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第74話 アカネちゃんの家へお邪魔する

 車を運転してアカネちゃんの家……つまり社長の家へ向かう。


 きっと豪邸なんだろうなぁ、と思いつつ、やがて目的地へと到着した。


「うわー……」


 想像通りのでけー家。

 ここからあの強面の社長が出て来たら、間違い無くヤのつくお仕事の人だと思われるだろう。


 俺は運転席から降りて後部座席の扉を開く。


「さ、ご自宅に到着しましたよお嬢様」

「うん。ありがとう」


 と、笑顔でお礼を言ったアカネちゃんが車から降りる。


「じゃあ俺は帰るから……」

「ちょっと上がって行きなさい。ママに紹介してあげるから」

「えっ? い、いや、仕事を抜けて来てるからすぐに戻らないと……」


 仕事があるのも事実だが、紹介されてもどんな顔をしてアカネちゃんママに会えばいいのかわからない。同い年くらいの男子だったらならともかく、夫の会社で働いている男を娘から紹介されても困惑するだろうし。


「仕事ならわたしがパパに言っといてあげる。ここで待ってるから車はそこの車庫に入れて来て」

「いやでも……」

「早く」

「わかりました」


 有無を言わさぬ雰囲気に、俺は従うよりほかなかった。


 車庫に車を停めた俺は、アカネちゃんと玄関まで歩く。

 それから緊張しつつ、中へと入る。


「お、お邪魔します」


 小声で訪問のあいさつをする。


 大きい企業に営業へ行くときでもこんなに緊張することは無い。それほどに俺はアカネちゃんママと会うのにビビっていた。


 アカネちゃんのママってどんな人だろう?

 娘に近づく変態として通報されたりしないか怖かった。


「ママ―。あれ? いないのかなー? いたらいつも出てきてくれるのに」

「いないなら俺は帰ろうか?」

「たぶん買い物。すぐに帰ってくるよ」

「そ、そう」


 帰りたい。

 緊張で胃が痛くなってきたし……。


「お茶でも淹れてあげるからこっち来て座ってて」

「うん」


 やたら広いリビングに通され、俺はイスに座る。

 アカネちゃんがお茶を淹れに行ってしまったので、俺はひとりになって広いリビングを見回す。


 リビングだけで俺の住んでる部屋より広い。とはいえ、俺が異世界で住んでいた魔王城はもっと広い部屋がたくさんあったので、驚くというほどでもなかった。


「魔王城で住み始めたときは広すぎて迷ったなぁ」


 魔王城の人たちはみんな元気にしているだろうか?


「きゅー」

「お、コタツか」


 アカネちゃんヘ預けたコタツがリビングへ入って来たので頭を撫でてやる。


「ちゃんとアカネちゃんを守ってくれてるか?」

「きゅー」

「そうか。お前が一緒にいてくれれば俺も安心だよ」


 そうしてしばらくコタツと戯れていると、


「お姉、帰ったの?」


 声とともに女の子が部屋へ入ってくる。


 小柄でおっぱいの大きいかわいらしい女の子だ。なんとなくアカネちゃんに似ていると思った。


「えっ?」

「ん?」


 その子は俺と目が合い……。


「へ……変質者ーっ!!!」


 大声で叫ぶ。


「へ、変質者っ? ち、違う違うっ! 俺はアカネちゃんの……」

「お姉のストーカーっ!? ぎゃああああっ! うちにまで入って来るなんて信じられないっ! 今すぐ警察を呼んでやるんだからねっ!」

「ま、っまままっ!」


 スマホを手にしたその子を止めようと俺は慌てて立ち上がる。……と、


「あいたっ!?」


 その子の頭を誰かがうしろから叩く。


「うるさい紅葉もみじ。家の中で大きな声を出さないで」

「あ、お姉っ!」


 お茶を乗せたお盆を片手に持ったアカネちゃんが、その子の背後に立っていた。


「お姉大変だよっ! お姉を狙った変態ストーカーがあそこに……」

「あの人はわたしのお客さん」

「え……」


 きょとんするその子の前を通り、アカネちゃんは俺の前にお茶を置く。


「お、お客? そ、そんなおっさんがお姉とどういう関係なのさ?」

「それを聞く前にお客様にあいさつは? もう中学生なんだしそれくらいできるでしょ?」

「む……」


 アカネちゃんにそう言われた女の子は、恐る恐るといった感じでこちらへと歩いて来る。


「紅葉……」

「えっ? あ……紅葉ちゃん、ね。俺はお父さんの会社で働いている末松小太郎って言います。よろしく」

「パパの会社で働いてる人? なんでその人がお姉のお客さんなの?」

「えーっと、それは……」


 なんと言ったらいいか?


 答えに窮した。


「この人はあんたの好きな人だよ」

「は? なんで紅葉がこんな冴えないおっさんを好きなの? 有り得ないから」

「ははは……」


 冴えないおっさんですいません。


「この人が白面なんだけど?」

「え……」


 アカネちゃんがそう言った瞬間、紅葉ちゃんの目が俺へと釘付けとなる。


「こ、この人が……」

「ア、アカネちゃん……」

「いいの。パパがわたしをアカツキって知ってるなら、ママと妹に隠しておくこともないかなって話したから」

「あ、そう」


 まあ家族には話しておいたほうが活動もしやすいか。


「あなたが……白面さん、いえ、白面様……」

「えっ? 様?」


 見ると、紅葉ちゃんの目は最初に俺を見たときの軽蔑するような視線から一転して、キラキラと輝くような眼差しへと変わっていた。

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