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第70話 法務大臣寺平重助の最期

 グレートチームが終了した日の夜。寺平重助は自宅の豪華なリビングで高級ウイスキーをワイングラスで呷りながら不愉快な心地に歯噛みしていた。


 まさかしくじるとは。


 思惑通りにいかなかったことは実に気分が悪い。


「無能な奴らめ」


 400人もいて失敗するとは呆れ果てる。


 魁千秋はなにをやっていた? 奴のスキルで白面を魅了したのではないのか?


 当の魁千秋もレイカーズも全員が死んだため、なにがどうして失敗したのか、はっきりしたことはわからない。


「女王にやられたか」


 想定外に白面とアカツキのチームに加わっていた漆黒の女王にやられたと考えるのが妥当だった。


「ふん。まあいい」


 大会自体は盛り上がったのでスポンサーを喜ばせる目的は達した。

 レイカーズに襲われたと白面がカメラにしゃべっていたが、連中と自分の繋がりは気取られないように手を尽くしているので問題の無いことだ。

 白面とアカツキは素性を調べて寝込みでも襲わせて始末すればいい。


 予定とは違うが、結果的に目的通りとなる。

 なにも問題は無いと、寺平重助はほくそ笑んだ。


 ……と、そのとき照明が消えて部屋が真っ暗となる。


「なんだ? 停電か?」


 暗くなってなにも見えない。


「誰かいないかっ! おいっ!」


 使用人を呼ぶも反応は無い。


「まったく……。ブレーカーはどこだ?」


 ブレーカーを探して歩き出す寺平重助。

 誰かの気配を室内に感じたのはそれからすぐのことだった。


「なんだ誰かいたのか。停電だ。ブレーカーを見て来い」

「……」


 しかしその誰かからの反応は無い。


「聞いているのか? ブレーカーを見て来いと言っている」

「……聞こえているよ」


 暗闇の中からその誰かが姿を現す。

 白い仮面を被った、見覚えのある男が……。


「き、貴様はっ!?」

「ご存じか? ふふ、法務大臣様に知られているとは俺も有名になったものだ」

「だ、誰かっ! 誰かいないのかっ!警察を呼べっ! 早くっ!」

「無駄だよ。使用人にはみんな眠ってもらった」


 冷たい声を零して白面は寺平へ近づく。


「や、やめろっ! こっちへ来るなっ! どうしてお前がここにっ!」

「息子さんに聞いたんだよ。あんたの家をね」

「み、光信に……?」


 あいつめ余計なことを。


 父親を売りやがってと寺平重助は息子への怒りを沸かせる。


「しかしあいつはまだ拘置所にいるはず……?」

「ああ、さっき拘置所で聞いて来たんだよ。精神疾患とかでもうすぐ出られる予定だったんだろ? そんなの待たせずに出してやったよ。この世から」


 この世から出した。

 それはつまりそういうことだろう。


「衆議院議員で法務大臣の寺平重助。あんた、ずいぶんと悪いことをしているそうじゃないか。まあ、俺は正義の味方じゃないからあんたがどんな悪事を働いたって興味は無い」

「な、なにを……」

「けどな、あんたは俺の大切な人に危害を加えようとした。俺の手で大切な人を殺させようとした。それは……許せないことだ」


 白面は手を伸ばして寺平重助の頭を掴む。


「ま、待てっ! 待ってくれっ! これはすべて小田原喜一郎という男が考えたことで、私は奴にそそのかされて手を貸しただけだっ! 殺すならあいつのほうを……」

「悪党らしい、往生際の悪さだ」

「ぐあああああああっ!!!」


 頭の中になにかが流れ込んでくる。


「日の出まで5時間くらいか。たった5時間だが、お前はのそのあいだ無限に近い苦しみを感じることになる。人間では想像できないような苦痛を何度も繰り返し、そして最後は頭に送り込んだ魔力がお前の全身を焼き尽くす」

「あががががが……」


 もうなにも聞こえない。

 脳内で起こる無限の苦しみに寺平重助は白目を剥き、声にならない声を吐いて身体を震わせていた。




 ……




 ……寺平重助が死んだ。


 昨日、衆議院議員で法務大臣の寺平重助が自宅で焼死体となって発見された。死体の周囲には火災の痕跡が無く、なにが原因で焼死したのかは不明。

 寺平重助が亡くなったとされる夜間、屋敷の使用人は全員が気を失っていたらしく、何者かが侵入して犯行を行ったのではという線で警察は捜査している。


 同日、寺平重助の息子である寺平光信が拘置所で絞殺死体となって発見された。


 その事実を知った小田原喜一郎は出社もせずに自宅で震えていた。


 次は自分だ。


 恐怖で眠ることもできなかった。


 殺られる前に殺らなければと白面アカツキの素性を調べさせるも、一向に知ることができない。


 こうしているあいだにも、白面が自分を殺しに向かっているかもしれない。


 家にいては殺される。

 しかし外へ出たら大勢の人間がいて、その誰かが白面かもしれない。自分を殺そうとどこかで見ているかもしれない。


 それを考えると外出などできなかった。


「親父……」


 智の声が聞こえる。しかし喜一郎はなにも答えない。

 ただガクガクと震えながら私室の机に突っ伏していた。

 お読みいただきありがとうございます。感謝です。


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