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第237話 弐孤比佐女の魔王眷属

 なんだこいつは?


 人型の真っ黒いなにか。

 それが俺のうしろに立っていた。


「それはお前の影だ。そしてそいつが本物のお前となる」

「なに? むっ……」


 身体が動かない。


「言ったはずだ。そいつが本物になると。つまりお前のほうが影となる。影が自由に動くことなど許されないだろう?」

「なるほど」


 影を操る魔法……いやこれは。


「これがお前の使う『魔王眷属』の力か」


 イレイアの信頼が厚く、奴自身もイレイアに厚い信頼を寄せているならば魔王眷属を使用できても不思議はない。


「大魔王様より賜る偉大な力である『魔王眷属』を知っているのか? 貴様、ただの魔法使いではないな? 何者だ?」

「元大魔王さ」

「戯言を。まあいい。貴様が何者であろうと、始末してしまえばそれで済むこと。さて、自分の影に殺され……な、なにっ?」


 俺は自分の姿を弐孤へと変え、同じ能力で弐孤の動きを封じる。


「な、なんだ貴様……なにを……?」

「姿を変える魔法はそんなに難しくは無い。お前だってできるだろ?」

「そうじゃないっ! なぜ私と同じ能力を使えるかと聞いているんだっ!」

「俺の変化魔法は能力もコピーできる。能力さえコピーしてしまえば、解除も可能だ」


 と、俺は背後にいた黒い影を消滅させた。


「こ、こんなこと……イレイア様から頂いた私の能力を……貴様っ!」

「これで終わりにしておけ。俺を倒すことはできない」

「うるさいっ! こうなれば……っ」

「うん?」


 アカネちゃんの背後に黒い影が……。


「まずはその女を始末して……」

「それは悪手だ」

「な……えっ?」


 アカネちゃんの能力によって弐孤の身体が子供の姿へと縮んでいき……そして消滅した。


「あ、死んじゃった。なんだもうちょっと派手に戦ってほしかったのに」

「アカネちゃんの能力は強いからねぇ」


 コタツの無効化能力。それに魔王眷属の力が加わってとんでもないチート能力と化している。恐らく魔王眷属ではこれが最強の能力だろう。


「あ、あわわ……」


 残された島倉は腰を抜かしたようで、地面に尻をついて震えていた。


「た、大陸魔王様を倒してしまうとは……お、お前は一体……?」

「さっき言っただろ。元大魔王だ」

「元大魔王……? どういう意味だ?」

「言葉通りだ」


 そう言って俺が指を鳴らすと、島倉は転移ゲートに飲まれて消えた。



 ぬまっきー:うおおっ! マジかっ! 大陸魔王を倒したぞっ!


 めたどん:なんだこいつヤベーっ!


 そらー:てかどうやって倒したのかわからん



 大陸魔王を倒したことでコメント欄は大盛り上がりだ。


 まあ倒したのはアカネちゃんの能力だけど……。


「す、すごい……」

「大陸魔王を倒しちゃったよ……」


 生徒らも驚きの眼差しで俺を見ている。


 と、俺はそこで思いつく。


「倒したのは俺じゃなくてこっちのアカツキちゃんだよ」

「えっ……?」


 視線は一斉に俺からアカネちゃんへと移る。


「彼女の能力で大陸魔王は倒されたんだ」

「本当ですか?」

「なんにもしてなかったけど?」


 生徒たちの目は不審だ。


 まあ、アカネちゃんの能力は見た目に地味なのでしかたない。


「じゃあ誰か攻撃魔法でも放ってみればいい。大陸魔王と同じことになるぞ」

「……」


 誰も攻撃をしようとはしない。

 疑いつつも、俺の言葉を嘘とも考えきれないのだろう。


「彼女は優秀な魔法使いでもある。そしてこれほど優秀なのは、彼女が最高の巨乳美女だからというのが一番の理由だろう」

「な……っ」


 絶句。


 生徒たちの誰しもがそんな顔をした。


 嘘は言っていない。

 俺はまずアカネちゃんのこの魅力的な外見に惹かれた、そして少しずつ仲良くなって、信頼し合うようになったのだから。


「俺は彼女の魅力に惹かれ、彼女も俺を慕って信頼を築いた。それによって俺から彼女に強い力が貸し与えられたのだ。君らも彼女ほどにはなれないとしても、俺との信頼を強くすればそれなりの力が貸し与えられるかもしれないぞ」

「ほ、本当ですか?」

「本当だ」


 魔王眷属を得られるほどの信頼関係を得られればだが。


「ま、わたしほどに白面先生と信頼関係を結ぶのは無理だろうけどね」


 と、アカネちゃんが俺の腕へと抱きつく。


「ア、アカツキちゃん人前だから……」

「いいじゃん。見せつけちゃえーっ」

「お、おおう……」


 おっぱいで腕をぎゅうぎゅう挟まれてもうたまらん。

 本当この子はエッチでかわいくて魅力的だ。


「あ、じゃ、じゃあ授業を再開しようかな。あ、学園長は戻っていいですよ」

「えっ? あ、はい……」


 きょとんとしつつ学園長は闘技場から出て行き、俺は授業を再開した。

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