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第263話 神龍の力(伊馬アカネ視点)

「貴様……」


 竜は赤く光る口を閉じ、空中を飛ぶコタツ君を見下ろす。


「きゅー」

「ビグラビグイドに俺のことを聞いたか。しかし貴様では俺に勝てんぞ。俺は神龍だ。貴様がどんな能力を持っていようが、ただの竜である貴様に俺は倒せん。死ね」


 ふたたび竜の口が開いて赤い光がそこに見え、


「ごおおっ!!!」

「わあっ!?」


 赤いレーザーが拡散されて放射される。

 しかしその攻撃はアカネとコタツの能力によって無効化された。


「ほう。無効化能力か。くくっ……」

「あ、あれ?」


 攻撃を無効化すれば、攻撃してきた相手を無力化してしまうはずであるアカネの魔王眷属が白い竜に対して発動していなかった。


「どうした? もしかしてなにかしらの攻撃を俺に対してしたか? しかし残念だったな。神龍の俺に魔王の力に由来する魔法などの攻撃は通じない」

「そんな……」


 それじゃあ勝つことなんて……。


「それはおかしいですね」


 千年魔導士が声を上げる。


「あなたが本当に神龍で、攻撃が神法によるものならばアカネ様とコタツ様はあなたの攻撃を防げないはずです。しかし攻撃は防げた」

「……」

「恐らくあなたは天使から力をもらっただけのまがい物の神龍でしょう。だから神龍として力が中途半端なのです」

「……ふ、ふははははっ! 小賢しい奴がいるようだ。その通り。俺は奴から力をもらっただけで本物の神龍とは違う。だがそれがどうした? もうこの世に神龍はいない。ならばまがい物でも俺が本物だっ!」

「うわっ!?」


 大きかった白い竜の身体がさらに巨大な姿へと膨れ上がっていく。その巨体は洞窟の天井を破壊し、外へまで身体をはみ出させていった。


「ちょ、な……っ」


 一般的な2階建て一軒家くらいな大きさだった白い竜が、東京タワーくらいの大きさにまでなってアカネたちを見下ろしていた。


「天使からもらった力をすべて解放した。こうなれば俺の身体は本物の神龍と変わらん。攻撃の無効化もできんぞ」


 白い竜の口にふたたび赤い光が浮かぶ。


 あの大きさでさっきの拡散レーザーみたいなものを放射されたらここら一帯のすべてが吹き飛ぶのではないか?

 攻撃の無効化もできないというのが本当なら、絶体絶命……。


「きゅー……ぎゅああああっ!!!」

「あっ! コ、コタツ君っ!?」


 今まさに赤いレーザーを吐き出そうとしている白い竜の眼下で、コタツ君が元の大きな竜の姿へと変貌する。


「があはははっ! その真っ黒い姿、お前の父親によく似ているっ! 人間と融和などとぬかしていた馬鹿なあの男となっ!」

「ぎゅうぅぅぅ」

「ふんっ! この力があれば人間などあっという間に滅ぼせるっ! 魔王イレイアもこの俺が滅ぼしてこの世界から人間など滅してくれるわっ!」


 赤い光がコタツ君を目掛けて光り輝く。


「まずは貴様だっ! 父親のもとへ送ってやるっ!」

「コタツ君っ!」


 アカネがそう叫んだとき、コタツ君の身体が光に包まれる。

 そのまま身体は縮んでいき……。


「ぐははっ! 縮んで逃げる気か? しかし無駄だっ! 逃がしは……むっ?」


 コタツ君の身体は小さくなっていく。

 しかし竜の姿ではない。……人の姿。そのように見えた。


「な、なんだ貴様っ? 人間……?」


 そこに立っていたのは人間。

 竜の姿から人の姿へ変わったコタツ君がいた。


「ふ、ふははははっ! なにか知らんが人へ弱体化してしまうなど愚かなっ!」


 白い竜が嘲笑う。


 なにがどうなっているのやら、アカネにはわからない。


「これはまさか……」

「えっ?」


 隣では千年魔導士が神妙な面持ちをしていた。


「その惨めな姿のまま滅ぼしてくれるわっ! があはあああっ!!」


 白い竜の口から赤い光が吐き出され、アカネは目を瞑る。

 ……しかし何事も起こった様子が無い。


「な、なにが……えっ?」


 放たれた赤い光。それがコタツ君の突き出された右手へと集まっていた。


「な、なんだとっ? 貴様なにを……っ」

「……彼女たちは魔王様の大切な人だ。傷つけば魔王様が悲しむ」


 コタツ君の声が聞こえる。

 これはいつか夢の中で聞いた声と同じだった。


「き、貴様……っ」


 集まっている赤い光が球状へと変わっていく。


「滅べデルタデイド。滅んで父に詫びろ」

「な、なにっ? がはあああっ!!?」


 撃ち出された赤い光が白い竜の頭を吹っ飛ばす。

 首を失った竜の巨体がズズズと大きな音を立てて倒れていく。


「これは危険ですね」


 そう言った千年魔導士が転移ゲートを展開して巨大な死体を消し去った。


「ふむ。これで一件落着……いや、神獣の件はふりだしかの」

「いえ、神獣は見つかりました」

「なに?」


 そう言った千年魔導士が人の姿になったコタツ君の背を指差す。


「デルタデイドの攻撃は神法でした。神法を受け、それをそのまま……いえ、威力を何倍にもして返したコタツ様の力はまさしく神獣のものです」

「コタツ君が神獣……ということは本物の神龍……」


 探していた神龍。

 それがまさかコタツ君だったとは。


 コタローが知ったら驚くだろうなぁとアカネは思った。

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