第73話 アカネちゃんの通う学校へ行く
「はあ……」
次の日の月曜日、俺はアカネちゃんが通う学校へ来ていた。
乗り慣れない高級車をビクビクしながら運転しつつ、アカネちゃんの学校へ来たのには訳がある。
なんでも、アカネちゃんの送り迎えをしている車の運転手が急用で休みを取ったらしく、社長に頼まれてこうなっているのだ。
「俺にだって仕事があるんだけどなぁ」
勤め先の社長に頼まれたらしかたないが、勤務中に職場を抜けるのは同僚に悪い気がした。
もう授業は終わったのかな?
学校の駐車場に停めた車の外へ目をやると、下校する生徒たちの姿が見えた。
かなりの進学校らしく、見るからに優秀そうな子たちばかりだ。
「俺も異世界に召喚されなければこの子たちみたいに高校生活を……」
勉強はあんまりできなかったので、ここのような進学校に通うことは無理だったろう。しかし人生で一度だけの10代に、普通の高校生活を送れなかったことは残念に思っていた。
「アカネちゃん遅いな」
下校する生徒の姿もだいぶ少なくなった。
部活動はしていないらしいので、授業が終わればすぐに出てくるだろうとのことだけど……。
「まさか……」
アカネちゃんの身になにかあったのだろうか?
しかしなにかあれば光の玉が俺に知らせるはず。
危険な目に遭っていることは無いと思うも、やっぱり心配なので様子を見に行くことにした。
「えっと……こっちか」
光の玉の力が感じる方向へと歩く。
どうやら校舎内ではなく、外のほうにいるようだ。
学校に侵入した変質者だと思われたらどうしようと不安になりつつ、俺はやがて体育館へとやって来る。
「ここにアカネちゃんが?」
なにをしてるんだろうと思いつつ、光の玉を感じる方向へと歩く。
「お……」
体育館の裏へ差し掛かったとき、人の姿を遠目に見かけて俺は足を止める。
誰かが2人おり、こちらへ背を向けて立っているのがアカネちゃん。それに向かい合って男子生徒が立っていた。
男子生徒は遠目から見てもかなり容姿が整っており、背も俺より高い。たくましそうな身体つきからして運動部なんじゃないかと思った。
「な、なにをしてるんだろう?」
俺は物陰に隠れてことの成り行きを見守る。
「ど、どうしてっ!」
男子生徒が叫ぶ。
「自分で言うのもなんだけど、俺ってすごいモテるんだぜっ。それなのになんで俺と付き合うのが嫌なんだよっ?」
どうやら男子生徒はアカネちゃんに告白をしたようだ。
しかしあの様子だとどうやら断られたようだが。
「ええ。北林先輩はサッカー部のエースな上、高身長イケメンで勉強もできるので女子にモテモテですよね。知ってますよ」
淡々とした口調でアカネちゃんは言う。
「そ、それがわかっているならどうしてっ?」
「興味無いからです」
そう冷たく言い放たれ、諦めて立ち去るかと思いきや北林君はまだ動かない。
「他に好きな人がいるとか……?」
「そうだと言ったら諦めてくれますか?」
「ど、どんな人か聞けたら……」
アカネちゃんの好きな人はどんな人か?
ドキドキしながら俺は耳をそばだてる。
「うーん……わたしのおっぱいが大好きな人ですね」
「えっ?」
それを目の前で聞いた北林君は短く声をあげたのち、黙り込む。
「言ったんでいいですか? わたしもう行きますから」
「ちょ、ちょっと待ってっ。なんで俺よりそんな変態のスケベを……」
「変態のスケベでも、わたしのことを誰よりも大切に思ってくれるからです」
そうはっきり言い放ったアカネちゃんは、踵を返してこちらへと歩いて来る。その背後には唖然とした北林君がいた。
「あ」
「あ」
体育館の角に隠れていた俺と、歩いて来たアカネちゃんの目が合う。
「コタロー? なにしてるのこんなところで?」
「あ、えっと……いつもアカネちゃんを送り迎えしてる運転手さんが急用とかで休んだから、俺が代わりに迎えを頼まれて……」
「そ、じゃあ行こ」
「うふぁっ!?」
腕を引かれてぎゅっと巨乳へ挟まれる。
制服姿のアカネちゃんはいつもと違う魅力があり、こうしておっぱいに腕を挟まれたりすると、すごく興奮してしまう
「ア。アカネちゃん、ここじゃまずいよぉ」
いや、この場所だからというわけでもないが、ここは特にまずいだろう。他の学生や教師に見られたらなんと思われてしまうか……。
「わたしは気にしないから大丈夫。ほら行くよ」
しかしそんなことはお構いなしに、胸に挟んだ俺の腕をグイと引いてアカネちゃんは歩いて行く。
「あふん」
そのまま俺はふんわり夢心地で駐車場へと連れて行かれた。




