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第245話 VS大陸魔王セルバス

 筋肉質で身体が俺の3倍はでかい女。

 長い耳に金色のような髪色を見て、俺はその者の種族がわかった。


「シェルフ族か」

「シェルフ族って?」

「身体がでかくて耳長が特徴の種族だよ。やたら身体がでかいってところを除けばゲームとかに出てくるエルフに似てるね」

「えー……」


 エルフと言えば美しい外見を想像するだろう。しかし目の前にいるのは、はち切れんばかりの筋肉を携えたゴリラ女だ。耳長金髪以外は似ても似つかない。


「なにをごちゃごちゃ言っている。ふん、まあいい。これはいただいたよ」


 女の手には先ほど俺の前から消えた力の集合装置があった。


「お前……何者だ? どこから現れた?」


 こんなでかい女が侵入していたなら気付くはず。

 俺に気付かせずこの部屋に現れたということは、そこそこの手練れだろう。


「あたしの名はセルバス。大陸魔王のひとりさ」

「大陸魔王か」


 弐孤とかいうあの女と同じ役職の奴か。


「白面てのはどいつだ?」

「俺だ」

「お前が? はっ」


 白面を俺だと知ったセルバスは鼻で笑う。


「弐孤を倒したと聞いたからどんなすごい奴かと思えば、素顔は普通な男だな。おもしろくもなんともない凡庸でつまらない顔の男だ」

「顔で強さが決まるわけじゃないだろう?」

「なんだっていいさ。そのような汚らわしい女を連れた愚かな反逆者はここであたしが殺してやる」

「汚らわしい女だと?」


 その一言を聞いて俺は自分の頭に血が上っていくのを自覚する。


「容姿の優れた胸のでかい女など人心を惑わす悪魔だ。そんなのが2人もここにはいる。気分が悪くなって吐きそうになるね」

「死にたいか?」

「死ぬのはお前だ」

「むっ!?」


 眼前の空間が歪んで、そこから手が伸びてくる。

 それを掴んだ俺はセルバスを睨む。


「空間を操るのか」


 空間を操る魔法……いや、


「これは魔王眷属の力か」


 シェルフ族は強靭な肉体を持つが、その反面、魔力が他の種族にくらべて極端に低い。転移ゲートのような空間を操る高位魔法は使えないはず。


「ご名答だ。ただしあたしの魔王眷属は空間を移動するだけじゃない」


 俺に掴まれているセルバスの手から人差し指が伸びて……。


「これはっ!?」


 人差し指の先端からレーザーのような線が伸びる。顔面へ当たる寸前、魔法障壁で弾かれたその線は天井を切り裂く。


「レーザーか?」


 天井を見上げ、破壊された部分を凝視する。


 鋭利なもので切られたようにコンクリートが切断されている……ように見えるが、そうではない。


「空間を切ったのか」

「ああ」


 奴が切ったのはコンクリートではなく空間そのもの。攻撃対象がなんであれ切断可能な高位の能力だ。


「しかしあたしの空間切断を防ぐとはね。なるほど。弐孤を倒しただけはある」

「同じようになりたくなければそれを返して失せるんだな」

「ふふ、お前が強いのは認める。しかしあたしがこれを使えばどうなるか……」


 セルバスは右手に光る力の集合装置を自らの胸へと近づける。


「やめておくのじゃ」


 それを制止するように雪華が声を上げる。


「それはお前が想像しているよりも強力な力を身体に宿してしまう。普通の人間が宿せばまともではいられない」

「望むところだよ。これであたしも支配者のひとりになれる。イレイア様と同等の……同じ景色を見ることができるっ!」


 雪華の制止も聞かず、セルバスは集合装置を身体へと宿す……。


「ああっ!!?」


 瞬間、セルバスは苦悶の表情で叫ぶ。


「な、なんだこれはぁぁぁっ!!? ち、力が……身体に入り込んできて……あ、ああ溢れるぅぅぅっ!!!」


 神の行使した力の残滓は世界のどこにでも存在している。それが今、集合装置によって奴の身体へ集まっているのだ。


 あの力は強過ぎる。

 まともでいられるはずはない。


「う、うう……あああ……」


 巨体を四つん這いの状態にさせていたセルバスだが、やがてゆっくりと静かに立ち上がる。


「ふ、ふははははっ! ものすごい力だっ! すごいっ! すごいぞっ! あたしが頂点だっ! すべてを支配できるっ! すべてを支配してやるっ! なにもかもあたしのものだっ! 全部全部っ! 全部あたしのものにしてやるぅぅぅっ!!!」

「飲まれたか」


 強過ぎる力によって精神を完全に食われている。

 もうなんのために力を欲したかも覚えてはいないだろう。すべてを欲し、すべてを支配することしか考えれらない欲望の怪物となってしまった。

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