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第255話 魔法を超える力

 ……施設にいた者たちを全員、転移ゲートを使って別の場所へ避難させた俺は、ひとり戻って来てナルマストスらと対峙する。


「ひさしぶりだなナルマストス」


 なにも変わっていない。

 以前に会ったときと同じで、殺意の篭った目で俺を睨んでいた。


「てめえ……これはどういうことだ?」

「あぶり出した潜入者を締め上げて計画を聞き出した。それからお前たちへ連絡させて、今に至るってわけだ」

「……嵌めたつもりが、嵌められたってわけか」

「そういうことだ」


 戸塚が疑った通り、ナルマストスが居城にいるというのは罠だった。俺が向こうへ行っている隙に、雪華やここの人間を皆殺しにするつもりだったと潜入者の女から聞いたときはゾッとした。


「お前がイレイアに従うとはな。仲が悪いと思っていた」

「てめえよりはマシさ。あたしのやることに文句は言わねぇしな」

「お前の無法を許すとは、イレイアはやはり力に支配されて変わってしまったか」


 正義を愛していた誇り高きあいつはもういない。

 ならばやはり倒してしまうしか……。


「こうなってしまって一度引いたほうがよろしいでしょう」


 ナルマストスの隣にいる小柄な女がそう言う。


「お前は……」


 見たことの無い奴だ。こいつも魔法使いか?


「……」


 そしてその背後には黒仮面の不気味な女が立っていた。


「ふざけるな。こいつを前にして逃げるなんて死んでもごめんだぜ。絶対にここで殺してやる」

「やめておけ。そこの2人は知らないけど、ナルマストス。お前の力で俺には敵うはずはないだろう」


 この女は忠誠心など欠片も無いゆえ、魔王の力を借りることができず魔法のほうはからっきしだ。それでも将軍という地位にいられたのは、戦上手な頭と多くの配下を持つ家柄の出身だったからだろう。


「確かに、昔のあたしならお前には敵わなかった。しかし今は違う。新たな力を手に入れたからな」

「なに?」


 魔王眷属か? しかし魔王眷属を得られるほど、こいつがイレイアと信頼関係を結べるだろうか……?


「これがあたしの新たな力だ」


 と、ナルマストスは人差し指を光らせる。


 なんだ? 魔法? ……いや、違う。なにか妙な力を感じるような気がする。


「食らえっ!」


 俺へと向けられたその指からレーザーのようなものが発射される。


 こんなものは魔法障壁で……。


「いけませんっ!」


 そこへ千年魔導士が現れ、俺を抱えて横へ飛ぶ。


 俺が避けたことで、放たれたレーザーのような光は壁に穴を空けた。


「せ、千年魔導士? お前も来たのか?」


 避難先で皆と待機していると思っていたのだが。


「魔王様は力に頼り過ぎて迂闊なところがありますので」

「そ、そうか? けどあんな程度の魔法なら簡単に防げ……」

「おしゃべりの暇なんて与えねーぜっ!」


 ナルマストスはレーザーのような魔法を連射してくる。

 あれの正体はなんだかわからないが、なにやら当たるとまずいようなので俺はとにかく千年魔導士とともに避け続けた。


「あの攻撃は俺の魔法障壁じゃ防げないのか?」

「あれは魔法ではありません。あれは魔王の力ではなく、神から力を借りて使っている言わば神法です」

「し、神法?」


 そんな力、聞いたこともない。


「魔王の力とは違うさらに強力な力を感じます。これは間違いないでしょう。神法は魔法の上位に位置します。魔法で防ぐことはできません」

「えっ? じゃ、じゃあどうすれば……?」


 なぜナルマストスがそんなものを使えるのかはあとで考えるとして、まずはどうやって奴を倒すかを考えなくては……。


「奴はそれほど強い神法を使えるわけではないようです。使える神法があれだけならば、付け入る隙は十分にあります」


 と、千年魔導士はナルマストスへ杖を向けて衝撃波を放つ。


「ぐあっ!?」


 そのままナルマストスは吹き飛んだ。


「防御の術はないようです。これなら……」

「させませんよ」


 小柄な女が手から炎を放ち、杖を持つ千年魔導士の右手を焼く。


「これも神法……。なるほど」


 治癒魔法で右手を回復させながら千年魔導士が小柄な女を見据える。


「奴に力を与えたのはあなたですね? 神の力を貸し与えることができるということは、あなたもしかして……」

「余計なことは口走らないでいただきたい。たかが力の管理者がっ!」


 小柄な女から放たれた炎の攻撃を千年魔導士はかわし、俺のもとへと来る。


「これはかなり分が悪いですよ」

「けどやるしかないだろう。なにか良い手はあるか?」

「ナルマストスはあの攻撃にさえ当たらなければ倒せます。あの小柄な女のほうは私に任せてください」

「どうするんだ?」

「あれが私の考えている存在ならば、倒すことはできなくても退かせることは可能なはず。とにかく任せてください」

「わかった」


 あの女の正体はなんなのか? それも気になるが、もうひとりいる黒仮面の女。なにもせずにただ立っているだけのあの女は何者なのか? それも俺は気にかかっていた。

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