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第240話 魔法少女姿を息子に見られて恥ずかしいママ

 魔法少女を名乗ったスノーフラワーとやら……雪華はピンクと白で彩られたステッキを俺たちへ向ける。


「大魔王イレイア様に逆らい、世界の秩序を乱す極悪人! そんな奴はこのスノーフラワーが許さな……あれ? ここに白面って男がいるって聞いたけど? あなたのこと?」

「あ、うん。そうだけど……」

「なら成敗してやるんだからえーいっ!」


 と、雪華はステッキの先端からツララのように尖った氷を飛ばす。

 俺はそれを一瞬で焼却した。


「あれ? あれれー? そんなどうしてー? 魔法が消えちゃったー?」


 驚いた様子でステッキの先端を覗く雪華。

 俺は起き上がってアカネちゃんと顔を見合わす。


「あれ雪華ちゃんだよね?」

「うん……」


 似てるというより間違いなく雪華である。


「どうするの?」

「どうするって……倒すわけにはいかないし、記憶を戻すしか」

「まあしかたないね」


 しかしなんでここに? なんで魔法少女に?


 それは記憶を戻してから聞いてみようと思う。


「くうう……なんかよくわからないけど、もう1回」


 ふたたびステッキの先端をこちらへ向ける雪華。

 俺は雪華へ向かって手を伸ばし、パチンと指を鳴らした。


 ……


「……わしを一体なにをしておったのじゃ」


 記憶が戻り、しばし困惑していた雪華は、虚空を見つめてそんなことを呟く。


「良い歳をしてこんな格好で魔法少女だなどと恥ずかしいのじゃ……」

「いや、お前は大人の記憶があるだけで、年齢は子供だから大丈夫だよ」

「そういう問題ではない。息子にこんな格好を見られたんじゃ。恥ずかしくて顔から火が出そうじゃ」


 ……まあ雪華を母親として考えるなら、言ってることはわからなくはなかった。


「慰めるのじゃ」

「慰めるって?」

「ん」


 両手を開いて伸ばしてきたので、察した俺は雪華を抱き上げる。


「辛い思いをしたのじゃ」

「ははは……」


 抱きついてきた雪華の背を撫でる。


 息子に慰められるのは恥ずかしくないのだろうか?


 しかしそれは言わず、俺は雪華の背を撫で続けた。


「それでなんで雪華ちゃんが魔法少女だったの?」

「そ、それはのう」


 アカネちゃんの問いに雪華は複雑な表情をする。


「なにか言い難いことか?」

「別にそういうわけではないんじゃが、魔法少女として活動していたことはあんまり思い出したくないんじゃ。恥ずかしいからのう」

「こうやって息子に抱っこされて慰められてるのも恥ずかしいと思うぞ」

「これは親孝行だからいいんじゃ」

「親孝行ね……」


 まあ本人がいいならいいけど。


「わしが魔法少女をやっていた理由を話す前に、なぜこんなことになったのかを教えてほしいのじゃが」

「ああ」


 俺は雪華にイレイアや、奴が魔王の力を手に入れて世界吸収を行っているということを話す。


「ほう。それはおもしろいことになっておるのう」

「おもしろくないよ。放って置いたら大変なことになる」

「わかっておる。おもしろいとは研究者としてという意味じゃ」


 いずれにしろ状況を楽しんでいるのではないだろうか……。


「しかしお前の言う通り、このまま放って置いたら大変なことになるのう。その力の集合装置とやらが手に入る目途は立っているのかの?」

「いや、千年魔導士に探させているけど、見つかるかどうか……」

「ふむ……」


 雪華は神妙な面持ちとなり、なにかを考えるように唸る。


「で、雪華ちゃんはなんで魔法少女だったの?」

「その話はもうよいのではないか? つまらん話じゃ」

「すごい気になるから聞きたいなぁ」

「……しかたないのう」


 嫌そうな表情をしつつ、やがて雪華は口を開く。


「まずわしは研究機関で作られた人造人間なんじゃがの」

「そういうところは同じか」


 改変されても俺やアカネちゃんの家族はそのままだった。つまり生まれ方に変化は無く、改変されても雪華が人造人間として生まれるのは道理であった。


「うむ。魔法を使う兵器として生み出されたそうじゃ」

「また魔物の遺伝子と掛け合わされて?」

「いや、そういうことではないらしいのう。純粋に魔法の才能がある者らの遺伝子を使って作り出されたそうじゃ」

「あ、じゃあもう魔物のスキルは使えないのか?」


 雪華の使うスキルはもともと魔物の遺伝子が由来だ。改変されて身体から魔物要素が無くなったのなら、魔粒子の吸収とかはできないかもしれない。


「うん? ふむ? どうじゃろう? やってみるかの」

「えっ? ちょ……」


 いきなり大人の姿となった雪華を、俺はお姫様抱っこで抱える形となる。


「できたのじゃ」

「そ、そう」


 また服が破れて半裸だ。相変わらずのでっかいおっぱいが目下に……。


「興奮しておるな」

「えっ? いや……」

「このままわしを抱いてもいいのじゃ。ほれ、乳を吸わせてやるぞ?」

「いやあのその……」

「コタローっ!」

「おふっ!?」


 アカネちゃんに脛を蹴られる。


「ご、ごめんなさい……。ほら雪華、とりあえずシーツでも被ってて」

「しかたないのう」


 ベッドからシーツを持ってきて雪華へ被せる。


「け、けど魔物の力はそのままなんだな」

「うむ。なんでじゃろうのう?」

「さあ……?」


 魔王眷属の影響でスキルを保持できたのだろうか? よくわからなかった。


「ともかくわしは魔法少女にされて、反逆者狩りをやらされていたのじゃ。まったくあんな格好をさせられるわ、変な口上を言わされるわで、思い出すと恥ずかしさがこみ上げてくるのじゃ」

「ああ、それで俺を討伐に来たのか」

「うむ。全世界に白面の討伐命令がイレイアの名で出されておるからのう。わし以外にもいずれ誰かがここへ来るじゃろう」

「面倒だなぁ」


 返り討ちにするのは容易いが、大勢も来ると面倒だ。

 しかし討伐命令が解除されない限り、俺を殺しに来る連中が止むことは無いだろう。討伐命令を解除するにはイレイアを倒すしかないが、集合装置を手に入れていない状態で戦うのは危険だし……。


 トントン


 と、そのとき扉を叩く音がする。


「どうぞ」


 アカネちゃんが言うと、組員のおっさんが扉の隙間から顔を覗かせる。


「あ、お嬢、なんか変な客が来てるんですけど……」

「変な客? どう変なの?」

「なんか集団で来て、その、白面に会いたいって……」


 おっさんの視線が俺を見る。


「俺に用か」


 恐らく討伐に来た連中だろう。堂々と正面から来るとは肝の据わった奴らだ。


「よし行こう」


 半裸の雪華は部屋へ残し、俺はアカネちゃんを連れて玄関へ向かう。

 広い玄関に立っていたのは、スーツを着たサラリーマン風の男たちだった。


「俺を討伐に来たのか? 真っ向から来るなんてたいした根性だけど……」

「とんでもないっ!」


 と、先頭に立っている男が叫び、そしてなぜか全員が俺へ向かって跪いた。

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