春だしカノジョ欲しいなあ~
今日はしろかえでの『少年の風景』です。
いや、別に冬でもいいんだけどさ!
クリスマスや年末年始
ラブラブイベント盛りだくさんだし。
でもさ!
オレはさ!
何にも無くてさ!
暇ぶっこいてるけど勉強する気ないし「同じキツイ思いするなら実入りが良い方!!」ってなわけで……クリスマスも年末年始も部活じゃなくバイトに勤しんでたわけ!
そんなこんなで年が明けてもバイト三昧の日々だったんだけど……
バイトが引けての帰り道
その日チーフやってたセンパイに
「お前、なにガツガツ働いてんの?!」
って聞かれたから
「女の子と仲良くなるにはある程度の軍資金が必要ですから」
と答えたら
「お前もその口か?! ま、オレも高1の時は“常連”だったからな……よし! 初めてがいい思い出になる様に、オレがとっておきを紹介してやろう!!」
と危うく拉致されそうになって、かろうじてセンパイの腕から逃れ、その場から脱兎のごとく走り去った
もう、いかがわし系の通りに差し掛かっていたのでホント危なかった!!
けれど次の日もセンパイと同じシフトで……ロッカールームへ行ったらセンパイが先に着替えてた。
超気まずかったけど「おはようございます!」って挨拶して、そそくさとロッカーの扉を開けたら、後ろからムンズと掴まれて「ギャッ!!」となった。
「この純潔! 何ならオレが貰ってやってもいいんだぜ!」って囁かれてオレ、マジで涙目になった。
だってセンパイは某ヤバ系の高校で……柔道部の主将なんだもん! この状態で寝技掛けられたら絶対逃げられない!!
「だらしねえなあ~縮こまりたまげた状態か? こんなんじゃオンナ抱けねえぞ!」
でも!!!!
掴まれたままこんな事を言われてガクブルしない“後輩”って居るのだろうか??!!
「っんと!カワイイヤツ! ま、その気になったら来な! オレ!バイだからよ!」
ブワハハハ!!って笑いながら出て行くセンパイの後ろ姿にオレはへたり込んだけど……
これもセクハラって言えるのだろうか??
色々怖いから申し出なんてできないけど……
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縮こまりたまげた状態から何日もリハビリを重ね、ようやく立ち直ったけど、オレはバイト先ではミニスカ女子みたく絶えず後ろを気にする所作となり……もういっそ!今のバイトを辞めちゃおうかと購買のカツサンドを齧りながらぼんやりと考えていると……
背中に何か気配を感じた。
つまり、オレは名うての殺し屋でも武芸家でも無いから易々と背後を取られた訳だが……
ふわっと“高嶺の花”の香りがした。そう、オレは鼻だけは良く利く!!
この香りは間違いない!!才色兼備の美人学級委員!!“高嶺の花子さん”たる滝川琴乃さんだ!!
なんて妄想の中で盛り上がっていると
「関口くん、大丈夫?」
と肩越しに覗かれてオレはドギマギする。
「えっと?!えっと?!何で??!!」
顔を近付けて来る琴乃さんの息遣いまで聞こえて来て、オレはビンビン……もとい!!カチコチ……そう!!あくまで!!『緊張で!!』だよ!! とにかく!! カチコチに固まってると……
「何だか具合悪そうだから……」とオレを見つめてくれる。
琴乃さんって!!やっぱり天使様??
こんなモブを見つめて下さってお声まで掛けいただけるなんて!!!
あ、心の中では琴乃さんって呼ぶ事をお許しください!!
あなたの苗字があの“悪魔的な”センパイとたまたま同じで……悪魔を思い出してしまって今は辛いのです……
「学級委員さんに気を遣わせてしまってスミマセン。バイトの事でちょっと有って……」
ついうっかり口を滑らすと明らかに琴乃さんの顔色が変わった。
「関口くん!まさか『オ・ガトウ・ド・ラ・キャスキャード』を辞めたりしないわよね」
「ええ??!! どうしてオレのバイト先を知ってるの??」
「それは……伯父の店だから……」
「えええええ???!!!」
「だからあなたの事は良く聞いてるのよ」
「でも、オレ、オーナーとは面接の時に会ったきりだよ」
「ええ、主に兄から……関口くんが私と同じ学校って聞いてあれこれと……」
「あれこれ!!??」
オレは目の前が真っ暗になった!!
この条件に合う人間って!!
“悪魔的な”センパイ以外あり得ない!!!!
あのセンパイと琴乃さんが兄妹だなんて!!!
そして“あれこれ”って???!!!
「私、去年は『伯父のお店でバイトするのはどうかな?』ってやらなかったんだ。でも今年のクリスマスシーズンはお手伝いに行きたくなってるんだけど……関口くんは迷惑?」
「えっ?! そんな事無いよ!! 絶対無い!!」
「だって兄とラブラブになれないでしょ?! あ、私!!絶対口外しないから!! 二人がイケナイ事してるのは……」
ガーン!!!!!!
ああ、オレの青春は!!!
高校生活は!!!!
今、この瞬間に終わりました!!!
もう、
オレは灰です……
いや、黒板消しにくっ付いているチョークの粉です。
どうか黒板消しクリーナーで吸い取ってやって下さい
きれいさっぱりと!!
完全に魂が抜けてしまったオレ……
は、
「ぷっ! くくく あははは」
って、
琴乃さんの可愛らしい笑い声で
我に返った。
こみ上げてくる笑いで目に涙を溜めた琴乃さんは、その涙を指で押さえながらオレに頭を下げた。
「ごめんなさい! 少しいじっちゃいました! 兄が『アイツいじると可愛いぞ!』って言ってたから……」
琴乃さんの言葉でドンドン熱くなるオレの頬を……琴乃さんはそっと触った。
その手のひらは、ひんやりが温かさへと熱を帯びて行く……
ふわっ!サラッ……
オレの手に肩に頬に、ふくよかな香りのサラサラ髪が触れた。
「でも!兄には!!……もう、いじらせないでね」
こう囁いた琴乃さんの頬は……美しく染まっていて
オレの目と鼻は
釘付けになった。
おしまい
黒姉の様に書こうと思ったらすっかり黒くなりました(^^;)
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