第65話 レイカーズの終焉
女のスキルから解放されたであろうエレメンタルナイツのメンバーは、なにが起こったのかわからないという風に周囲を見回している。
「あ……君は白面君」
「日生……さん」
「どうして君がここに?」
「それは……」
俺は彼らにどう説明するべきか迷う。
しかし嘘を吐くわけにもいかず、俺はここであったことを正直に話した。
「……」
日生さんはなにも言わない。
他のメンバーは嘆いたり大声で怒り悲しんだりしていた。
「君たちが我々を救ってくれたんだな。ありがとう。礼を言うよ」
「いえ……その」
日生は自分の手で恋人を殺させられた。
そんな彼にかけてやれる言葉はなにも思いつかなかった。
「俺が未熟だった。そのせいで志貴緒を……。他の仲間たちも……」
「……」
「仇を取ってくれてありがとう。俺たちは棄権してダンジョンの外へ出るよ。もう戦えない。少なくともしばらくは……」
それから日生は俯いて黙ってしまう。
仲間たちのほうはまだ嘆き喚いていた。
「……まさかこんな結果になってしまいますとはねぇ。予想外ですよ」
「なに?」
声のした方向へ目を向ける。すると、
「アカツキちゃんっ!」
ホッケーマスクの大男がアカネちゃんの首に手を回してそこに立っていた。
「は、白面さん……」
「おっと動かないほうがいいですよ、ちょっと力を入れるだけでこんなに細い首など簡単に折れてしまいますからねぇ」
「くっ……」
大男の背後から覆面姿の者たちがぞろぞろと現れる。
「千秋さんがやられてしまうとは。もしかしてあなたもこっち側ですか?」
「なんの話だ?」
「ふふ、これを見ればおわかりになるかと」
大男がホッケーマスクを外す。見覚えのある顔がそこには現れた。
「貴様は……藤河原英太っ!」
「おひさしぶりです」
藤河原は相変わらずの不気味な笑顔で俺を見ていた。
「お会いしたかったですよ。あなたにはずいぶんとひどい目に遭わされましたからねぇ。私もここにいる皆さんも」
藤河原の周囲で俺やアカツキへの怒りの声が飛び交う。
そのどれもが身勝手極まりないもので、まさしくクズでしかなかった。
「自業自得だクズどもめ」
「まあそう言わず、我々の復讐を受けてくれませんかね?」
「戦いならしてやる。その前に彼女を離せ」
「ご冗談を。そちらにはあなたと女王、エレメンタルナイツがいる。我ら400人でも勝つことは不可能です。人質は存分に活用させてもらいますよ」
「この野郎……」
こういうクズどもだ。
手に入れた人質を手放すとは思えない。
側にいるからと力の一部を込めた光の玉を、アカネちゃんに纏わせておかなかった自分の迂闊さを悔やんだ。
「コ……白面さん、わたしのことはいいからっ。どうせこいつらあとになってわたしのことも殺す気だろうしっ」
「そ、そんなわけには……」
そうだとしても、俺にはアカネちゃんを見捨てて攻撃などできなかった。
「ふふふ、じっくりゆっくりじわじわと苦しめて殺してあげますよ。……ん?」
なにを探し始めたのか、藤河原は首を巡らす。
「じょ、女王はどこに行きました?」
「えっ?」
確か俺のうしろにいたはずと、振り返るもそこに無未ちゃんの姿は無い。
「ひとりで逃げ……」
瞬間、藤河原の頭が黒い手に飲まれて消失する。
「えっ?」
なにが起きた?
この場にいる全員が不意の事態に動きを止めていた。
「……ふん。白面の君に迷惑をかけないでもらいたいな」
首を失って倒れた藤河原のうしろから現れたのは無未ちゃんだった。
「あっ、そ、そうかっ!」
無未ちゃんのスキルだ。
確か以前、俺の家へ入ったとき姿をスキルに飲み込ませて別空間を通って移動したとかいうあれを使ったのだと思う。
「アカツキちゃんっ」
すぐにアカツキの側へ寄った俺は残りの元レイカーズを睨む。
「ま、まずいぜ」
「どうする?」
リーダーをやられてどうしたらいいのかわからないらしく、戸惑いの声が連中から溢れていた。
「へ、へへ、わかった。ごめんよ。俺たち自首するから許してくれよ」
先頭にいた奴が卑屈そうに俺へそう懇願してくる。
「自首か? 罪を認めて罰を受けるんだな?」
「ああ。もちろんだよ」
「だったら」
俺は右手を高く上げ、そして縦一線に振り下ろす。
「へ……げええっ!!!」
真っ二つとなった男が左右に分かれて倒れた。
「だったら俺が裁いてやる。貴様らは死刑だ」
「ひ……ひえーっ!」
全員が一斉に散り散りとなって逃げ出す。
「逃がさん」
俺は右手の平を前に突き出す。
すると逃げていた連中がそこへ吸い寄せられるように集まってくる。
「な、なんだこれっ!?」
「うわっ!?
「ぐあっ!?」
400人だったか。
その連中が磁石のようにくっつきあって巨大な玉となった。
「う、動けねぇ……」
「安心しろ。すぐに解放してやる」
開いている手を少しずつ握っていく。
「ぐぎゃあああああっ!!!」
「ぎぃやあああああっ!!!」
ぐしゃりぐしゃり。
肉が潰れ、骨が砕け、玉は少しずつ少しずつ小さく潰れていく。
やがて俺の手が完全に拳となったとき、悲鳴は途絶えていた。
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