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第76話 肉食ママと娘

「んー? リビングにいるのは……紅葉かなー?」


 女性の声が足音とともにリビングへ入って来る。


「あ、ママ」

「ママっ!?」


 俺は慌ててアカネちゃんから離れようとするも、抱き締めは弱まることなく、離してはくれなかった。


「ああ、アカネだったんだ。そちらは……誰さん?」


 アカネちゃんママの声がすごく近くに聞こえる。

 しかし俺はきょっぱいに抱かれていてなにも見えなかった。


「あ、あのあのあのっ! こ、これはですねその……」


 この状況を見られて動揺する俺。

 もう弁明のしようも無い。警察呼ばれるかもとビビる。


「この人はパパの会社に勤務してる末松小太郎さんで、白面の中の人」

「ああっ」


 パンと手を叩く音が聞こえた。


「あなたが白面さんね。アカネの母のかえでです。いつも娘がお世話になっております」

「あ、い、いえその、だ、旦那さんには大変お世話になっておりまして、娘さんとも仲良くさせていただいて……あ、いえ、仲良くとはあのその、こ、こういうことではなくてですね……」


 アカネちゃんの胸に顔を挟まれながら、俺はアカネちゃんママの楓さんにあいさつを返す。


 いやなんだこの状況?


 客観的に見ておかしな自分の状態に俺はかなり戸惑っていた。


「あ、もしかしてママは邪魔だった?」

「ううん。これから部屋に行くから大丈夫だよ」

「ああそう。夕飯までには済ませなさいね」

「それはコタローしだいかなぁ」


 す、済ませなさいねって、なにをっ?

 このお母さんは一体なにを言っているんだっ?


「ふふ、思い出すなぁ。ママもね。このおっぱいでパパをゲットしたんだよ。あの人も本当に大きいおっぱいが好きでね」


 社長もきょっぱいが好きなのか。

 あんな強面なのにアカネちゃんママのおっぱいに抱かれて喜んでるなんて意外だな。……いや、今はそんなことどうでもいいか。


「へーそうなんだ。パパもねぇ」

「そうなの。巨乳好きは権力者とかお金持ちになるんだよ。ママのひいおばあちゃんもおばあちゃんもお母さんもみんな巨乳で、お金持ちとか権力者の男性をゲットしてるの。小太郎さんもきっとお金持ちか権力者になるよ」

「い、いやそんなことは……うぷっ」

「そういう理由でコタローのことが好きなわけじゃないの。わたしは純粋に、コタローが好きなだけなんだから」

「あら、ママだってお金だけが目的でパパのこと好きなわけじゃないよ。あんなに怖い顔なのにママのおっぱいに甘えるかわいいところとか大好きだし」


 あの顔でおっぱいに甘えるとか、想像できないのだが。


「それにしてもアカネもママに似ておじさん好きねぇ。まあ、甘えてくるおじさんってかわいいからね」

「おじさんだから好きなわけじゃないの。好きな人がたまたまおじさんだっただけなんだから」

「でもおじさんが好みでしょ?」

「もーっ、そんなことどうでもいいのっ。わたしが好きなのはこれから先もずっとコタローだけなんだからね。わたしの好みはコタローなの」

「ア、アカネちゃん……」


 非の打ちどころが無いほどの美少女で巨乳のアカネちゃんから、これほど好きになってもらえるとは……。自分が冴えないおじさんで申し訳なくなる。


「さ、行くよコタロー。大人にしてあげる」

「い、いいいいや、ちょ、そんな、お母さんもいることだしねその……」

「あらいいんですよ。私も高校生のときに主人を自分の部屋に連れ込んで……うふふ、アカネができたんですから」


 とんでもないこと言ってるぞこの人。

 て言うか、女子高生を孕ましてたのかあのスケベ社長。


「へー。パパってコタローに似てるね」


 失敬な。俺は女子高生を孕ませてしまうようなふしだらな男ではない。


 しかしこんな話を聞けば、アカネちゃんも思い直してくれるかな?

 妊娠なんてまだしたくないだろうし。


「うーん……まだ妊娠はしたくないかも」


 うん。それはそうだろう。


 なんとか淫行スケベ野郎にはならずに済み……


「ま、したらしたで別にいいか。もう我慢できないし」


 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。


 肉食っ! 肉食系女子だこの子っ!


 肉食動物にターゲットされた草食動物の気分で俺は身を震わす。


「あら、じゃあママが持ってるゴム使う? いっぱいあるからあげるよ」


 娘になんてこと言ってるんだこのババアっ! 自分が持ってるコンドームを娘にあげるとか有り得ないだろっ!


「うん。じゃあちょうだい。でも初めては生がいいな。ゴムは2回目以降かな」

「ママもパパと初めてしたときはそう思ってたんだけど、結局、2回目以降も生でしたの。盛り上がっちゃうと後先とかどうでもよくなっちゃうからねー。アカネも気を付けてね」」

「わかった」


 これ親子の会話か?


 肉食な友人同士の会話にしか聞こえなかった。


「あー2人を見てたらママもパパを犯したくなってきちゃった。はあはあ、もうダメ我慢できない。今からパパの会社に行ってくるから夕飯は適当に食べてっ。ゴムはパパとママの寝室にあるから好きなだけ持って行ってーっ!」


 荒い呼吸とともにリビングから駆け出す音が耳に響く。


「ママったらいつもああなんだから」

「えっ? い、いつもっ!?」

「うん。ママがああなっちゃうと、その日はパパ仕事ができなくなっちゃうんだよね。全部、吸い取られてげっそりしちゃうから」


 と、とんでもない肉食ママだ。


 まるで異世界にいたサキュバスのよう。

 いや、もしかしたらサキュバスより肉食度は高いかもしれない。


「わたしは大丈夫だよ。ママほどじゃないと思うから、ほら行くよ」

「まままま、待って待ってお願いっ!」


 このままでは冗談じゃなく犯される。搾り取られる。

 女子高生とそんなことになるのはまずいっ。


 アカネちゃんママの登場で興奮が少し冷めた俺の頭は冷静さを取り戻していた。


「もう待てないんだけど?」

「お願いだからっ」

「しょうがないな」


 ようやく抱き締めから解放された俺はイスへと座り直す。


「ア、アカネちゃん、冷静になろう。まずは冷静になるんだ」

「別に慌てたりとかはしてないけど」


 事実、アカネちゃんの表情は冷静そのものだった。


「あのね、アカネちゃんはまだ16歳の女子高生なんだから、エッチなこととかまだ早いの。わかるでしょ?」

「まあ妊娠はさすがにまずいよね。それはわかるよ。だから外に出してね」

「いや、そういうことじゃなくてね……」


 一体なんと言えば納得してくれるのか? 俺は頭を回転させて悩んだ。


「コタローはわたしとするの嫌なの?」

「嫌じゃないよ。ただやっぱりアカネちゃんは高校生だから、うしろめたいと言うかなんというか……」


 正直に言えばそれだけではないのだが……。


「……わかった。今日のところは我慢してあげる」

「そ、そう?」


 諦めてくれたようでホッとする。しかし残念という気持ちもどこかにあった。


「うん。やっぱりお互いにしたいって思うときにしたいし、コタローがまだしたくないって言うなら、わたしも我慢する」

「そ、そっか」


 こういう会話って普通は男女逆じゃないかなぁ。


 そんなことを考えつつ、とりあえずはこれでよかったと俺は胸を撫で下ろす。


「でもコタローがしてもいいと思うまで我慢できるかわからないからね。我慢の限界がきたらそのときは覚悟してね」

「わ、わかりました」


 獰猛な肉食獣に睨まれた草食動物な俺は頭を下げて了解する。


 しかしとんでもない肉食親子だった。

 辟易しつつも、そんな2人のやり取りを聞いていた俺は自分にも家族がいることを思い出す。


 父さんと兄さんは元気だろうか?


 こちらへ戻って来てからまだ一度も会っていない。

 突然、行方不明になって、今さらどんな顔をして会えばいいかわからないが、このままずっと顔を合わせないわけにもいかないだろう。


 折りを見て実家へ行ってみるか。


 いつになるかまだわからないが、いずれ必ず実家には帰ろうと思った。


 ……それから俺は、仕事があるからと帰ることに。


「あ、コタローちょっと待ってて」


 玄関へ行こうとする俺を待たせ、アカネちゃんは階段を上っていく。

 しばらくして、小さな箱を持って降りて来た。


「それは?」

「プレゼント」


 と、その小さな箱を渡される。


「わたしを守るためにコタツ君を預けてくれたお返し」

「お返しだなんて。俺はアカネちゃんを守りたいだけで、お礼なんて別に……」

「いいから。小太郎のために用意したんだからもらわなきゃダメ。ほら開けてみてよ」

「う、うん」


 言われて俺は箱を開く。


「あっ」


 中にはネクタイピン……と、なんだろう? 四角い機械が入っていた。


「こっちはネクタイピンだけど、これはなに?」

「記録メディア」

「記録メディア? それとなんでネクタイピン?」

「そのネクタイピン、よーく見て」

「よーく……」


 ……なんの変哲も無い普通のネクタイピンだが。


「ふふん、気付かない? それって超小型のビデオカメラなの」

「ええっ! これがっ!?」


 どこにカメラのレンズがあるのかまったくわからない。


「この側面にある小さな出っ張りを押すと録画が始まって、こっちの記録メディアに映像が無線で記録されるの。すごいでしょ?」

「すごいけど、なんで俺にこれを?」

「会社でパワハラにあったときとか、これで録画しておけば自分を守れるでしょ? あと女王様にセクハラされたときとかねっ!」


 最後の一言はものすごく力が入っていた。


「そ、そっか。けどパワハラって、お父さんの会社だよ?」

「前は受けてたんでしょ? だから心配なの」

「うん……」


 小田原がいなくなってからはむしろ周りから親切にされるようになったが。


「もしもパワハラを受けたら気にせず会社を訴えなさい。わたしにとってはパパの会社よりコタローのほうが大事なんだからね」

「ア、アカネちゃん……」


 受け取ったネクタイピンをさっそく付ける。


 小田原がいなくなった今、パワハラなんて無いと思うが、アカネちゃんからのプレゼントだし、これからはこのネクタイピンを常時、使わせてもらおう。


「ほらじゃあ行ってらっしゃい。がんばってね」

「うん」


 俺はアカネちゃんに手を振り、玄関を出て会社へ向かう。


 ……なお、社長は奥さんによって会議中に連れ去られたとのことで、翌日は出社をしなかった。

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