目の当たりにしたあと、
ほんの少しの希望を胸に、次の息子に期待をかけた。
今度こそ、ワシを裏切らへんやろ……?
ガチャも回せばSSR出るやろ……?
今回こそはええことあるはずや……?
せやろ……?
前回の更新からちょっと時間が空いちゃったみたいですね…(笑)
ここ数週間、なんだかんだでバタバタしてまして……。
今週こそは第5話を書き上げたいと思ってます!
よければ、これからも応援していただけると嬉しいです〜!