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第97話 凶暴化する雪華

「ど、どうしたんだ? 雪華?」


 俺の問いかけに答えない。

 ただじっと俯き、動きを止めていた。


「声をかけても無駄だ。そいつはもう俺の指示しか聞かない化け物になった」

「な、なにを……うあっ!?」


 強烈な殺気を感じた俺は、咄嗟にうしろへ跳ぶ。

 目の前では、鋭い爪を伸ばした雪華の手が虚空を薙いでいた。


「雪華っ!?」

「グアアアアっ!!!」


 魔物のように咆哮を上げた雪華が俺へと襲い掛かってくる。


「なにが……一体っ?」


 強烈な敵意しか感じない。

 呼び掛けにも反応せず、ただ俺へと攻撃を繰り返してきた。


「ほう、親父には聞いていたが、本当にそこそこやるみたいだな。末松の家を逃げ出してからは探索者でもやっていたか?」

「そんなことはどうだっていいっ! 兄さんっ! 雪華になにをしたっ!」

「そいつは人間と魔物の遺伝子を組み合わせて作った化け物だ。その首輪はな、その化け物の中にある人間の遺伝子を抑えて魔物の遺伝子を活性化させる装置なんだよ」

「なんだと……っ」


 だから雪華はこんな魔物のような様子に……。


「だけどただ暴れられては困る。その首輪はこのスマホで化け物に命令して操作できるようにも作ってあるのさ」

「この……まるで雪華を道具のようにっ!」

「道具だよ。そいつは金儲けに使う道具さ。くははっ」


 高笑う忠次を睨みつつ、俺は雪華からの攻撃を避け続ける。


 なんとか元に戻さなければ。

 それにはあの首輪を壊す必要がある。


 壊すのは簡単だ。しかし強度がわからない。

 あまり強い攻撃を首輪に加えては雪華の首ごと破壊してしまうかもしれない。


 それが怖くて俺は攻撃を迷っていた。


「なんだ化け物? ぜんぜん攻撃が当たらないじゃないか? そんな奴も瞬殺できないんじゃ使い物にならないぞ。どうにかしろ」


 忠次がスマホに向かってそう言うと、雪華は動きを止める。そして、


「グゥゥゥ……アアアアアアアっ!!!」


 雪華が叫ぶ。


「な、なんだ……?」


 なにをしようとしているんだ?


 嫌な予感を頭へ浮かべていると、


「あれはっ」


 周囲に異形種と思われる魔物の姿が……。

 こちらへ来る、というよりも、吸い込まれるように雪華へ近づき、そして光となって雪華へ取り込まれていく。

 異形種は次から次へと現れ、雪華はそれを吸収した。


「うははっ! こいつこんなこともできるのに黙っていたのかっ! しかしこれならすぐに最強の化け物ができるぞっ! うははははっ!」


 忠次は楽しそうに笑う。


 反対に俺は嫌な予感が増していた。

 雪華が強化されることで自分の身が危うい、などではなく、雪華自身が危険なのではと危惧していた。


「グッ……ウウウ……」


 異形種を取り込むほど雪華の表情が歪む。


 このまま放って置けばとても悪いことが起こる。

 危惧はほぼ確信へと変わっていた。


「やめるんだ雪華っ! それ以上、異形種を取り込むのは危険だっ!」

「今さら恐れても遅いぞっ! さあ化け物っ! どんどん異形種を取り込んで最強の化け物になれっ! これで大儲けだっ! うはははっ!」

「このっ!」


 雪華を止めるには兄さんからあのスマホを奪い取らなければ。


 俺がそうしようとしたとき、


「ウウウ……」


 苦しそうに呻いて雪華が跪く。


「ゆ、雪華っ!」


 喫茶店でも苦しそうに跪いていた。

 もしかしてあのときからなにか身体に異変が……。


「グガアアアアアアっ!!!」


 雪華が咆哮を上げる。


「すごいぞっ! よーし化け物、取り込むのはもういいっ! 小太郎を殺せっ!」

「ガアアっ!」


 凶暴に目を光らせる雪華が俺へと襲い掛かって来た。

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