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第82話 迫る無未ちゃんに限界の小太郎

「な、ななな無未ちゃんっ、見えちゃうっ! 見えちゃうからっ!」


 すでにご立派な横おっぱいが晒されていて、それを目にしただけで俺はもう眼福でお礼を言いたいくらいなのに、この上、ご頂点様が目前に顕現されたら俺はたぶん平伏してしまう。


「見えちゃうって?」

「ご頂て……いやその、大事な部分が……」

「見たい?」

「えっ?」


 見たい。もっと言えば吸いたい。


 なんかもう身体が熱くて熱くて溜まらず、心臓がドキドキと高鳴ってものすごく興奮してしかたがなかった。


「見たいなら……見せてあげてもいいよ」

「い、いやそのあのあのあの……」


 ズイと迫ってくる無未ちゃん。

 紐という束縛を失った小さなエプロンは存在の意味をほとんど無くし、ご頂点様をぎりぎりで隠すだけの単なる前掛けとなっていた。


「けど見せてあげる代わりにね、わたしほしいものがあるの」

「ほ、ほしいもの?」

「うん。なんだと思う?」


 なんだろう?


 俺よりずっと金持ちの無未ちゃんがほしいものなど想像がつかない。


「ヒント。小太郎おにいちゃんしか持ってないもの」

「俺しか持っていないもの……」


 ますますわからない。


「教えてほしい?」

「ま、まあ……うん」


 そう答えると、不意に無未ちゃんの手が俺の下半身に伸びる。


「小太郎おにいちゃんの童貞」

「ちょっ……そ、それはちょっと……」

「ダメ。今日はそのために小太郎おにいちゃんを家に呼んだんだから」

「そ、そのためにって……はっ!」


 俺の脳裏に今日出てきた料理が浮かぶ。


 すっぽん鍋。

 牡蠣フライ。

 ウナギのかば焼き。

 とろろご飯。

 にんにくがたくさん入ったから揚げ。


 すべて精力のつく料理ばかりではないか。

 そして食後に迫る無未ちゃん……。


「も、もしかして食後のデザートって……」

「わたしだよ」


 メロンは大当たりだった。

 しかも特大が2つも。


「水もわざとこぼしたとか……?」

「ふふ、裸エプロンのわたしを見せて小太郎おにいちゃんを興奮させたみたいに、わたしも小太郎おにいちゃんの裸を見て興奮したかったの。そうしたほうが本番で盛り上がるかなって」

「なるほど。って、いやいやいや待って待ってっ」

「ダメ、待たない」


 迫る無未ちゃんから身を引く俺の身体を黒い手が掴む。


「わわわ……っ」


 そのまま俺は食堂を連れ出され、別の部屋へと入る。

 そこにある大きなベッドに寝かされると、すぐさま俺の身体に無未ちゃんが抱きついてきた。


「な、ななな無未ちゃん……っ。おあ……っ」


 女の子の柔い身体に抱かれ、特大のおっぱいを押し付けられた俺はいろいろ固くしてしまう。


 こ、これはもう限界だっ!


 頭の中で般若心経を唱えたり、強面社長の顔を想像して必死に耐えるも、おっぱいとか良い匂いが俺を誘惑して思考がすべてピンク色になっていた。


「わたしも大事なものを小太郎おにいちゃんにあげるね」

「えっ? だ、大事なものって……もしかして」

「やさしくもらってね」


 耳元で言われたその言葉は、俺の身体を心地良さで震わす。


「あ、でも本番前には前戯とか必要だよね。どうしようかな? 小太郎おにいちゃんはどうしたい? 挟む?」

「挟むっ!?」


 どこでなにをっ?


 魅惑的な提案に心が躍るも、しかしそれを素直に受け入れてしまうことには躊躇いがあった。


「お、俺はその、心の準備がまだ……。それに俺たちって恋人同士でも無いのに、こんなことするのは……」

「じゃあ今から恋人同士でいいんじゃない?」

「そんな簡単に決めていいものじゃない気がするしその……」

「小太郎おにいちゃんはわたしのこと嫌いなの」

「嫌いなわけないよ。俺は無未ちゃんのことが大好き……大好きだけど」


 それには違いない。

 俺は無未ちゃんのことが好きだ。好きにならない理由が無い。


「他にも好きな女の人がいるんだね?」

「いやあのそれはその……」

「わかってる。小太郎おにいちゃんがあの子のことも好きなこと」


 無未ちゃんの言うあの子が誰なのかはすぐにわかった。


「小太郎おにいちゃんの中にあの子がいるから、わたしがこんなに迫っても抱いてくれない。そうなんでしょ?」

「う……」


 そうだ。

 無未ちゃんに迫られると、アカネちゃんのことを考えてしまう。こんな俺を好きだと言ってくれるアカネちゃんの気持ちを考えると、無未ちゃんの気持ちをすんなりと受け入れることができない。なにより、俺はアカネちゃんのことも……。


「あの子よりもわたしのほうが小太郎おにいちゃんのことを愛してるよ。これは自信を持って言える。それでもわたしを選んでくれないの?」

「……ごめん。無未ちゃんのことは大好きだけど、今すぐに答えを出して気持ちを受け入れることはできない。本当にごめん」


 アカネちゃんも無未ちゃんも、俺にはもったいないほどに素敵な女性だ。その2人が俺のことを好きだと言ってくれて、すごく積極的に気持ちを伝えてくれる。それを受け入れずに言い訳して逃げ回る自分を俺はひどくみっともないと思うし、男として恥ずかしい。2人にも申し訳ないことをしている自覚もある。

 だけどどちらかの気持ちを受け入れれば、どちらかをひどく悲しませることになってしまう。そうなってしまうことが俺は怖く、2人に申し訳ないと思いつつも、みっともなく逃げ回るしかなかった。


「けどいつかはちゃんと答えを出すから」


 俺なんかがこんな素敵な女性のどちらかを選び、どちらかを悲しませてしまうなんて、おこがましいにもほどがあるのはわかっている。しかし気持ちを伝えられたのにずっとこのままというわけにはいかない。いずれかを悲しませる覚悟を、いつかは持つつもりでいた。


「嫌だ……」

「えっ?」

「ダメ。小太郎おにいちゃんがわたし以外の誰かと愛し合う可能性があるなんて絶対にダメ。小太郎おにいちゃんと愛し合っていいのはわたしだけなんだから。わたしだけ……ううっ……」

「無未ちゃん……」


 泣いている無未ちゃんの身体をやさしく抱く。


 愛しているのは君だけだよ。

 そう言ってあげられたら、きっと無未ちゃんは泣き止んで笑顔を見せてくれる。しかし俺にはそれができない。


 最低だな。俺って。


 こんなに素晴らしい女性を悲しませてしまっている。それなのになにも言ってやれない。どうすることもできず、ただ背中を撫でてあげることしかできなかった。

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