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第99話 雪華を元へ戻す手段

 それを実行するにはまず必要なものがあった。


「無未ちゃん、スキルサークレットを持ってきてくれないかっ?」

「ス、スキルサークレットを? けどどうして?」

「説明している時間は無いんだっ。できるだけ急いでっ」


 わずかに自我が残っているのか、雪華はまだ破壊行為を行っていない。

 しかしいつまでそれが続くか……。取り返しのつかない事態になる前に、雪華を元へ戻さなければならなかった。


「わかったっ! 急いで持ってくるからっ!」


 無未ちゃんがこの場を急いで去って行く。


「雪華っ! 必ず元へ戻してやるからがんばれっ!」

「グゥ……ガアアアアアっ!!!」


 縦横無尽に雪華は空を飛び回る。

 咆哮は心なしか苦しそうに聞こえた。


 それからすぐに、


「小太郎おにいちゃんっ! これっ! 買ってきたっ!]

[無未ちゃんっ!」


 こちらへ投げ渡されたスキルサークレットを受け取り、俺はそれを被る。


「グゥガアアアアアっ!!!」

「う、うまくいくかどうか……」


 魔法には相手の魔力を奪って自分の身体へ吸収するものがある。

 スキルサークレットを通じてその魔法を応用すれば……。


 俺は魔力吸収魔法の構成を脳内で変換し、スキルサークレットを通じて放つ。


「ガアアア……」


 身体の中になにかが流れ込んでくる感覚がある。


 魔粒子だ。

 雪華の身体から吸収したそれが俺の身体へ流れ込んでいた。


「いいぞっ! うまくいったっ!」


 魔粒子を吸収されて雪華の身体は少しずつ縮んでいく。


 それとともに、俺は自分の身体に異変を感じる。


「こ、れは……」


 雪華同様、魔粒子を吸収すれば自分も魔物になってしまう可能性は考えた。

 しかし違う。魔粒子を吸収することで、俺は自身の身体に想定していない効果を感じていた。


「魔粒子を吸収して力が増している……?」


 グレートチームでは大量の異形種を倒し、恐らくあのときも多くの魔粒子を身体に取り込んだ。力が増強したのは、もしかして魔粒子を身体に取り込んだことが原因だったのか?


「グウウ……ァァア……こ、小太郎……?」

「雪華っ!?」


 正気を取り戻したのか?

 雪華が俺の名を呼ぶ。


「な、なにをしておる……?」

「雪華が取り込んだ大量の魔粒子を俺の身体へ吸収しているんだ」

「ば、馬鹿者。そんなことをすれば今度はお前が……」

「俺は平気だ。お前はなにも心配しなくていい」


 ……やがて雪華の身体は元の通り人の姿へ戻り、翼を失い落下する。

 雪華の身体を抱き支えた俺は、そのまま手近な山の頂上へと着地した。


「平気か?」

「それはお前じゃ。身体はなんともないのかの?」

「ああ。むしろ前より具合がいいくらいだ」


 強い力を肉体に感じる。

 これは気のせいではない。明らかに俺の力は増大をしていた。


「どういうことじゃ?」

「よくわからないけど、魔粒子を身体に吸収したら力が増したみたい」

「わしと同じスキルを……いや、それならばわしと同じく身体は魔物化するはず……」

「魔物だったときの記憶があるのか?」

「微かにじゃがの。お前が必死に呼びかけてくれていたのは聞こえておった。しかし自分ではどうすることもできなかったのじゃ。すまなかったの」

「いや、もとに戻ってくれてよかったよ」


 もしももとへ戻らなかったら、この手にかけなければならなかったかもしれない。それを考えるとゾッとしてしまう。


「小太郎おにいちゃんっ」


 無未ちゃんがこちらへと降りて来る。


「無未ちゃん。ありがとう。無未ちゃんがスキルサークレットを持ってきてくれたおかげで雪華をもとに戻すことができたよ」

「うん。いろいろ聞きたいことあるけど、それはあとにして……その子になにか着せてあげたほうがいいよ」


 無未ちゃんが指を指した先では、巨大化の影響で服が破けてしまった全裸の雪華が、寒そうに俺を見上げていた。

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