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第284話 裏切られた小田原(小田原智視点)

「ずいぶんと怖い顔をなさっていますね」


 ……間違い無く教皇のエクスディメルだ。


 それを確認してようやく警戒を解く。


「俺を嫌っている奴は山ほどにいるみたいだからな」

「そんな者たちはすべて殺してしまえばよろしいでしょう?」


 教皇とは思えない言葉を聞いて笑いがこみ上げてくる。


「ああ、もちろんだ。俺に逆らう奴らはみんな殺す。お前でもな」

「私はあなたの味方ですよ。魔王を討伐してあなたが世界を支配するようになったのちは、崇神教以外の宗教はすべて潰していただけると聞きましたので」

「ああ」


 協力する条件はそれだったか。

 まあ宗教なんてどうでもいい。自分に協力するのだったら、他の宗教を潰すくらい別に構わないことだった。


「それに、あなたへ協力をするようにと我々の神からのお告げもありました。なのでわたしたち崇神教は全力であなたに協力を致しますよ。魔王を始末し、すべての異教徒を抹殺するために」


 そう言ってエクスディメルは微笑み、礼をして部屋を出て行く。


 あの女は自分が信仰する宗教を盛り上げることしか考えていない。こちらがその宗教に敵対しない限り、裏切ることはないだろう。


「奴は俺に敵対しないか……」


 しかしもしも敵対すれば殺す。


 それだけであった。



 ……



 それから教会で教皇が智を勇者として認めるイベントが始まる。


 世界中のマスコミが集まってこちらへカメラを向けており、魔王討伐をする勇者の誕生を世界へ認めさせるには最高の舞台が整っていた。


 このイベントを企画した戸塚の姿は無い。

 なにを考えているかわからない奴だ。もしかすれば仮面野郎の指示でどこかに潜み、自分の命を狙っているのではないかと智は疑った。


 奴の力は知っている。死体へ憑依したり、死んだ野郎の魂を自分に憑依させて、そいつが持っていた能力を使うんだったか。


 しかしそんな程度の能力など今の自分なら容易に看破できる。

 奴が裏切っていたとしても、襲撃など無意味であった。


「まだ怖い顔をされていますね」


 エクスディメルにそう言われてフンと鼻を鳴らす。


「それよりも教皇様、早く勇者認定の儀を始めましょうか」

「ええ」


 智は教皇エクスディメルの前へと跪く。

 勇者の認定を映像へ収めようとカメラがこちらへ集中した。


「崇神教教皇エクスディメルの名において、この者に勇者の称号を……」


 与える。

 最後に言うであろうその言葉を待ったが……。


「与えません」

「は?」


 なにを言っているのか?


 見上げた先ではエクスディメルの無表情があった。


「そ、それは……どういうことですかエクスディメル教皇?」


 マスコミのひとりがそう尋ねる。


「彼は勇者ではありません。我々を騙しているのです」

「お前、なにを……」

「さあ死になさい」


 エクスディメルが智へ向かって炎を放つ。

 しかしこんなものは通じない。


 こいつも襲撃者か。


 こいつが自分に敵対した理由などどうでもいい。

 敵になる奴はすべて殺すだけだ。


「ぎゃっ!?」


 エクスディメルを一瞬で焼失させる。


「う、うわあああっ!? きょ、教皇様が殺されたっ!」

「け、けど勇者が騙してるって一体……」


 教皇が殺されたことでマスコミ連中がざわつく。


 このイベントは失敗だ。

 教皇を殺してしまったことで勇者としての格は落ちるが、魔王を倒せるのは自分しかいない。魔王軍による虐殺の事実が覆るわけでもなく、状況に大きな変化はないだろうと考えた。


「お、おいっ! なんか変な動画が上がってるぞっ!」

「これって前のライブ配信で勇者と一緒に映ってた奴じゃ……」

「俺と一緒に映ってた奴?」


 そんな奴は皇しかいないが……。


 その動画を確かめるため、スマホを取り出して検索をかける。


「これは……」


 それは皇がすべてを暴露する内容の動画だった。

 智が人間を魔物にしたこと。動画を編集して魔王軍が人間を殺したように見せかけたことなど、すべてを皇は動画内で暴露していた。


「こいつなんでこんなことを……」


 理由がわからなかった。


「こ、これが本当なら大変な事実だ」

「魔王は勇者に嵌められていただけ……ぎゃあっ!?」


 その場にいた自分以外の全員を炎で消し去る。


 教皇と皇の裏切り。

 これは偶然じゃない。誰かの仕込みだ。


「……まさか奴が」


 こんな仕込みをしそうな奴にひとりだけ心当たりがあった。


「ああ。ようやく気付いたみたいだね」

「……っ」


 燃やしつくしたマスコミ連中のひとりが起き上がる。

 真っ黒焦げで、とても生きているとは思えない姿だったが……。


「戸塚……っ」


 それが何者かはすぐにわかった。

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